時事王(2022年) 代々木ゼミナール×読売中高生新聞

2022.12.02

読売中高生新聞「時事王」掲載問題の解答ポイントなどを公開。テストに役立つ時事を学ぼう!

読売中高生新聞「時事王」掲載問題の解答ポイントなどを公開。テストに役立つ時事を学ぼう!

2022年12月2日号

A面「ワークシート」の解答ポイント

【問1】

資料を参考に、「オーバーツーリズム」とはどのような問題なのか、また、国内の主な事例についてまとめてみよう。

 

【解答例】
「オーバーツーリズム」とは、観光地に観光客が大量に押し寄せることで、自然環境や景観が破壊されたり、その地域に住む住民の生活に支障が出たりしてしまうことを言う。日本でも京都や鎌倉などの主要な観光地では、国内外の観光客であふれかえった結果、交通渋滞が慢性化し、電車やバスなども混雑し、その地域に住む人たちが利用できなくなることもあった。

 

【解説】
「オーバーツーリズム」とは、「観光公害」とも呼ばれ、コロナ禍前から世界各国で問題になっていました。しかしながら、政府の報告書(「持続可能な観光先進国に向けて」2019年6月、観光庁)においては、「現時点においては、(日本では)他の主要観光国と比較してもオーバーツーリズムが広く発生するには至っていない」という見方が示されています。とはいえ、実際に国内でも資料のような事例が起きている以上、何らかの対策を講じていく必要があります。

 

【問2】

資料を参考に、観光立国を目指す上で、政府や私たちが留意しなければならないことをそれぞれまとめてみよう。

 

【解答例】
観光業に頼りきりになってしまうと、コロナ禍のようなイレギュラーな事態が起こったときに、国内経済が大打撃を受けてしまいかねない。政府は、エンタメや高級フルーツの輸出など、観光以外にもこれから成長が期待できる産業をしっかり育成していけるような政策を実行し、観光業と他の産業のバランスをとっていくことが必要になる。また、私たちに出来ることとしては、一人ひとりが自分たちの住む地域や日本の魅力を知って、海外に発信していくこと、そして、文化の違うさまざまな国からの訪問者に、寛容な心を持って対応することが挙げられる。

 

【解説】
コロナ禍では、世界中のあらゆる観光地が苦境に立たされました。観光以外に目立った産業のない国では、深刻な事態も起きています。観光業に頼りきりだったスリランカでは、コロナ禍で海外からの観光客が激減し、多くの雇用が失われました。そこに物価の高騰などが重なり、政府に対する国民の不満が爆発し大規模なデモに発展、大統領が国外に逃亡したことは記憶に新しいでしょう。日本でもその地域の観光業への依存度によって、コロナ禍が地域経済にもたらす影響に差が生まれました。以上のような事例を踏まえ、観光立国を目指しながらも、観光業に頼りきりになることなく、他の産業の育成を進めていくことが重要になります。
紙面のアメリカのエバンさんの話にあるように、日本には世界中で人気を誇るマンガ・アニメ・ゲームがたくさんあります。日本に足を運ばなくとも、自国でコンテンツを楽しんでもらうことが日本の収益につながります。これから先、こういったカルチャーの担い手を育成することも、日本にとっては重要なのかもしれません。また、近年では他国に圧されがちですが、車や工業製品なども世界中から高く評価されてきました。AIや自動化など技術的な進歩がめざましい今こそ、こういった部門の技術者育成により力を入れていきたいところです。

 

【問3】

どちらかを選んで考えてみよう。

①あなたが住む地域で、あるいは、旅行で行ったことがある・行ってみたい地域で実際に起きている「オーバーツーリズム」の問題を調べ、その対策について考えてみよう。

②観光立国を目指す上で、あなたが住む地域の観光業を盛り上げるための施策や、私たちが出来ることについて考えてみよう。

 

【解答のポイント】

  • 付け焼き刃的な対策になっていないか、持続可能なものか

  • 環境や景観の保全と、観光産業のバランスがとれているか

  • その地域の実情を反映したり、特色を活かしたものになっているか

  • 環境や景観の保全を配慮したものになっているか

  • 実際に実現が可能か、現実的なものになっているか

  • その地域の実情を反映したり、特色を活かしたものになっているか

 

【解説】
本問は、読者の皆さんが住む地域、あるいは、旅行で行ったことがある・行ってみたい地域に合わせて選択したいずれかの問いについて考える形式になっているので、解答例は示さず、解答のポイントをそれぞれいくつか示しました。自分で考えた対策・施策が、ポイントを踏まえたものになっているか確認してみましょう。
解答を考える上で、実際に各国・各自治体で行われている対策・施策を調べてみたでしょうか。それらも参考にしながら、自分なりにオリジナリティのあるものが考えられるとより良いでしょう。
解答のポイントにある「環境や景観の保全」、「持続可能」は、最近の観光業のトレンドでもあります。地域の自然環境を守りながら、観光業を活性化させ、住民の暮らしを良くしていけるような観光地の開発や、サービスのあり方を見定め、旅行の設定を行う「サステイナブルツーリズム」という概念が近年提唱されています。

 

B面「テスト形式」の解答ポイント

【問題1】の問1について

ネアンデルタール人は現生人類とは異なる種で,既に絶滅してしまった化石人類の一種です。19世紀の半ばにドイツのネアンデル渓谷で化石が発見されたことからその名がつけられました。主に現在のヨーロッパ周辺に分布していたとされます。ネアンデルタール人は現生人類と同等の知能を持ったと考えられています。一部の化石の出土の状況には埋葬を行っていたと解釈できるものもあり,そうであれば死や死者を特別視する何らかの観念を持っていたことになります。ネアンデルタール人の絶滅の原因には諸説あり,環境的要因や交雑による吸収などの説があります。他の選択肢はいずれも新人(現生人類と同種)の化石で,クロマニョン人はフランス,周口店上洞人は中国,港川人は日本で発見されました。

 

【問題1】の問2について

現生人類の種名であるホモ・サピエンスは、18世紀スウェーデンの学者で「分類学の父」とされるリンネによって命名されました。ラテン語で「知恵のある人」を意味しています。他の人類も「ホモ・○○」という種名を与えられています。例えばネアンデルタール人であれば、「ホモ・ネアンデルターレンシス」と呼ばれます。
また、人文学でも「人間は何をもって人間たりうるか」を考える際に「ホモ・○○」という表現が用いられます。例えば、オランダの歴史学者ホイジンガは『ホモ・ルーデンス』(遊ぶ人、という意味)という本で人間の本質が「遊び」であると論じました。「ホモ・サピエンス」という名付けも人間の本質を「知恵」や「理性」に見るリンネの立場の表れと言えます。

 

【問題1】の問3について

現生人類の細胞核ゲノムのうち、ネアンデルタール人由来とされる塩基配列は1~4%とされています。とはいえ、全ての現生人類がネアンデルタール人由来の塩基配列を持つわけではありません。ペーボ博士らがネアンデルタール人のゲノムと世界各地の人々(現生人類)のゲノムを比較したところ、アフリカのサハラ以南に暮らす人々はこの配列を持っていないことがわかりました。一方で、サハラ以南以外の地域の人々のゲノムに含まれるネアンデルタール人由来の塩基配列の割合は、どこに住んでいる人でも同じくらいであることがわかりました。このことから、ペーボ博士らは現生人類がアフリカから拡散し始めて中東に至った段階で交雑が起きたものの小規模で、またその後の交雑の機会は少なかったと結論づけました。

 

【問題1】の問4について

人類は進化の段階に合わせて猿人、原人、旧人、新人に分類されます。そもそも何を持って人類と類人猿を区別するかですが、古人類学では直立二足歩行などが基準となっています。現状で最古の人類とされるのはチャドで発見された700万~600万年前の人類であるサヘラントロプス・チャデンシスです。これやアルディピテクス(440万年前)、アウストラロピテクス(420万~200万年前)といった人類が猿人に分類されます。原人は猿人と比べると脳容積が増えて知力が向上したとされます。火を使用した痕跡なども見られます。この段階にはホモ・ハビリス(240万~180万年前)、ホモ・エレクトゥス(180万~20万年前)などが含まれます。ジャワ原人や北京原人はホモ・エレクトゥスの仲間です。旧人は約60万~3万年前に生存していたとされます。脳の容積は現生人類より多いものも見られ、道具としては大きな石の一部を割り取って作った剥片石器などを用いました。新人は化石人類のうち、ホモ・サピエンスであるものを指します。

