「大学入学共通テスト」の導入で大学受験はどう変わる!?<第4回>
英語の4技能評価導入で入試パターンは複雑化する

2017.10.31

英語の4技能導入にあたっては、民間の資格・検定試験を活用せざるを得ない状況だ。従来の試験との整合性、会場数や受検料のバラツキなど、議論の余地が残る。変革の時代にサピックス代ゼミグループが果たす役割とは。

民間の資格・検定試験の活用方法には議論の余地あり

佐藤
2020年度から共通テストの英語は4技能(「聞く」「話す」「読む」「書く」)評価が導入されます。共通テストで「書く」「話す」を作成することが現段階では難しいため、民間の資格・検定試験を活用することになります。しかし、会場数や受検料のバラツキが課題になりそうです。地域によって民間の資格・検定試験の受けやすさに格差があるのは公平性を欠きますし、各高校で受検できればいいのですが、運用体制の厳格化が担保できるのかという課題があります。
加藤
それにしても、本来、資格・検定試験は「達成」度を測るものです。「選抜」が目的である入試に使えるでしょうか。
佐藤
大学入試の英語と英語4技能試験は、出題形式に類似点や共通点があるものの、「選抜」と「技能到達」という点で、目的が大きく違う試験だといえます。そのため、評価の仕方や出題の狙い、目標とする語彙数なども、大学入試とは異なります。特に、新制度入試の英語4技能評価が段階別になるとすれば、素点で評価する試験(共通テストのマーク式問題や各大学が独自で課す試験)との整合性がとれるのかどうか、議論の余地があるように思います。資格・検定試験は英語に限らず、専門学校などでは既に活用されています。簿記などがその代表例です。
土生
実学を中心とする専門学校と研究志向の大学では目指すものが違います。共通テストの資格・検定試験化が進むと、第3回でも話題になった「共通テスト離れ」がますます加速していくおそれがありますね。
加藤
そうですね。現に東大前期は2次試験に英語リスニングが入っているので、センターリスニングの成績は利用しません。今後もそのような大学が出てくるかもしれません。
佐藤
2技能や3技能だけ採用する、独自入試だけで評価する、あるいはそれらの組み合わせなど、英語の受験パターンはますます複雑化してくるでしょうね。
加藤
ここはサピックス代ゼミグループの力を結集して、入試情報と受験対策を整理して受験生に伝えていきましょう。

ページのトップへ

入れる大学ではなく入りたい大学を選ぶ

土生
実はグループが独自に開発した論理力評価テスト(SRT)の問題が、その直後に発表された共通テストの記述式問題イメージ例にきわめて似ているということがありました(図2参照)。われわれの情報収集力と教材作成力をアピールすることができたと思います。
図2 論理力評価テストSRT
佐藤
グループとしては、Y-SAPIXが来年2018年3月に校内生向けに「大学入学共通テストプレ」という模試を実施します。対象は2020年度に大学受験をする新高校1年生で、実施時点での学力を測り、学習の指針を示すのが目的です。また、代ゼミも英語4技能を育成する教科講座や資格・検定試験対策が充実しています。さらに今後は進路指導がより重要になってくると思いますので、入試パターンや大学のアドミッション・ポリシーを総合的にアドバイスできる、コンサルタントに近い役割を担いたいと考えています。
図3 高校支援
これまでも教員研修(図3参照)で代ゼミの講師力を現場の先生方に伝えてきましたが、さらに各大学の動向情報に関するニーズが増えると思います。 土生 今回の高大接続改革のねらいは、先の見通せない社会において、自ら問題を発見し、それを解決する能力を生徒に身につけさせようというところにあります。これから受験する皆さんには、この改革の主旨を前向きに捉えて、自発的に考え、表現する力を伸ばしてもらいたいと思います。
加藤
入試制度が変わっても、「入れる」ではなく、「入りたい」大学を選んでほしいですね。最後に、お二人が考える共通テストの理想形とは?私はシンプルで公平、かつ受験生が混乱しないものであってほしいと思います。
土生
高校段階の基礎学力を客観的に測定できること、表現力も含めた学力を判定すること、そして、できれば複数回受験が望ましいと思います。
佐藤
私は、各大学のアドミッション・ポリシー(学生の受け入れ方針)で求めるものがより明確になれば、共通テストの在り方もおのずと決まってくるのではないかと考えます。

文/武田 洋子 写真/山本 倫子 制作企画/AERA MOOK ADセクション

ページのトップへ

シェアする

代ゼミJOURNALのトップへもどる

おすすめ記事

ページのトップへ

ページトップボタン