令和7年度大学入学共通テスト試作問題分析
国語

2022年11月10日掲載

出題の特徴

言語活動の過程を重視した大問が一つ加わり、全体で大問5題構成となった。

現行の共通テストでは大問4題構成(近代以降の文章2題、古文1題、漢文1題)だったが、そこにレポートの作成や対話等の言語活動に重きを置いた大問が1題追加され、試験時間も現行の80分から90分へと増加した。

問題構成

大問番号 配点 マーク数 出題内容 難易度
1 45 近代以降の文章
2 45 近代以降の文章
3 20 5 近代以降の文章(言語活動を重視した出題) 標準
4 45 古文
5 45 漢文

問題分析

※公表されている試作問題第A問と第B問に基づく。

問題量

文章や図、グラフなどの多様なテクストが出題されており、やや多め。

出題分野・内容

  • 第A問、第B問ともに言語活動の過程を重視し、実用的なテクストを含む出題。
  • 第A問では、「気候変動が健康に与える影響」に関する文章が2つ、図が1つ、グラフが3つ課されている。文章の内容はやや専門的で、注の数が多い。グラフもあまり見慣れないうえに時間軸が広く、資料の解読に時間がかかる。設問では、複数のテクストの内容を照合しながら解くものや、記述の正誤について「正しい」「誤っている」「判断できない」の3つの観点から判定するものなど、新傾向の問題が多く出題されている。
  • 第B問では、生徒作成という設定で書かれたレポート「言葉遣いへの自覚」と、関連するアンケート結果(グラフ3つ)、文章2つが課されている。「レポート」とアンケート結果など複数のテクストを対応させる設問や、文章に合う具体例を考察する設問など、新傾向の問題を中心に構成されている。

出題形式

  • 第A問、第B問ともに単純な傍線部解釈の問題はない。文脈把握、表現・構成、根拠、例示、要約など、様々な設問形式が出題されている。
  • 第A問では、複数のテクストを関連づけて解く空欄補充問題や、図の内容・表現を問う問題、正誤判定問題の他、作成したレポートの内容や構成に関する級友からの助言の適不適について判断する問題などがみられる。
  • 第B問では、文章の趣旨を踏まえてデータを解釈する問題、複数テクストの要約を選択する問題、本文中の概念と合う具体的事例を判断する問題などが空欄補充形式を中心に出題されている。

難易度(全体)

  • 第A問は資料の分量が多く、照合作業も煩雑だが、慎重に検討すれば比較的容易に正答を導けるものも多い。全体的に見れば標準的。
  • 第B問は、設問の指示に従って複数のテクストを横断して読むことや、具体例を通して本文を適切に解釈することなどを求める目新しさはあるが、設問のレベルは標準的。
  • 第A問、第B問とも、文章や資料の読解に深い思考力を要するものではないが、解答時間上の制約などを考慮すると解答にとまどう受験者も一定数いると考えられる。

設問別分析

第A問(20点満点)

配点 出題内容
問1(i) 3 文章及び図の読み取り問題
問1(ii) 3 図の内容・表現に関する問題
問2  5 正誤判定問題
問3(i) 4 文章の構成に関する問題
問3(ii) 5 対話文問題

分析コメント

文章、図、グラフなどの多様なテクストを横断的に読み取り、必要な情報を抽出する力が求められている。問1(i)は「文章」の下線部のうち「図」では省略されている内容を選ぶ問題で、照合作業に時間がかかる。問1(ii)も図の中身の理解が問われており、選択肢と図を丁寧につきあわせる必要がある。問2は「正しい」「誤っている」だけでなく「判断できない」という観点が加わっており、単純な二分法ではない分、論理的な思考力・判断力が一層求められる。参照しなければならないグラフの分量も多い。問3の(i)は文章の構成把握の問題で、「また」「例えば」等の接続詞を手がかりに文章の構成・展開を整理する必要がある。問3(ii)の形式は慣れないと判断しづらい問題だが、資料の内容に照らして明らかな誤りを含むものを選べばよい。

第B問(20点満点)

配点 出題内容
問1 4 データの解釈を問う空欄補充問題
問2 3 別掲資料の要旨を問う空欄補充問題
問3 3 具体例の適不適を問う空欄補充問題
問4 10 内容及び構成の確認問題

分析コメント

最初に「レポート」が示され、関連するアンケートの調査結果や文章などの資料が複数続いて示される。後掲の資料から必要な情報を読み取って「レポート」中の空欄に入る文言を補充させていく問題(問1~問3)と、「レポート」に説得力を持たせるために必要な論拠を考えさせる問題(問4)からなる。問1は「レポート」の展開を踏まえて資料を読み取る問題、問2は資料の文章の趣旨を問う問題で、いずれも「レポート」と資料の対応関係が明確であり正解は選び易い。問3、問4は「役割語」という概念や「レポート」を構成する内容の論拠について、具体的な事例を通して考える力が問われる。「適当でないもの」を選ぶものも含まれ(問3)、具体例は多岐にわたるものの、論理的に思考する習慣づけができていれば選択肢の判別は困難ではない。

学習アドバイス

今回公表された試作問題2題で目を引くのは、文章や図、グラフ、生徒作成のレポートなどの多様なテクストを参照して解答する問題が出題されていることです。しかし、文章の構成・展開を把握する問題や文章の趣旨を読み取る問題、具体例を示す問題など、従来のセンター試験・共通テストで出題されている形式も見受けられます。そのため、目新しさに惑わされずに、まずはこれまで通り文章読解の基礎・基本を身につけましょう。そして、図やグラフ、その他の実用的なテクストを交えた問題については、教科書(「現代の国語」)の内容をしっかり学んだうえで、模試等を通じて定期的に演習を行っていきましょう。また、今回は出題されませんでしたが、法令の文章や議事録、新聞記事なども今後出題される可能性があります。どのようなテクストが課されても対応できるように、様々な文章・統計資料に触れて読み慣れておきましょう。

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