 

【問題2】の問1について

裾野産業とは一つの製品を生産するために必要な部品等を供給する業者を指します。例えば自動車会社は自動車製作のための部品を様々な会社から購入しています。一方これらの会社も、自動車会社に納品するための部品を製作するために、別の会社から製作に必要な部品を購入しています。そして、さらにその会社は別の会社から部品を購入しています。愛知県では、特にトヨタ自動車によって自動車を作るための裾野産業が構築されています。このようにトヨタ自動車やその関連企業が多数所在する西三河地方が特に製造業が盛んですが、尾張地方でも、プリンターやミシンの生産を行うブラザー工業や食品生産を行うカゴメ株式会社などが存在し、様々な製品が生産されています。

 

【問題2】の問2について

グラフを見ると、愛知県はキャベツの出荷量の都道府県別割合が19%とあります。このことから愛知県のキャベツは全国シェアがおよそ2割とわかります。愛知県の平野部の中でも西部の尾張や西三河地方は比較的寒暖差の激しい地域ですが、東三河地方、特に渥美半島は温暖で、県内でも屈指の農業地帯となっています。キャベツの他にもトマトやしそなども多く生産されています。

 

【問題2】の問3について

電照菊とは出荷時期を調整するために人工的に照明を当てて育てた菊のことです。菊は日照時間が短くなると花芽が形成され、やがて花が咲くので、太陽の代わりに照明を用いて花が咲く時期をずらす栽培法です。主にビニールハウスを用いるこの栽培法は夜に電灯をともすことから、電照菊の栽培がピークとなる秋頃には一帯のビニールハウスが明るく照らされて、夜景を楽しむこともできます。

 

【問題2】の問4について

選択肢の中で愛知県出身なのは将棋棋士の藤井聡太竜王だけです。藤井さんは2021年に、名古屋城からほど近い名古屋能楽堂で行われた対局中にバニラアイスの「ぴよりん」を注文し、話題になりました。近年では将棋の対局の内容だけでなく、「観る将」と呼ばれる対局中の所作や食事などに注目する将棋ファンも増えており、対局中の食事は「将棋めし」と言われることもあるようです。

 

 

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2022年11月4日号

A面「ワークシート」の解答ポイント

【問1】

日本の若手研究者が立たされている苦境とはどのようなものか、資料を参考に、具体的な例をいくつか挙げてみよう。

 

【解答例】

  • 奨学金の金額が少ない、多くの奨学金が借金であり返済の負担が大きい。

  • 大学での研究職のポストが少ない、ポストに就けても不安定な有期雇用が多い。

  • 専門性の高い学生は企業への就職活動をする際不利になる。

  • 女性差別をされる場合がある。

 

【解説】
【資料1】と【資料2】、およびツイッターでの声を集めた図を参照してまとめましょう。【資料1】では第1段落で奨学金について、第2段落で企業への就職活動で不利になることが語られています。ツイッターでの声にも奨学金についての話題があるので関連をおさえられるとなおよいでしょう。
【資料2】では第2段落から女性差別の存在、第4段落から研究職のポストの得にくさがわかります。雇用についてはツイッターでも不安定さや任期について触れられているので合わせておさえましょう。

 

【問2】

【資料2】の下線部にある「基礎研究」とは、研究対象の本質に迫る研究を指し、多くの場合金銭的な利益には直結しないものである。こうした研究を支援するときに意識すべきことは何か、考えをまとめてみよう。

 

【解答例】
利益につながる見通しがあるかどうかだけで評価せず、長期的な視野を持って支援を続けていくこと。

 

【解説】
「基礎研究」とは、設問文の通り研究対象の本質に迫るような研究です。例えばブラックホールが存在することを証明したり、物理学の量子の性質を明らかにしたり、「酵母」という単細胞生物について研究したりすることなどがあたります。多くの場合研究者の純粋な興味に基づいて始められ、何かの役に立つことや新たなものの開発につながることを意識せずに研究が進んでいくため、お金に直結するような研究とはなりにくいものです。
しかし例えば「酵母」の研究のなかで「オートファジー」と呼ばれるタンパク質の分解の仕組みが明らかになった結果、他の生物の「オートファジー」の研究を大きく前進させ、ゆくゆくはパーキンソン病などの神経性疾患やがんの治療法の開発につながるのではないかと期待されるようになるなど、科学と人類の発展に大きな貢献をすることもあります。この「酵母」の研究をした大隅良典氏は2016年にノーベル生理学・医学賞を受賞しましたが、受賞までに「酵母」について40年ほど、「オートファジー」について28年ほど研究を続けており、成果が認められるまでに長い時間がかかるものでもあります。
このような研究に対する支援として、主に金銭面での支援が求められていることは資料全体から読み取れるでしょう。研究者はお金になりにくいことを長期間続けていくのですから、外部から金銭的支援を受けなければ継続できないのは当然とも言えます。
しかしこの事情を、支援をする側の視点から見ると、多額の支援をしても、成果も利益もなかなか出ないことになります。短期的な利益を求めたり、成果だけを重視する姿勢では、基礎研究にお金を投じ続けることは難しいといえ、反対に、物事を長い目で見て、成果や利益によらず継続的に支援を続けていく姿勢が、基礎研究の支援には必要だと考えられます。
また、こうした視点は基礎研究以外の研究の支援にもある程度必要です。基礎研究の対義語は「応用研究」などであり、例えば「オートファジー」とがんの関係を明らかにしようとするような、実用に向けた研究を指しますが、新たな研究、開発である以上、トライアンドエラーを許容して継続的に支援することが大切です。
解答例は以上のような考えに基づいて作成しましたが、まだ成果や利益が出ない研究も含めて幅広く支援していくべき、というような解答も書けるでしょう。基礎研究は基本的に特定の目的や応用を意図しないため、何の役に立つか分からないことがあります。しかしこうした研究が折り重なって人類は発展してきたのであり、将来のイノベーションのためにも欠かせない研究分野でもあります。
よって、成果や計画の優れた研究を選んで研究費を与えるなどの支援方法では基礎研究は評価しにくいといえます。現在示せる成果や計画によらず、幅広い分野を支援していく姿勢が大切だといえるのです。

 

【問3】

日本の研究力低下の原因として、国立大学の運営資金の不足が挙げられている。運営の基盤の一つには国から配布される「運営費交付金」があるが、その額は少しずつ減少してきた。これを踏まえて、日本の研究力を維持する方法を考えてみよう。

 

【解答例1】
民間企業など大学以外での研究の充実を図る。営利組織での研究は実用的なものに偏りがちだが、長期的な視野を持つ取り組みには奨励金を出すなどして優遇する。博士号取得者の就職先の確保にもつながると思われる。

 

【解答例2】
公的資金を元手として投資を行い、その運用益を大学の運営資金に充てる。また、大学が研究内容を積極的に公開し、クラウドファンディングを通じて市民から資金を調達する。継続的な人件費、研究費の増収が見込めるのではないかと考える。

 

