令和7年度大学入学共通テスト試作問題分析
数学II,数学B,数学C
2022年11月10日掲載
出題の特徴
数学Cの単元と新課程で新たに追加された内容を含んでおり、大問数が増加している。
数学Ⅱ・B・Cからの出題になるため「平面上の曲線と複素数平面」が加わり、必答問題が第1問~第3問の3題、選択問題が第4問~第7問のうちから3題の計6題に増加している。それに伴い、試験時間も70分に増えている。
選択問題の配点が大問1題につき16点であることから、選択問題の比重がこれまでよりも大きくなることが最大の留意点である。
「統計的な推測」では帰無仮説・対立仮説を含んだ仮説検定の考え方が出題されている。教科書に載っている仮説検定の一連の流れを素直に問う内容となっていた。
なお、「統計的な推測」と「平面上の曲線と複素数平面」以外は令和3年度大学入学共通テスト本試験(1月17日実施)と同一の内容が充てられている。
問題構成
大問番号 | 配点 | マーク数 | 出題内容 | 難易度 |
---|---|---|---|---|
第1問 | 15 | 13 | 三角関数 | やや易 |
第2問 | 15 | 11 | 指数・対数関数 | やや易 |
第3問 | 22 | 24 | 微分法・積分法 | やや易 |
第4問 | 16 | 14 | 数列 | 標準 |
第5問 | 16 | 16 | 統計的な推測 | やや易 |
第6問 | 16 | 9 | ベクトル | 標準 |
第7問 | 16 | 9 | 平面上の曲線と複素数平面 | 標準 |
問題分析
問題量
現行の共通テストよりもやや減少した。
出題分野・内容
第1問は三角関数からの出題である。合成を利用して三角関数の最大値を求めるが、後半はcosへの合成が必要になり慣れていない受験生も多かったと思われる。
第2問は指数・対数関数からの出題である。与えられた関数について常に成り立つ関係式を誘導に従って考察する問題である。
第3問は微分法と積分法からの出題である。(1)は2次関数のグラフ、(2)は3次関数のグラフとその接線を題材とした問題であった。積分法からの出題は(1)の面積を求める設問のみにとどまった。
第4問は数列からの出題である。近年のセンター試験でも頻出であった等差数列・等比数列に漸化式を絡めた問題であった。
第5問は統計的な推測からの出題である。(1)がこれまでと同様の、正規分布を用いた信頼区間の計算で、(2)に新しく含まれる分野である仮説検定の考え方が出題された。数値を求める設問が非常に少なかった。
第6問はベクトルからの出題である。正十二面体のある4頂点からなる四角形の特徴を調べる問題である。ベクトルの加法・減法や内積の計算が出来るかどうかが問われている。
第7問〔1〕は式と曲線の分野から、2次曲線が出題された。2次の係数に着目すれば易しい。
第7問〔2〕は複素数平面からの出題である。絶対値が1の複素数が複素数平面上でなす図形を考える問題であるが、図形的な考察をしないと難しいだろう。
出題形式
全問マークシート形式であるが、選択肢から答えを選ぶ形の設問がやや多い印象である。この選択肢から選ぶ設問は、第1問が7題、第2問が3題、第3問が2題、第4問が1題、第5問が10題、第6問が3題、第7問が4題である。
難易度(全体)
前半の必答問題は、令和3年度共通テスト(第1日程)の問題と基本的に同一であるため、難易度もそれとほぼ変化はないが、配点の都合上、中盤の設問が一部削除されている。誘導が少ないこの傾向が続くのであれば、苦手な分野ではこれまでよりも得点しにくくなるかもしれないので注意したい。
第4問の数列の問題は、令和3年度と同一の問題であるが、(2)が全て削除されている。この(2)は全体の解答の流れには影響がない部分であるが、易しい設問であるため、苦手な受験者の得点は下がることになるだろう。
第5問の統計的な推測の問題は、(1)は従来の共通テストと同等の難易度である。(2)の仮説検定は、試作問題ということもあってか仮説検定の一連の流れをなぞる、素直な設問である。
第6問の空間ベクトルの問題は、令和3年度と同一の問題であるが、最初の設問と中盤の設問がそれぞれ1つずつ削除されたため、やや難しくなっている。
第7問は〔1〕が式と曲線から、〔2〕が複素数平面からの出題である。〔1〕は基本的な設問であり、易しい。〔2〕は難易度としては標準的であるが、図形的な考察が必要になるため、その部分を苦手にしていると難しく感じるだろう。ただし、実際に出題される際には、式と曲線のみ、もしくは複素数平面のみからの出題となることも予想され、試作問題よりも深い知識が要求されることを覚悟すべきである。
設問別分析
第1問(15点満点)
配点 | 出題内容 |
---|---|
15 | 三角関数 |
分析コメント
令和3年度本試の過去問。三角関数の合成を題材にした問題。(1)は教科書にも掲載がある非常に基本的な問題。(2)は角度が求まらないタイプの合成の問題。さらに、cosへの合成が指定されているため、三角関数の合成に慣れている必要がある。
第2問(15点満点)
配点 | 出題内容 |
---|---|
15 | 指数関数・対数関数 |
分析コメント
令和3年度本試の過去問。指数関数・対数関数の問題で(2)、(3)は関数の特徴を考察するところがやや珍しい。(1)はかなり基本的。(2)では実際に与えられた式と比較する。(3)では、βに0を代入すること、そして(2)を用いることに気付けるかどうか、がポイントである。
