令和7年度大学入学共通テスト試作問題分析
英語(リーディング・リスニング)

2022年11月10日掲載

出題の特徴

議論や発表、エッセイの作成といった英語を使用した活動を状況設定に反映した設問が出題された。

英語で書かれた資料を読み、その内容に基づいて英語を使用して議論や発表を行う、自分の意見をまとめたエッセイを推敲するなどの言語活動の場面を状況設定として与える設問が出題された。新学習指導要領に基づいて高等学校等の英語の授業で行われる活動に、より近づけようとするものと考えられる。ただし、リーディング・リスニングという試験の特性上、情報の読み取り・聞き取りと整理という力がポイントとなることは変わらない。

問題構成

大問番号 配点 マーク数 出題内容 難易度
A 18 7 【リーディング】
「授業中のスマートフォン利用の是非」について複数の意見や資料を読み、見解をまとめる
標準
B 12 4 【リーディング】
「ファッションに関して環境のためにできること」というテーマで生徒が書いたエッセイを教師のコメントを踏まえて改善する
標準
C 15 7 【リスニング】
「幸福観についての講義」と口頭での講義内容の確認を聞く
標準

問題分析

問題量

一部の問題のみの公表につき、割愛させていただきます。

出題分野・内容

公開された試作問題は、問題A・問題B・問題Cの計3題。

  • 問題Aはリーディング試作問題で、資料を読んで自分の見解をまとめるという活動を想定したものであった。合計で5つの意見と2つの資料を読み取る問題が5問出題された。
  • 問題Bはリーディング試作問題で、生徒のエッセイを教師のコメントをもとに改善するという活動を想定したものであった。いずれも文法ミスではなく、論理や要旨を踏まえて改善する内容で、計4問出題された。
  • 問題Cはリスニング問題のサンプルで、2021年度共通テスト(第1日程)リスニング第5問のうち、問32・問33の2問を差替えたものであった。問32は、同じ講義を聞いた他のメンバーが述べる講義内容の確認が、本当に講義の内容と合致しているかを問うもの、問33は、元は講義文の続きであったものを2人の短い対話に置き換えたものであった。

出題形式

問題A・B・Cのいずれも4択形式を中心とした出題で、現行の共通テストから大きな変化はなかった。

難易度(全体)

一部の問題のみの公表につき、割愛させていただきます。

設問別分析

第A問(18点満点)

配点 出題内容
18 【リーディング】
「授業中のスマートフォン利用の是非」について複数の意見や資料を読み、見解をまとめる

分析コメント

3つの「ステップ」に分かれており、ステップ1(様々な意見を読み、理解する)、ステップ2(自分の立場を決める)において、各100語程度の5つの意見に基づく設問が3問出題された。またステップ3(見解の概要をまとめる)において、さらに150語程度の英文とグラフの2つの資料に基づく設問が2問出題された。英語を使って意見をまとめ、表現するという活動に近づける場面設定がなされており、高等学校等の授業をより意識したものと考えられる。ただし、解答にあたっては、資料の内容と矛盾のない選択肢を選ぶという、従来通りの読み取りの力が問われる出題となっていた。

第B問(12点満点)

配点 出題内容
12 【リーディング】
「ファッションに関して環境のためにできること」というテーマで生徒が書いたエッセイを教師のコメントを踏まえて改善する

分析コメント

250語程度のエッセイについて、4か所の問題点の指摘がなされており、それぞれについて適切な改善案を選ぶ問題。英語外部試験導入見送りに伴って共通テストでの対応が不足した「書く」力の評価を意図した設問とも考えられる。問1はデータの引用から結論に至るまでの飛躍を、自分の言葉でまとめなおすことで穴埋めするという設問で、実際に生徒の答案に見られがちな問題点の指摘がみられた。エッセイの要旨と引用の意図を踏まえて解答する必要があるだろう。問2は接続語句の補充、問3・問4はパラグラフの要旨選択という一般的な読解問題の類題として取り組める問題であった。

第C問(15点満点)

配点 出題内容
15 【リスニング】
「幸福観についての講義」と口頭での講義内容の確認や議論を聞く

分析コメント

デンマークのライフスタイルHyggeをテーマにした幸福観に関する講義を聞く問題で、2021年度共通テスト(第1日程)リスニング第5問のうち、問32・問33の2問を差替えたものであった。問32は、同じ講義を聞いた他のメンバーAとBがそれぞれ1文で述べる講義内容の確認が、本当に講義の内容と合致しているかを問うもの、問33は、元は講義文の続きであったものを2人の短い対話に置き換えたものであった。同じ発表グループのメンバーとともに要約文を作成しているという状況が与えられており、英語を使用した活動を意識した設定としていることはリーディングの場合と同様である。解答にあたっては講義の内容一致問題と考えて取り組むことができる。

学習アドバイス

【リーディング】
対策としては大きく変わらず、情報の読み取りと整理がポイント。
今回公表された試作問題は少数のみであり、全体の問題構成は不明です。よってあくまで推測ですが、様々な資料から情報を読み取ったり、整理したりする力がポイントとなることは変わらないと考えられます。英文の語彙レベルや専門性、抽象性は高くありませんが、与えられる資料の量や種類が多いのが特徴的です。難解な英文を読み解く知識が必要というよりはむしろ、平易な英文や資料の内容・構成を素早く把握して必要な情報を見つける力が重要となりそうです。とはいえ、正確で迅速な理解には基本的な語彙や文法の知識は不可欠ですので、まずは基礎学習を怠らないようにしましょう。一方、変化した点としては、議論や発表、エッセイの作成といった活動の流れをより意識した出題となっています。出題の意図の把握のためには状況設定を理解することが重要で、実際に類似の活動を行った体験があると理解しやすくなるでしょう。高校の授業やその他の活動が共通テストにもつながるという意識をもって、日々の学習に取り組むとよいでしょう。

【リスニング】
共通テストの形式が継続。講義問題は要点の理解を意識する。
今回公表されたリスニングの試作問題は1題のみで、過去の出題をほぼそのまま利用したものでした。共通テストのリスニング問題は初年度から2年目にかけて大問構成レベルの変化が少なく、流動的なリーディング問題と対照的です。今回の試作問題の変化の少なさからも、現在の共通テストの形式がしばらく継続すると推測されます。試作問題で使用された共通テスト第5問の講義の聞き取り問題は、正答率が3割程度のこともある難問ですが、このような問題も変わらず出題されると考えられます。初めて触れる情報を、設問にも解答しながら1回で聞いて理解するのは容易ではありませんが、概要や要点の把握を意識して聞き取る練習をしてみましょう。また、試験の問題に限らず英語の音声を聞く機会を多くもち、英語を聞き慣れることも重要です。

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