【解説】
設問が問う「日本の研究力を維持する方法」に直接つながるのは何かと考えると、資料を参考にすれば、若手研究者を苦境から救い、研究を安心して続けられるようにすることだといえます。若手研究者は問1のように様々な問題を抱えていますが、長く研究を続けるうえでは、特に安定した雇用を確保することが重要になるでしょう。
設問文は「運営費交付金」に触れており、この減少が現在の国立大学の運営資金不足と若手研究者の雇用ポストの減少、不安定化につながっていると思われます。しかしこの金額を増やすと単純に解答するだけでは不足感が残ります。「運営費交付金」を増やすと、学術・研究の分野への国の支出が増えることになります。読売中高生新聞の読者のみなさんならご存知の通り、日本は現在学術・研究以外の分野にも多くの問題を抱えていて、お金に余裕があるとはいえない状況です。そのなかで支出を増やすのであれば、他の分野よりも優先して問題を解決する理由を説明したり、国の収入をどのように増やすのか示したりする必要があるでしょう。
解答例では「運営費交付金」に頼らずに若手研究者を支援する方法を考えてみました。方法は様々ですが、問2で見たように、長期的な継続を視野にいれて支援したいところです。
【解答例1】は民間企業での研究の充実を促進するという方法を挙げてみました。民間企業はお金を稼ぐ能力が高いので持続的な研究が期待できますし、企業自体の数が多いので研究職のポストも多くつくりだせます。しかし、問2でも見たように民間企業は成果や利益につながりにくい研究には費用を投じにくいので、研究内容が偏らないように調整する必要があります。
【解答例2】は大学の運営資金を増やす方向で書きました。研究者が大学で安定した職を得られるようにしようという考えです。投資の運用益は時間が経つごとに増えていくことが多いので、継続的な支援には適した方法といえます。
実際に、投資の運用益を使って大学を支援しようとする取り組みも始まっています。政府は10兆円規模の「大学ファンド」(ファンドとは基金のこと。複数の組織などからお金を集めて投資する)を設立し、株式などに投資して、年3000億円の運用益を上げることを目指しています。そしてその中から大学への助成金を出す計画です。
しかしこれはすべての大学に配布するわけではなく、「国際卓越研究大学」として認定を受けた数校への集中的な支援となります。数校への支援では研究者の雇用ポストの増加はそこまで大きなものにはならないともいえます。
どのような支援策を考えるにせよ、美点があれば難点も出てくるものです。自分で答案を書くときに思いついた難点があれば、それを克服する方法も合わせて書くと、より説得力のある答案にすることができます。大学受験の小論文などでもよく使われる手法ですので覚えておくとよいでしょう。
なお、設問は「日本の研究力を維持する方法」を聞いているので、もちろん若手研究者の待遇を改善すること以外の方法を考えても構いません。優秀な研究者や留学生を海外から招き寄せる、などもよいでしょう。

 

B面「テスト形式」の解答ポイント

【問題1】の問1について

エリザベス女王の死去に伴って即位した新国王はチャールズ3世です。チャールズという名前の国王は大変に久しぶりで、チャールズ1世・2世はともに17世紀、つまり300年以上前の国王です。チャールズ1世はイギリス革命(清教徒革命)によって1649年に処刑された人物です。チャールズ2世はその息子で、革命に伴って亡命していましたが、1660年に革命が終わったため、帰国して即位しました。このようにチャールズはあまり縁起の良い名前ではないため、即位時に改名するのではないかという予測もありましたが、改名せずそのままチャールズ3世として即位しました。

 

【問題1】の問2について

エリザベス女王の趣味は競馬でした。多くのサラブレッドを所有していて、いくつものイギリスの重要なレースで優勝しています。日本の競馬にも、1975年にエリザベス女王が来日した記念で創設された「エリザベス女王杯」というレースがあります。なお、登山は現在の天皇陛下の趣味、テニスは上皇陛下の趣味です。

 

【問題1】の問3について

現在日本で用いられている国名のイギリスは、イングランド・ウェールズ・スコットランド・北アイルランドの4つの地域で構成されるグレートブリテン・北アイルランド連合王国の通称です。英語圏ではUK(United Kingdom)という略称でも知られています。ブリテン島南東部のイングランドが16世紀までにウェールズを併合し、皇太子がウェールズ公(プリンス・オブ・ウェールズ)を名乗る慣習が生まれました。その後、1707年にスコットランドと合併してグレートブリテン王国となり、1801年にはアイルランドを併合します。その後、アイルランドは北部を残して独立したため、現在の国名になりました。

読売中高生新聞「時事王」掲載問題の解答ポイントなどを公開。テストに役立つ時事を学ぼう!

 

【問題1】の問4について

記事中に「イギリス国歌の歌詞は「ゴッド・セイブ・ザ・クイーン」から「キング」に変更」とありますから,新しいイギリス国歌の歌詞は「ゴッド・セイブ・ザ・キング」になることがわかります。これを英語で書けば正解になります。

 

【問題2】の問1について

ニュートンは17世紀から18世紀にかけての物理学者、数学者です。光の性質や微積分法など様々な研究で知られていますが、特に有名なのが、物体は常に(宇宙空間においても)互いを引き合っているという万有引力の法則の発見です。当時のイギリスでは、近代的な科学が発展し実験・観察が重視されるようになりつつあり、ニュートンは17世紀に設立された自然科学に関する学術団体である王立協会の会長職も務めました。

 

【問題2】の問2について

ナポレオンはフランス革命後の混乱する情勢の中で、フランス皇帝に即位した人物です。ナポレオンは諸外国との戦争に次々と勝利しヨーロッパ大陸の多くの地域を勢力下に収めました。イギリスとも争いましたが、イギリスの海軍提督のネルソンの活躍もあって、トラファルガーの海戦で敗れ、イギリスへの侵攻は断念しました。現在でもネルソンはイギリスを護った人物として英雄視されています。

 

【問題2】の問3について

第2次世界大戦の際のイギリス首相チャーチルは、作家としても知られています。第2次世界大戦の回顧録による業績などによってノーベル文学賞を受賞しました。これまで各国の首相や大統領を務めた人物でノーベル文学賞を受賞しているのは、チャーチルだけです。

 

 

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2022年10月7日号

A面「ワークシート」の解答ポイント

【問1】

資料を参考に、校則のあり方・定め方をめぐる今回の「生徒指導提要」改定案のポイントをまとめてみよう。

 

【解答例】
校則は、その意義や目的を教職員が適切に説明できるようなものでなければならない。
また、社会の変化を踏まえた定期的な見直しも求められる。
児童・生徒による自主的な校則の吟味も大切であるが、それ以上に、教職員側での意識変化が求められているようだ。

 

【解説】
現代の社会では、様々な立場の人たちが、何かしらの「説明責任」を果たすことが求められるようになっています。
「不特定多数の人々に対して、納得してもらえるように説明する」というプロセスを経ることで、その規則や行為、意思決定のあり方などに対する、内部の関係者からの批判的な吟味も行われるようになると言えます。

 

【問2】

「ブラック校則」廃絶が進む一方で、「慎重派」の意見もある。あなたも「慎重派」になったつもりで、「ブラック校則」廃絶運動が必要以上に過熱した場合、どのような問題を生むと考えられるか、意見を出してみよう。

 

【解答例1】
「ブラック校則」廃絶運動が過熱した場合、少しでも自分の肌感覚に合わない校則があると、すぐにそれを「ブラック」と認定し、融通の利かない仕方で頑迷に廃絶を主張する人たちが出てくるのではないか。
例えば「自由」というものを、「いつでもどこでも無制限にオシャレができる」こととすり替えて理解する人たちが現れるかもしれない。
一般に校則というものには、それが定められた時点における、教育者の問題意識や理想などが反映されているものだと思うのだが、運動の過熱によって、各人がそれらについて考えるというプロセスが、封じられることにもなりかねない。
また、特に若者が、「自分たちのことは何でも自分たちで決められるし、決めていくべきなのだ」と、万能感とともに思い込んでしまうことにも、警戒しておくべきだろう。
私たちはあくまで、まだまだ人生における未熟者なのであり、物事の考え方や生活の仕方をめぐる大抵の事柄に関しては、先人たち、大人たちの判断を基本的に尊重すべきであるはずなのだ。

 

【解答例2】
「ブラック校則」廃絶運動の過熱により、生徒の外見に関する規定があまりに緩いものになってしまうと、積極的に派手な姿で登校しようとする人たちが増え、そのためお互いに外見に関して、余計なことを言ったり言われたりするという機会が増えることになると思う。
外見がある程度一律に定められている場合と比べて、「ダサい」見た目になってはいけないと過度なプレッシャーを感じる生徒も増えるだろうし、また生徒たちの装いに、各家庭の経済力などが露骨に反映される事態にもなりかねない。
さらに、自分の外見のあり方に頭を悩ませてしまうことにより、本来であれば部活動や勉学に割けるはずだった集中力や時間などが、そちらに奪われることになるかもしれない。
「過度な自由」よりは「適度な秩序」が行き渡っている方が、学校生活を送りやすいと言えそうだ。

 

