「大学入学共通テスト」の導入で大学受験はどう変わる!?<第2回>
記述式問題の採点の課題は?段階式評価の信頼性は?

2017.10.31

記述式問題の採点は唯一の正解があるわけではないだけに難しい。検討されている採点における課題とは。民間の活用は機能するのだろうか。また試験全体の評価がこれまでの1点刻みから段階式に変わっても公平性は担保されるのだろうか。

採点者の確保や採点基準は未知数

加藤
採点についてはどのような課題がありそうですか?民間の活用も検討しているようですが。
土生
記述式では想定外の答案をどう処理するかが課題だと思います。それを採点基準にどう反映させるか、また生徒から採点の根拠を聞かれたときにどう答えるかがポイントですね。
佐藤
高校でも入試を実施していますが、それだけに採点に携わる先生は、記述式問題の採点がいかに大変か身を以てご存知なので、とても懸念されていると思います。国が実施する全国学力調査の採点を民間に委託する事例はありますが、公平性の厳格化が求められる入学試験となると、採点者の確保や研修など運用面が課題になりそうです。海外ではフランスのバカロレア試験の例があり、受験者は約70万人、全てが記述式問題です。ただし採点者の数が多く、研修も受けています。一から始めるにはノウハウも予算も十分とは言えないかもしれません。
加藤
では試験問題に関して受験生に何かアドバイスはありますか。
土生
問題はよく工夫されており、練られています。ただモニター調査では、国語の記述式の平均正答率が33%程度であり、やや難度が高いと思います。本来は50%程度の正答率が望ましいので、本番ではもう少し易しくなるのではないかと予想します。また、マーク式でも正解の数がわからない問題があるなど、真の学力が問われている印象を持ちました。国語がここまで傾向を変えるのは、共通一次試験(図1参照)以来ではないでしょうか。
図1共通テストの変遷
佐藤
英語は2006年度にリスニング問題が導入されるなど、変化がありましたからね。
土生
国語の問題の特徴としては、実用的な文章が用いられていること、複数の資料を関連づける力が問われていること、他者の意見の矛盾点を指摘するなど、批判的な思考力が求められていることが挙げられます。それに加えて、文章表現力が必要です。
佐藤
国語と数学どちらも、全体的に思考力を中心に問う内容になっています。この傾向は理科や社会にも広がると思います。たとえば、統計資料を使った問題などが考えられます。
土生
これらの特徴をふまえると、新聞を教材とした学習が効果的だと思います。社説の要約や、一つのテーマを賛成・反対の二つの立場から論じた記事を読んで自分の意見を述べるなどの方法で、表現力や思考力を高めることが可能になります。

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同ランク内の最上位と最下位が同評価
段階式評価の公平性は?

加藤
今回の共通テストで私が気になっているのは段階式評価です。1点刻みではなく何十点かを一つのカテゴリーにする評価方法ですが、入試選抜の判定基準としてはどうなんでしょうか。
土生
たとえば、同じAランクでも最上位と最下位が同じ評価になってしまいますから、判定の精度は下がりますね。
佐藤
大学入試改革は偏差値偏重から脱却しようという考えがベースにあると思うのですが、1点刻みだからこそ公平性が担保できた面もあり、かなり踏み切った印象です。11月実施予定のプレテストの結果により、採点基準などの詳細が明らかになる予定です。
土生
段階式評価は、入試の点数だけでなく、受験生の様々な活動を総合的に評価しようとする姿勢から生まれていると思うのですが、国立大学協会は今回の改革をどのように考えているのでしょう。
佐藤
基本的には評価しているようです。
加藤
これまでの入試改革時には、国立大学協会がガイドラインを提示したり、また各大学の入試については最初に東大が具体的な選抜方法(科目や配点など)を公表しています。今回もそのような流れとなることが予想されます。

文/武田 洋子 写真/山本 倫子 制作企画/AERA MOOK ADセクション

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