第3問(22点満点)
配点 | 出題内容 |
---|---|
22 | 微分法・積分法 |
分析コメント
令和3年度本試の過去問(一部設問を削除)。特に図形的な考察は要求されておらず、どの問題も易しい。(1)は接線の方程式を求める設問。計算自体も非常に楽である。答が文字である部分が多い。面積計算も、文字の種類が多いだけで楽である。空欄スでは、文字を整理してグラフを選択することが課されているが、半直線になることはすぐに分かるだろう。(2)も基本的であり、積分に関しては問われていない。最後まで答に多くの種類の文字が含まれることが特徴的であるといえる。
第4問(16点満点)
配点 | 出題内容 |
---|---|
16 | 数列 |
分析コメント
令和3年度本試の過去問(一部設問を削除)。「漸化式」を題材とした問題。誘導は丁寧であり、それに従っていけば一般項までは求められる。漸化式の形が複雑なだけで、全体として計算は大変ではない。誘導に従っていけば最後の空欄まで特に難しい部分は無いのだが、様々な数列が登場するので試験場では実際の難易度よりも難しく感じられる可能性が高く、落ち着いて解くことが求められる。
第5問(16点満点)
配点 | 出題内容 |
---|---|
16 | 統計的な推測(標本平均、信頼区間、仮説検定の考え方) |
分析コメント
砂浜に含まれるマイクロプラスチックの個数の調査を題材に、信頼区間の計算および仮説検定の一連の流れを問う問題である。新課程では「確率分布と統計的な推測」から「統計的な推測」に単元名が変更されることを踏まえてか、二項分布などの確率分布に関する設問はなかった。また全体を通して、数値を埋める形式よりも答えを解答群から選ぶ形式の方に比重が置かれていた。
(1)は現行の共通テストでも出題されている、標本平均を基にマイクロプラスチックの個数の信頼区間を求める問題である。従来であれば数値を埋める形式であるところが、本試作問題ではそのほとんどが解答群から選ぶ形式となっている。しかし、複数の文字が登場するため、どれが何を表しているかを把握するのに少し苦戦するかもしれない。またMの信頼区間の計算では、数値自体は計算しやすいものの桁数が大きいため、ここでも少し苦戦する。全体としては現行の共通テストと同等の難易度である。
(2)は新課程で新たに登場する仮説検定に関する問題である。帰無仮説と対立仮説を設定し、その仮説に基づいて有意水準5%で検定するという、仮説検定の基本的な流れを理解できているかを問う問題であり、一度でも仮説検定の問題を実際に解いていれば難なく解けるような問題となっている。
全体的に計算を要する箇所は少なく、また試作問題ということもあってか問われている内容はオーソドックスなものとなっている。
第6問(16点満点)
配点 | 出題内容 |
---|---|
16 | 空間ベクトル |
分析コメント
令和3年度本試の過去問(一部設問を削除)。平面ベクトル色が強い。正十二面体のイラストが登場するため、見た目で圧倒されてしまいやすい。しかし、見た目と実際の難易度のギャップが極端であり、誘導は丁寧である上、計算もあまり大変では無い。(1)ではaの値を出題者が与えてくれていて、(2)以降の誤答を防いでいる。(2)では誘導に従っていけば、立体をイメージする必要は無い。空欄クで無事正答に到達できるか、がポイントだろう。これが正解できれば、最後の空欄ケで特に手が止まる要素は無い。
第7問(16点満点)
配点 | 出題内容 | |
---|---|---|
〔1〕 | 4 | 平面上の曲 |
〔2〕 | 12 | 複素数平面 |
分析コメント
形式上は〔1〕、〔2〕と2つに分けられているが、複素数平面に重きを置いた出題となっている。
〔1〕の平面上の曲線の問題ではコンピュータソフトを用いて2次曲線を表示する設定で、方程式と2次曲線の形状の関係についての基本的な理解が問われている。最初にも触れた通り、2つの中設問に分けられているが、配点には差が見られる。〔1〕は小問1つから成り、小問としては4点と重めの設定である。2次曲線の学習においては計算の占める割合が大きく、定性的な出題は難しいのかもしれない。
なお、問題文が見開きで分かれているため、a、b、c、d、fが前ページと同一であるのか問題文の解釈が分かれる可能性がある。
〔2〕の複素数平面ではやはりコンピュータソフトを用いて複素数wの累乗を複素数平面上に表示する設定で、複素数平面上における演算と図形的性質の関係についての理解が問われている。図形的センスにおいても数式処理のセンスにおいてもやや応用的な設問が多い。ただし、問われているのは一般の場合だが考えやすい特殊な場合のみを考えればよいと見抜ければ簡単になる。いずれにせよ単に教科書の内容を理解しているだけでは高得点は狙えない。計算量は少ないので時間をかけずに解ききる受験者層もいるだろうが、多くは苦戦するのではないかと思われる。
学習アドバイス
- 出題意図をくみ取りながら、問題設定の分析力・状況把握能力・情報処理能力が求められます。
- 数学用語の定義や数式の意味そのものを問われることも考えられますので、定義や公式をしっかりと理解しておきましょう。
- 各大問はそれなりに時間を要しますが、本番では時間が限られています。時間配分を考えた戦略をしっかりと立てましょう。
- センター試験や共通テストの過去問を演習し、マーク形式の問題を解く訓練を積むことが有効です。