【解説】
世の中には、「ブラック」とまではいかないまでも、その学校特有の「個性的」な校則というものが多くあり、そうした校則が、例えば制服や授業カリキュラムなどとともに、各学校の「校風」を形成することになっているとも言えます。
一般に、社会の内部に様々な「校風」を持つ学校が設立されているということ自体は、それだけ多様な価値観を持った卒業生を社会へと送り出しているという意味で、民主主義の理念に適合した状態であるとも言えます。
また近代社会において公立ではなく私立の学校が設立されてきたことの意味は、まさにそこにあるとも言えます。
必ずしも、「校則」をめぐって「支配する者」と「支配される者」という図式に囚われる必要はなく、より広く包括的な視野から、それについて判断するというアプローチもありうるでしょう。

 

【問3】

あなたの学校の校則について、「ブラック校則」と見なすべきものがあるかどうかを、「ブラック校則」の基準とは何かも含めて考えてみよう。必要であれば修正案も出してみよう。

 

【解答例1】
髪の長さに関して、「女子は肩に触れない程度」で、「男子は眉、耳、襟のいずれにもかかってはならない」という趣旨の規定がある。
先生はこれらの規定について、「思春期の男女は、オシャレとして必要以上に自分の髪型について考えてしまう傾向があるので、それによって授業に集中できなくなる事態を防ぐ目的で、定められているのだと思う」と言っていた。
その趣旨は理解できるが、髪型とは思春期の男女にとってきわめてデリケートなものでもあり、特に男子などは、それによって不本意に「いじられる」ことになるかもしれない。
男子の髪型について、男女平等や性の多様性という観点からも、現状の制限をもっと緩やかにしておいて、柔軟に運用する余地を確保しておくべきなのではないだろうか。

 

【解答例2】
生徒手帳を見直してみると、「学校の内か外かを問わず、学生らしい振る舞いをすること」という趣旨の規定があった。
友人はこの規定について、「学生らしい振る舞い」という言葉はどのようにも解釈できるので、生徒指導をする先生によって、濫用される危険があると言っていた。
しかし私は逆に、様々に解釈されうる言葉だからこそ、何か本当に問題のある生徒の振る舞いが発生してしまった場合に、この規定を根拠として、先生も指導しやすくなるのではないかと思う。
規定そのものの吟味も大切であるが、それ以上に、それを実際に運用する人たちがいることを踏まえ、その人たちへの信頼も加味しながら、規定の意味や影響などについて考えてみてもよいだろう。

 

【解説】
全国各地の学校で定められている校則には実に様々なものがあり、「ブラック校則」という言葉が生まれ、それに対する関心が高まった昨今、インターネット上などにおいて、「こんなおかしな校則があるのか」と、驚きの声が上がることがよくあります。
ですが、その「おかしい」「驚きだ」という感覚が、本当に、誰にとっても、どのような意味においても、共有できるものであるのかどうかも、考えてみる必要があるでしょう。
これまで長らく通用してきたルールなのですから、そこには、意外にも優れた意図や効果が、隠されているかもしれません。

 

B面「テスト形式」の解答ポイント

【問題1】の問1について

白河しらかわの関とは古代からあった東北地方(奥州)の入り口にあたる関所で、現在の福島県南部の白河市にありました。東北地方から北の高校野球部は冬の気温が低く、積雪もあるため練習時間が確保しづらく、春夏の甲子園で優勝するのが難しいといわれてきました。しかし、2006年夏に駒大苫小牧こまだいとまこまい高校が北海道勢として初優勝し、深紅の優勝旗は先に、白河の関よりさらに北の津軽海峡を越えてしまいました。その16年後の2022年夏、仙台育英高校が初めて東北地方の高校として甲子園で優勝しました。
松尾芭蕉は江戸時代、17世紀後半に活躍した俳諧師はいかいしで、各地を旅して多くの俳句を詠みました。1689年、弟子とともに江戸を出発、白河の関を越えて東北地方に入り、日本海側に出て北陸地方などを旅して江戸にもどった際の紀行文『おくのほそ道』がよく知られています。有名な俳句としては、源頼朝に滅ぼされた奥州藤原氏ゆかりの平泉ひらいずみ (岩手県)で詠んだ「夏草や つわものどもが 夢のあと」などがあげられます。

 

【問題1】の問2について

アは誤りです。征夷大将軍の徳川氏一族の親藩で、将軍の跡継ぎを出すことができた江戸幕府の徳川御三家の大名は尾張おわり紀伊きい、水戸で、それぞれ現在の愛知県名古屋市、和歌山県和歌山市、茨城県水戸市を城下町としていました。仙台市は江戸時代、外様大名の伊達だて氏の城下町で、仙台城跡の伊達政宗だてまさむねの銅像は都市のシンボルとなっています。
イは正しいです。宮城県の県庁所在地の仙台市は高度経済成長期以降、東北地方の中心都市として人口が増加し続け、仙台育英高校が初めて夏の甲子園決勝に進出した1989年、東北地方初の政令指定都市となりました。2022年現在、東北地方で唯一の政令指定都市で、地方自治の上で特別扱いを受けています。
ウは正しいです。仙台市は1999年、東北地方で初めて人口100万人を突破しました。その後も人口は増え続け、2020年の国勢調査では東北地方最多の人口109万6,704人でした。

 

【問題1】の問3について

山口県下関市は本州の最西端に位置し、九州との間には関門かんもん海峡があり高速道路の橋、鉄道や道路のトンネルなどで直接結ばれています。関門海峡の対岸は福岡県北九州市で、下関市と北九州市門司もじ区(旧門司市)から「関」と「門」の一文字ずつとっています。北九州市は八幡製鉄所を中心に発達した北九州工業地帯に含まれ、1963年に八幡市や門司市などの合併により誕生した九州初の政令指定都市でしたが、工業が衰えるとともに人口も減少し、近年は100万人未満です。2022年現在、九州の政令指定都市は北九州市、福岡市、熊本市の3都市です。

 

【問題1】の問4について

大正時代の1914年、バルカン半島でのサラエボ事件をきっかけにヨーロッパ全体の戦争に発展した第一次世界大戦において、日本は日英同盟を理由にイギリスなどの連合国側として参戦しました。大戦中の1915年、全国中等学校優勝野球大会が初めて開催され、これが現在の夏の甲子園(全国高等学校野球選手権大会)の前身となりました。当時は現在の中学校と高等学校に相当する5年制の中等学校の大会でした。兵庫県西宮市の甲子園球場は1924年に開場し、この年の第10回大会から会場となりました。
日清戦争は1894年から1895年、日露戦争は1904年から1905年と、ともに明治時代の戦争です。第二次世界大戦は昭和時代の1939年から1945年までです。

 

【問題2】の問1について

ペレストロイカ(立て直し)とは、ゴルバチョフ氏が推進した一連の政治改革のことです。具体的には、市場経済の導入やグラスノスチ、大統領制の導入などにより、当時のソ連の共産党による独裁体制の行き詰まりや、社会や経済の混乱からの脱却を目指しました。
グラスノスチ(情報公開)とは、ペレストロイカの一環として展開された政策で、ゴルバチョフ氏により推進された言論の自由化のことです。情報発信を徹底的に制限してきた従来の方針を一転して、メディアによる報道の自由化や国家情報の公開が促進されました。
コミンテルンとは、1919年にレーニンの提案によりモスクワで創設された、世界に共産主義を普及させるための活動をした国際組織のことです。次第に活動をアジアに広げ、中国共産党の創設にも関わりました。

 

【問題2】の問2について

冷戦とは、アメリカ合衆国の率いる資本主義陣営とソ連の率いる社会主義陣営の対立による緊張状態のことです。2国が直接戦火を交えることはなかったのでこう呼ばれています。しかし、朝鮮半島、ベトナムでは米ソ両国が介入する戦争が起こり、資本主義陣営と社会主義陣営に国が二分されました。また、米ソ両国は核実験を繰り返し、世界平和を脅かしました。
ゴルバチョフ氏はソ連の代表として渡米してレーガン大統領と会談を行い、1987年にINF(中距離核戦力)の全廃に関する条約を締結しました。1989年にはブッシュ(父)大統領とのマルタ会談で冷戦の終結を宣言しました。

