「大学入学共通テスト」の導入で大学受験はどう変わる!?<第3回>
各大学は共通テストより2次試験重視に移行する!?

2017.10.31

共通テストが段階式評価により入試選抜の判定基準として使いづらくなると、各大学の2次試験重視の傾向に拍車がかかることが考えられる。一方で、今回の入試改革の目的である「思考力・判断力・表現力の評価」に関しては拡充が果たされているのだろうか。

入試改革の影響で2次試験重視の傾向も

代々木ゼミナール 入試情報室 主幹研究員 加藤広行
加藤
第2回でもお話ししましたが、共通テストの段階式評価が入試選抜の判定基準として使いづらいということになると、主に国立大学で既に進んでいる2次試験重視の傾向に拍車がかかりそうです。また、現在は私立大学の9割がセンター試験を利用していますが、一部の大学が共通テストを利用しなくなる可能性も考えられます。ただし、学力担保の面から一般選抜以外での利用は増えるかもしれません。国立大学協会が2015年9月に公表した「国立大学の将来ビジョンに関するアクションプラン」では、AO・推薦入試などの募集枠を入学定員の30%に増やしていくことが目標に掲げられています。現状は東大と京大が共に数%といったところですが、東北大は20%に達していますし、今後は他の大学でも増えていくと思われます。ところで、センター試験と比較して共通テストの検定料は上がるでしょうか。
佐藤
2006年度入試の英語リスニング導入時に2千円値上げして、今は3教科以上を受験する場合1万8000円(成績提供の場合は800円追加)です。今回も、記述式などが導入されることで、1〜2千円くらい値上がりするのではないかと思います。
代々木ゼミナール 教育総合研究所 所長 佐藤雄太郎
加藤
2017年度入試のセンター試験志願者数は約57万6千人で、これは大学・短大入学希望者の実に約70%に相当します。共通一次試験からセンター試験に切り替わった初年度の1990年度には、わずか35%だったのにも関わらずです。この背景としては私大の参加数の増加が一因で、志願者数増加を支えていた私大が前述のように撤退を始めると、検定料収入はぐっと減るでしょう。そうなると検定料がさらに値上げされる可能性はあります。受験生家庭の負担が増えてしまうというのは問題ですね。
土生
今回の改革は理念としては正しいと思うのですが、全体的にやや性急なところが気になります。
佐藤
文部科学省は人材のグローバル化の推進を国家戦略として、小学校から大学までの教育に一貫性を持たせることに懸命です。しかし、学校現場は学習指導要領が変わって大変になるという不安の声もあります。大学は学校現場が変わってくれれば入学者の質も向上してウェルカムだとしながらも、入試改革そのものは、大きなパワーが必要であるため、足踏みしているところもあります。現段階ではそれぞれの思惑がちぐはぐな印象です。

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思考力・判断力・表現力の評価は拡充?

代々木ゼミナール 教材研究センター 上席主幹研究員 土生昌彦
加藤
共通テストは運用面で課題が残るものの、「思考力・判断力・表現力の評価」の拡充に寄与する内容であると考えて良いでしょうか?
土生・佐藤
そう考えていいと思います。
加藤
2000年以降では2006年度入試の全教科、2015年度の数学・理科、2016年度の残り3教科で、新課程入試が実施されました。各大学の出題傾向に変化はありましたか?
土生
これまで入試において、学習指導要領の改訂に敏感に反応してきたのは、やはり国公立大学の教育学部系でしょうか。これらの学部の個別入試では、新しい傾向を先取りする姿勢が見られます。
加藤
今回の改革の柱となる「思考力・判断力・表現力の評価」についても、既に入試問題に採り入れている大学はありますか?
土生
昨年度の早大(法学部)やお茶の水女子大、大坂市立大では、「本文の主旨を踏まえながら、本文には書かれていない具体例を自分で考えて記せ」という問題が出されました。本文をただ単に要約するのではなく、主体的に問題文と向き合うことが求められており、改革の方向性に即した出題だと思います。
加藤
共通テストのモデル問題例を受けて、代ゼミとしてはどのように指導に反映させていきましょう。
土生
まだ企画段階ではありますが、高校生の早い時期から問題の理解力、論理的な思考力、文章表現力を養成する、そういう映像授業の作成を考えています。思考力・判断力・表現力はなるべく早い段階から地道にトレーニングを行う必要がありますから。

文/武田 洋子 写真/山本 倫子 制作企画/AERA MOOK ADセクション

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