 

【問題2】の問3について

ノーベル賞は、ダイナマイトを発明したアルフレッド・ノーベルの遺言により創設された、人類に最大の貢献をした人物に贈られる賞です。受賞者には賞金やメダルが授与されます。
ゴルバチョフ氏は、冷戦の終結に貢献するなどの功績が評価され、ノーベル平和賞を受賞しました。
他のノーベル平和賞受賞者には、国際赤十字を設立したアンリ・デュナンや、貧しい人々の救済に尽力したマザー・テレサなどがいます。

 

 

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2022年9月2日号

A面「ワークシート」の解答ポイント

【問1】

中絶賛成派「プロ・チョイス」になったつもりで、賛成する理由を簡潔に述べてみよう。

 

【解答例】
テキサス州のように妊娠に気づいた時にもう中絶が違法になってしまうようでは、女性は、例えば就職活動の時期に不意の妊娠に直面すると、いきなり人生の重い決断を迫られることになる。子の父親が認知を拒否するなどといった困難を招かないためにも、中絶の権利を維持したい。

 

【解説】
資料2に登場する「テキサス州に住む女性」の話から、中絶賛成派「プロ・チョイス」の主張が推測できます。
身近なレベルでは解答例のように、就職・転職など人生の大事な機会が不意の妊娠・出産で阻まれるなどといった事態を防ぐこと。
そして、国際連合が主催した1994年の国際人口開発会議で提唱され世界的に知られるようになった人権「リプロダクティブ・ヘルス/ライツ」(Sexual and Reproductive Health and Rights)(日本語訳は「性と生殖に関する健康と権利」)の確立を求める意見も多いでしょう。中絶にかかわるこの権利について、WHO(世界保健機関)による定義がウィキペディアに掲載されていたので、紹介します。「生殖に関する権利は、すべてのカップルと個人が、出産する子どもの人数、間隔、時期を、自由に責任を持って決断することができる権利、そしてそのための情報と手段を持つ権利、およびできうるだけ最高水準の性と生殖の健康を手に入れる権利を認めることにかかわっています。それらにはまたすべての人が差別と強制と暴力をうけることなく生殖に関する決定をする権利も含まれる。」(下線は解説執筆者による強調)

 

【問2】

中絶反対派「プロ・ライフ」になったつもりで、反対する理由を簡潔に述べてみよう。

 

【解答例】
人工妊娠中絶は広義の殺人だと感じるので、私にはできない。犯罪や脅迫により強制された妊娠なら中絶も擁護できるが、そうでない妊娠なら原則として、中絶せず、子とともに生きる覚悟で人生を歩むべきだ。

 

【解説】
資料2に登場する女性の母の話から、中絶反対派「プロ・ライフ」の主張が推測できます。
宗教をもたない人でも、素朴な感情・感覚・直観から、人工妊娠中絶を忌避する意見はよく理解できるでしょう。

 

【問3】

あなた自身はどう考えるか。自分の考えをまとめてみよう。

 

【解答例】
テキサス州の女性やその母に類する経験が私や周囲にないため、プロ・チョイスかプロ・ライフの一方に同調する意見はもちにくく、中立的に考えざるを得ない。ただし一つだけ、人生を大きく左右する妊娠や中絶の問題に、政治的な介入(ほぼ中絶禁止の州法を連邦最高裁の新判決が後押し)が行われたのは、「自由の国」アメリカらしくないと思った。テキサス州の女性が語った、政治家に左右されたくないという意見は、納得できるものだった。

 

【解説】
中立的な立場からの、初歩的な見解を解答例にしてみました。
アメリカでは、プロ・チョイス対プロ・ライフのいさかいが民主党対共和党の政治対立と重なっているようです。そうした政治対立で妊娠や中絶の問題への対処が歪められることこそ、あってはならないことだと考えられるのではないでしょうか。
良記事だった資料2を共感しながら読めば、以上のように思索を深めていくことができるでしょう。

 

B面「テスト形式」の解答ポイント

【問題1】の問1について

今回のゴタバヤ・ラジャパクサ大統領が辞任に用いた方法はメールでした。なお、今回の正解ではありませんが、Twitterは全世界にメッセージを公開できるため、各国政府や政府機関のアカウントが存在し、広報活動などに用いられています。日本国政府も首相官邸や内閣府、外務省など多様なアカウントを持っています。

 

【問題1】の問2について

99年間は象徴的な意味合いの強い数字であり、遠い未来まで契約が続くことを意味しています。なお、歴史上に登場する事例では、イギリスが1898年に香港地域の一部である新界を99年間租借しました。そしてこの期間が終わる1997年に、その他の地域も含めた全ての香港地域を中国に返還しました。

 

【問題1】の問3について

スリランカの首都スリジャヤワルダナプラコッテ(スリジャヤワルデネプラコッテ)は非常に長いことで有名です。コッテが元々の名前でしたが、縁起の良い形容を付け足していったところ、このように長い名前になったようです。1985年に隣接するコロンボからの遷都が実施されましたが、実際には政府の主要機関の多くが現在でもコロンボに残ったままで、スリランカの人口最大都市もコロンボです。

 

【問題1】の問4について

スリランカの名産品は紅茶です。「セイロン」というブランドにもなっています。スリランカのある島をセイロン島と呼び、またスリランカの旧国名もセイロンです。スリランカには元々チャノキが生えていたわけではなかったのですが、イギリスの植民地であった時代に持ち込まれて、大農園(プランテーション)が広がっていきました。

 

【問題2】の問1について

気象庁の定義によると、日本の活火山は111か所もあるとされています。活火山が存在していないのは近畿地方と四国地方のみで、北海道・東北・北関東・九州地方には数多くの活火山があります。小笠原諸島の南方にあり、2021年8月に噴火して、その影響で大量の軽石が沖縄県などに流れ着いた福徳岡ノ場のような海底活火山もこの111か所に含まれています。日本の最高峰の富士山も活火山の一つです。

 

【問題2】の問2について

1991年6月に噴火した雲仙・普賢岳は長崎県の島原半島にあります。したがって正解はウです。噴火時には大規模な火砕流が発生して大きな被害が出ました。2000年9月に噴火した三宅島は伊豆諸島の一部です。したがって正解はイになります。行政区分上は東京都の一部です。噴火の際には一時的に全島民が避難しました。2014年9月に噴火した御嶽山は長野県と岐阜県の県境にある山ですので、アが正解です。標高が3,067mもある高峰で、噴火時には多くの登山客が訪れていました。そのため被害が大きくなったと言われています。2015年5月に噴火した口永良部島は鹿児島県の屋久島の西にある島ですので、オが正解です。残った桜島も鹿児島県で、残ったエが正解になります。

 

 

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2022年8月5日号

A面「ワークシート」の解答ポイント

【問1】

資料では日本の難民受け入れ数が低い理由としてどのようなことが指摘されているか、まとめてみよう。

 

【解答例】
日本が海に囲まれており、難民の発生する紛争地からも遠いといった地理的な要因がある。
加えて、難民認定審査を厳格に行っているという制度的な要因も指摘されている。

 

【解説】
日本の難民受け入れ数が低い理由については、まず資料の冒頭に「四方を海に囲まれ、中東などの紛争地から遠いことが大きいとみられる」と書かれており、こうした地理的な要因が一つ挙げられます。しかし資料では「理由は他にもあるようだ」とあるため、他の理由も探します。すると、資料の後半で「難民認定審査の基準が厳しすぎる」可能性に触れられているので、これを盛り込めばOKです。
国連の難民条約では、難民は「人種、宗教、国籍、特定の社会的集団の構成員、政治的意見を理由に迫害を受ける恐れがあり、国籍国の外にいる者」と定義されていますが、日本はこれを厳密に解釈することで、就労目的の偽装難民(難民を装っている者)を防ごうとしています。しかし一方で、他国では一般に難民とされる人々についても日本では難民として認められず、それが結果的に日本の難民認定数の低さにつながっているのではないか、という声もあります(たとえば、ウクライナから戦火を逃れてやってきた人々も、日本では「難民」ではなく、「避難民」という特別枠で受け入れられています)。

 

【問2】

グラフを見ると、2020・21年の難民認定申請数の変化が著しいが、その要因には何があると考えられるか、あなたの考えをまとめてみよう。

 

【解答例1】①
コロナ禍による世界各国の出入国制限によって、難民が日本に入国できなかったことが要因の一つとして考えられる。

 

【解説】
新型コロナウイルス感染症は19年末に第1例目が確認されてから数ヶ月で世界的に感染流行し、現在でも猛威を振るっていることは皆さんも周知の事実でしょう。各国政府が行った対策の一つに出入国制限がありますが、その出入国制限によって各国間の人の往来が大幅に減少し、それに伴って難民の来日も減少したと考えられます。

 

【問3】

あなたの身近に難民として定住している人がいたとします。あなたがその人と交流するとき、どのような配慮が必要となるか、考えをまとめてみよう。

 

【解答例】
難民とは基本的に「異文化に生きる人々」であり、日本に避難してきた当初、自文化と日本の文化との間にギャップを感じた者も少なくないだろうと予想される。そういったギャップは、旅行や留学などの平時であれば経験や思い出などの一つとして大抵は受けとめられるものだが、「難民」という非常時においては、ギャップを受けとめられるほどの精神的な余裕があるとは考えづらい。余裕がない時に感じる異文化ギャップは、時として難民を悩ませ、ストレスを与えかねないものである。
よって、そういった悩みやストレスを抱え込んでいないかを確認し、その解消・緩和に助力することが配慮として必要だと考える。

 

【解説】
異文化交流において、自文化と他国との文化にギャップを感じるだろうことは容易に想像できると思います。
これが平時であればそういったギャップを感じても「え、そうなんだ」とあっさり済んだりするものですが、しかし「難民」という非常時においてはそうあっさり済むとも限らず、「相手の文化に合わせなければならない」「自国ではこうだったんだけどなぁ」とストレスを感じていたり、あるいは悩んでいたりすることもあるかもしれません。そういったストレスや悩みがないかの確認、および解消・緩和が、受け入れる側のすべき配慮であると考えられます。

 

B面「テスト形式」の解答ポイント

【問題1】の問1について

ア~エの中で東北地方の地名の組合せはエしかありません。東北新幹線は1982年に初めて大宮駅と盛岡駅(岩手県)の間で開業し、問題文にあるとおり東北新幹線は1985年に上野駅、1991年に東京駅まで延伸され、東京都心部と東北地方との行き来が便利になりました。2002年に八戸駅(青森県)、2010年に新青森駅まで延伸され全線が開業しました。2016年には新青森駅から新函館北斗駅までの北海道新幹線が開通し東北新幹線の列車が乗り入れています(北海道新幹線は札幌駅まで延伸工事中)。
アの前橋(群馬県)、水戸(茨城県)はともに関東地方で新幹線の駅はありません。イの富山(富山県)と金沢(石川県)はともに北陸地方で北陸新幹線の駅があります。ウの松江(島根県)と鳥取(鳥取県)はともに山陰地方で新幹線の駅はありません。

 

【問題1】の問2について

東日本大震災は2011年3月11日に太平洋沖で発生したM(マグニチュード)9.1の大地震、その後に発生した大津波などを含む自然災害であり、東北地方や関東地方の太平洋岸を中心に各地に大きな被害をもたらしました。問題文にあるとおり、東北新幹線もその被害を受け復旧に1ヶ月以上かかりました。2022年3月16日、福島県沖を震源とするM7.4の強い地震が発生し東北新幹線も各地で被害を受けましたが、このときも復旧工事を急いで進め、1ヶ月かからず29日後の4月14日に全線で運転を再開しました。

 

【問題1】の問3について

Xに入る「さいたま」市は日本で唯一のひらがな書きの都道府県庁所在地です。埼玉県庁のある浦和市、隣の大宮市などが2001年に合併して誕生し、2003年に政令指定都市となりました。大宮駅は東北新幹線と同じ1982年に開業した上越新幹線(新潟駅まで)との分岐駅で、大宮駅から約1.5kmの線路沿いに鉄道博物館があり、大宮は鉄道の町として知られています。

 

【問題1】の問4について

東海道新幹線(東京~新大阪)の開通は1964年10月1日で、9日後の10月10日に日本、そしてアジア初のオリンピックの開会式が東京・国立競技場で開催されました。2度目の東京オリンピックは2020年7-8月に予定されていましたが、COVID-19の影響で史上初となるオリンピックの延期となり、2021年7-8月に開催されました。
Bのサッカーワールドカップは2002年、日本と韓国の2カ国の大会史上初の共同開催で、アジアでは初の開催でした。2022年11-12月、アジアで2度目のサッカー(FIFA)ワールドカップがカタールで開催されます。Cの愛・地球博は2005年に愛知県で、Dの大阪万博は1970年に大阪府で開催されました。2025年、大阪府では2度目の大阪・関西万博が大阪湾の埋立地・夢洲(ゆめしま)で開催されます。

 

【問題2】の問1について

サハリンは北海道の北にある島で、日本では樺太と呼ばれています。(以下、「樺太」の表記で統一する。)江戸時代後期、間宮林蔵は樺太が半島ではなく島であることを確認しました。樺太とロシア沿海州との間の海峡は、日本では彼の名をとって間宮海峡と呼ばれています。
①の誤りの選択肢の満州は中国の民族名で、転じて日本では満州族の居住地であった中国東北部の地域名としても用いられました。
②の誤りの選択肢の伊能忠敬は、江戸時代の測量家で、日本全国を歩いて測量しました。彼の測量をもとに、誤差の少ない日本地図である「大日本沿海輿地全図」が完成しました。伊能忠敬は、測量家として、間宮林蔵にも影響を与えました。

 

【問題2】の問2について

樺太の領土の帰属について、日本とロシアとの間で、19世紀以降に複数の条約が結ばれました。1855年、日露和親条約は、当時自然に成立していた択捉島とウルップ島の間の両国国境をそのまま確認し、樺太については従来通り国境を定めませんでした。1875年、樺太・千島交換条約により、千島全島を領有するかわりに、ロシアに樺太のいっさいの権利を譲りました。1905年、日露戦争の講和条約であるポーツマス条約により、日本はロシアから樺太の北緯50度以南の部分を譲り受け、1945年まで多くの日本人が暮らしました。1951年、サンフランシスコ平和条約により、日本はポーツマス条約で獲得した北緯50度以南の樺太に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄しました。
(参照・出典)
北方領土問題の経緯(領土問題の発生まで)|外務省 (mofa.go.jp)

 

【問題2】の問3について

天然資源に乏しい日本は、火力発電の燃料などの用途として、日本・ソ連共同で、サハリン北東部の原油・天然ガス採掘事業「サハリン2」を運営しており、そこで採れた液化天然ガスを輸入してきました。原油・天然ガスは化学工業や自動車燃料にも用いられるため安定した供給が求められますが、ロシア情勢が不安定になっているので、今後の動向が注目されます。

 

 

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2022年7月1日号

A面「ワークシート」の解答ポイント

【問1】

畜産物の生産量を思うように増やせない事情とは何だろうか。【資料1】を参考に説明してみよう。

 

【解答例】
人口増加にあわせて畜産物の生産を増やすには、飼料となる穀物を栽培する農地や牧草地を増やす必要があるが、地球の陸地には限りがあり、増やせる農地や牧草地には限界があるため。

 

【解説】
経済成長に伴い、先進国のみならず、新興国においても食肉や生乳などの畜産物の需要は増大しています。
この需要の増大にあわせて供給も増やさなくてはならないのですが、ここ50年間で、世界の農地面積はさほど増えていません。
地球上に占める陸地の割合は約3割であり、農業に適した土地はより少ないといえるでしょう。さらに、現在ある農地においても、土壌の劣化という問題が進行しています。
化学肥料に依存したこともあり、養分に偏りのある土壌が増えました。農業生産を無理に増大させようとして土地を酷使すると、砂漠化が進行していきます。
また、乾燥した土地で無理に農耕を行おうとすると,塩類が集積し,農業に向かない土地となってしまいます。
そこで森林を伐採して新たに農地を増やそうとすると、今度は地球温暖化という別の問題を引き起こすことになります。ちなみに家畜からも温室効果ガスは発生しており、地球全体の発生量の約14%を占めると言われています。

 

【問2】

【資料2】では、「たんぱく質危機」解決の方法の1つとして昆虫食が挙げられている。昆虫食の方向性は、①原形をとどめず加工する、②原形のまま加工しない、の大きく2つに分けることができる。あなたが昆虫食の商品開発を担当することになったと仮定して、どちらの方向性で開発を進めていくか。どちらかを選んだ上で、新商品・新メニューを提案してみよう。

 

【解答例1】①
「コオロギクッキー」。昆虫の原形をとどめたまま利用すると、見た目に抵抗感のある人も多いと予想し、加工しやすさも考慮に入れて粉末状にして利用する。
てんとう虫やカブトムシなど可愛い虫の形にして、手に取ってもらいやすいようにする。

 

【解答例2】②
「コオロギソフトクリーム」。ソフトクリームの上に原形をとどめたコオロギの素揚げをのせる。
「甘いものに群がる昆虫」という構図はインパクトも大きく、各種SNSに投稿してもらうことで、商品の知名度も向上するのではないだろうか。

 

【解説】
【資料2】にもあるように、昆虫食の習慣は世界各地にあります。アジア・アフリカを中心に、約20億の人びとが1900種以上の昆虫を食用としているそうです。
また、日本においても、長野県などではイナゴや蜂の子、ざざ虫(カワゲラやトビケラなど水生昆虫の幼虫)などの昆虫が、佃煮や揚げ物の形で食べられています。
たんぱく質の含有量も多く、生産するのに必要なエサも家畜に比べると少なくて済むという利点の多い昆虫ですが、「見た目」という心理的要因から昆虫食はなかなか広まっていないというのが現状です。
【解答例1】では、見た目による抵抗感を軽減するため、昆虫を粉末状に加工することを提案しました。こうした加工は実際の商品にも見られるものです。解答例では、型で形を作りやすいクッキーを提案してみました。
見た目の抵抗感が小さいであろう、てんとう虫やカブトムシなどの形に加工すれば、手に取ってもらいやすいと思います。
一方、【解答例2】では見た目のインパクトを生かした商品開発を提案してみました。6月3日号の3面では、タガメサイダーなどのように、昆虫の原形を生かした商品も掲載されていました。
見た目にインパクトがあるということは、「SNS映え」するということを意味します。各種のSNSに上げてもらうことは、商品や会社を宣伝することにもつながります。
みなさんのような中高生を含む、1990年代後半から2010年頃までに生まれた世代は「Z世代」と呼ばれ、マーケティングにおいても注目されています。この設問では、みなさんの自由な発想力を発揮してもらえればと思います。

 

【問3】

食肉不足を防ぐために、個人や社会ができることは何だろうか。あなたが考えた具体的な方法についてまとめてみよう。

 

【解答例】
食肉も含めた食品ロスを減らす必要がある。個人では、購入リストを作成しておくことで買いすぎを防ぐ、企業側では少量パックも販売することで完売を目指す、品質に問題のない食肉をフードバンクに寄贈するなどの対策が考えられる。

 

【解説】
食肉を含めた食品ロスの問題は、私たちにとって身近な問題の1つです。まだ食べられるにもかかわらず廃棄されてしまう食品である食品ロスの量は、日本において2020年度の推計値で約522万tであり、国民1人あたりに換算すると毎日約113gずつ廃棄されていることになります。この量はお茶碗約1杯分に相当するそうです。
食品ロスは大きく、家庭系(約47%)と事業系(約53%)に分けることができます。
家庭系の食品ロスを減らす取り組みは、個人的に実行できることが多いです。調理されないまま廃棄されるのを防ぐには、買いすぎを防ぎ、保存方法を工夫することが求められます。買いすぎないためには、買い物に行く前に購入リストを作成しておくことが有効ですし、冷凍保存を活用することで、保存期間を長くすることもできます。また、食べ残しを減らすことも大切です。家で料理を作るときは作りすぎに気を付ける、外食、特に食べ放題では頼みすぎに注意することも、食べ残す量の削減につながります。
事業系の食品ロスを減らす取り組みが、今回の設問では「社会ができること」にあたります。小売店での取り組みとしては、大容量のパックでは使い切れない人に向けて少ないグラム数のパックの商品も置き、完売を目指すことなどが挙げられます。また、フードバンクに協力することも食品ロス削減につながります。
フードバンクとは、品質には問題がないにもかかわらず、印字ミスや過剰在庫などで売り出せない食品を企業から譲り受け、児童養護施設や困窮世帯などに食品を無償で提供する活動のことを指します。この取り組みにより、捨てられてしまう食品を有効活用することができます。
ここまでは、捨てられる量を減らすという対処法でしたが、そもそもの供給量を増やそうという技術革新も起こっています。たとえば、6月3日号の2面でも取り上げられている「培養肉」の試みはその一例です。

 

B面「テスト形式」の解答ポイント

【問題1】の問1について

日本は太平洋戦争でアメリカやイギリスなどの連合国軍と戦いました。1945年8月14日に日本がポツダム宣言を受け入れて戦争が終結すると(国民は15日のラジオ放送で終戦を知りました)、日本を占領統治するための機関として連合国軍最高司令官総司令部が、はじめ横浜に置かれ、まもなく東京へ移転します。この機関は日本で、もっぱらGHQという略称で呼ばれていました。
初代の連合国軍最高司令官に任命されたのは、アメリカ陸軍軍人のマッカーサーです。GHQは日本を民主化するため、軍隊の解散や財閥解体、農地改革などの政策を日本政府に指令・勧告し、実施させていきました。
なお、イのNATO(北大西洋条約機構)は、ヨーロッパ諸国や北アメリカのいわゆる西側諸国によって結成された、集団で安全を守るための組織の略称です。昨今のウクライナ情勢で注目されています。
ウのWHO(世界保健機関)は、世界の人々の健康保持と増進を目的とした国際連合の専門機関です。現在は新型コロナウィルス感染症への対応などを行っています。

 

【問題1】の問2について

アメリカに占領された沖縄は、本土に復帰するまでアメリカの統治下に置かれていました。このため、当時沖縄の住民が東京など本土に渡航する際には、日本国民が外国へ渡航する際のようにパスポートやビザが必要とされました。この特別なパスポートを発行した「琉球列島米国民政府」とは、沖縄の占領直後に置かれていた「琉球列島米国軍政府」にかわって、1950年にアメリカが設置した沖縄の統治機関です。この機関は沖縄の本土復帰まで存続していました。

 

【問題1】の問3について

沖縄が本土に復帰した年を直接覚えていなくとも、今年(2022年)が「沖縄の本土復帰から50年の節目」にあたるという記事の書き出しに着目すれば、引き算で答えられるでしょう。
日本の佐藤栄作首相とアメリカのニクソン大統領は1971年に沖縄返還協定を結び、返還が実現したのは1972年5月15日でした。
なお、1951年に調印されたサンフランシスコ講和条約でアメリカの施政権のもとに置かれた地域は沖縄以外にもありました。そのうち奄美(あまみ)諸島(鹿児島県)は1953年に、小笠原諸島(東京都)は1968年に、それぞれアメリカから日本へ返還されました。

 

【問題2】の問1について

隋は、200年以上分裂状態の続いていた中国を久しぶりに統一した王朝でした。まもなく倭国(日本)で推古天皇が即位すると、聖徳太子(厩戸皇子(うまやどのおうじ))らが政治改革を進め、その一環として遣隋使が派遣されました。小野妹子は607年の遣隋使に任命された役人ですが、遣隋使はそれ以前にも派遣されたと考えられています。
現在、末尾に「子」がつく男性の名前は多くありません。しかし、聖徳太子とともに政治改革を進めた人物には蘇我馬子がいますし、大化の改新を中大兄皇子とともに行った中臣鎌足も、以前は中臣鎌子(かまこ)と名乗っていました。このように、古代には男性の名前が「子」で終わることは、それほど珍しいことではありませんでした。

 

【問題2】の問2について

戸籍とは、ある人(日本国民)が生まれてから死亡するまでの、親族関係が記録された公的な文書です。戸籍は、結婚の手続きをする際などに写しを提出する必要があります。戸籍は日本人にとってなじみ深いものですが、親族関係の変遷を一つの文書にまとめた戸籍のような文書は、現在、世界の中でもアジアのいくつかの国や地域にしか存在しません。
一方、戸籍と似たものに住民票があります。こちらは、その人がある住所に住んでいることを証明するための文書で、氏名・住所のほかに生年月日や性別などが記載されています。住民票は、運転免許証を取得する際などに写しを提出する必要があります。引っ越した場合には新しい市区町村へ住民票を移すことになりますが、全国の市区町村が管理する住民基本台帳の情報は、現在「住民基本台帳ネットワークシステム(住基ネット)」により全国共通で確認可能となっています。

 

【問題2】の問3について

アの光宙は、「光」の字が訓読みでヒカ(ル)、ヒカリと読めますし、「宙」の字は音読みでチュウと読みます。
イの大空は、「大」「空」それぞれの字でスやカイと読むことはできませんが、「大空」という言葉の意味は英語のsky(スカイ)に対応しています。
一方、ウの太郎については、「郎」の字は音読みでロウと読みますが、「太」の字をジと読むことはできません。「太郎」全体で考えても、ジロウという読みや意味には対応しません。(『広辞苑』によれば、「太郎」には「長男の称」などの意味がありますが、「次郎」は「第二番目の男子」などの意味となっています。)したがって、ウは「字の音訓や意味と関係のない読み方」ということになります。

 

 

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2022年6月3日号

A面「ワークシート」の解答ポイント

【問1】

鉄道やバスのローカル線廃止でどのような問題が起きるか、いくつか挙げてみよう。

 

【解答例】

  • 高齢者や高校生以下など自動車を運転できない人々の、遠方への自立的な移動手段がなくなる。

  • 観光客が気軽に立ち寄りにくくなり、経済面や人の交流の面で活力が失われる可能性がある。

  • 鉄道が廃止されて地図から消えると、交通不便な地域だという印象を持たれやすい。

 

【解説】
鉄道や路線バスの廃止の可能性を突きつけられた地域の人々になったつもりで考えてみましょう。
列車が1日数往復といったレベルになると、利用者の大半がという状況であることが多いようです。
広島市と岡山県新見市とを結ぶJR芸備(げいび)線についてのネット上のコメントで、広島県寄りの駅から新見市内の高校に通う3年生が、廃止されると後輩が困ると気遣っていました。
自動車を運転できない人は、高校生以下に限りません。日本の少子高齢化のため、運転免許を返上した高齢者などむしろ増えていきそうです。
頻繁には利用しづらいタクシーを除くと、遠方へは家族などの車に乗せてもらうしかなく、自立的な移動手段が失われることになります。
以上は、新しい人権として主張されている国民の交通権(移動権)にかかわるので、安易に「自家用車にすればよい」とは言えないのです。
そのほか、とくに鉄道は地図で目立つので、沿線の景観とともに観光客を誘導しやすく、確実な交通手段があるという安心感も与えます。また、観光は、都会からの移住の最初のきっかけになるかもしれません。
鉄道そのものは赤字でも、観光が起点となる人の交流などの効果や、交通権(移動権)の保障について、評価してはどうでしょうか。

 

【問2】

国が出資しているJR四国や北海道と違い、JR西日本は純粋な私企業である。その社長になったつもりで、資料を参考に、地方路線の問題にどう取り組むか方針を考えて、まとめてみよう。

 

【解答例】
純粋な私企業、しかも東京証券取引所に株式を上場しているので、赤字経営を続けることは許されない。
コロナ禍で新幹線や都市部の鉄道も乗客が減少しているので、地方路線の赤字を放置することも許されない。
一方で、旅客交通という公益事業を担っているので、安易に赤字路線廃止を決めることも許されない。
このようなジレンマがあるので、赤字路線の沿線の住民・自治体と、意見交換などを重ね、上下分離方式やBRTの事例も参考にしてもらい、赤字を軽減する具体策で合意したい。

 

【解説】
発足当初のJR各社は国の国鉄清算事業団が株主でしたが、2002年の東日本を筆頭に東海・西日本・九州の4社が完全民営化されています。
いずれも株式が投資家により売買される上場企業ですので、黒字経営により投資家に利益をもたらす義務があると言えます。
実は、地方路線の赤字の金額自体は莫大ではなく、新幹線や都市部の鉄道の黒字額で経営上、十分カバーできるレベルでしたが、コロナ禍で一時的に新幹線や都市部の鉄道も赤字化したほどで、余裕が全くなくなりました。
一方で、旧国鉄の赤字線廃止も経て鉄道事業を受け継いだという公共的な役割も重大です。また、単純なバス転換では、先細りでバス便も減便したなどの事例があり、地元の理解を得るのが困難かもしれません。
地元自治体が大きく関与する上下分離方式や、地域交通として利便性が高まりそうなBRT、そのほか鉄道を活かした観光や町づくりによる増収など、何らかの前向きな策で地元の住民・自治体と合意すれば、コロナ禍が続かない限り、当面の問題は解決できるでしょう。

 

【問3】

コロナ禍による乗客減少は一時的だろうが、日本の少子高齢化とともに、鉄道の地方路線の赤字化が進むと予想されている。それでも路線を存続させるべきなのか、廃止はやむを得ないのか、自分の考えをまとめてみよう。

 

【解答例】
列車が1日数往復というレベルだと、費用をすべて鉄道会社に負わせるのは無理だろう。上下分離方式は自治体の負担が大きくなりそうだが、鉄道として存続できる合理的な対策だと考える。
また、鉄道の地方路線が不便と言われてしまう理由として、便数の少なさとともに、学校や病院といった需要の多い地点の近くに駅がないことが多い点がある。
BRTは専用道を通り定時運転をしやすいので、単純なバス転換より利点が多い。ただし、BRTも専用道への投資が必要なので、鉄道会社は負担を覚悟しなければならない。
このような方策がとれるのは、鉄道会社の経営が健全な場合や、自治体の費用負担が許容される場合だろう。それらの条件がなければ、単純なバス転換を含む鉄道廃止はやむを得ないだろう。

 

【解説】
たとえばJR北海道は鉄道事業の赤字が莫大で、不動産業などで補う大手私鉄のような経営も困難です。しかも札幌圏以外の人口減少のため、JRの中でも鉄道廃止が速く進んでいます。
このように、鉄道会社の経営が健全でないと、BRTへの投資さえ困難になりかねません。もう一つの対策として資料で紹介された上下分離方式は、鉄道のない地域の人々も納得するような重要路線でないと、自治体の費用負担は許容されないでしょう。
鉄道会社が新幹線や都市部の鉄道の黒字で赤字路線を維持することが困難になりつつある今後は、赤字でも存続すべき重要度をもつ路線を上下分離方式などで維持するといった事例が増えていくことでしょう。

 

B面「テスト形式」の解答ポイント

【問題1】の問1について

沖縄県宜野湾市に所在する普天間飛行場は、市街地に位置し、住宅や学校で囲まれ、これを利用する航空機が市街地上空を飛行するため、世界で最も危険な飛行場と言われています。
1995年にはアメリカ海兵隊員による少女暴行事件が起こると、反基地運動が高まり、県民総決起大会や基地の賛否を問う住民投票が行われました。
事件や飛行場内での航空機墜落事故を契機に日米間で協議機関が設けられ、普天間飛行場の県内移転と全面返還が合意されました。
しかし、県内(名護市辺野古の沿岸部)に移転することへの反対意見は根強く、今現在も移転のめどはたっていません。

 

【問題1】の問2について

日本が独立を回復した1951年のサンフランシスコ講和条約第3条によって、沖縄地域および住民に対する行政・立法・司法上の権限が、無期限にアメリカに与えられることになりました。
沖縄に対する優越的な権限を得たアメリカ軍は、沖縄を「太平洋の要石(キーストーン)」と呼んで重視し、沖縄本島を中心に巨大な軍事基地を建設して極東戦略の策源地としました。
記事内にもあるように、ベトナム戦争では出撃拠点として沖縄県内の基地が活用されています。

 

【問題1】の問3について

沖縄が本土に復帰した1972年当時、日本全国の米軍専用施設面積に占める沖縄県のそれの割合は約58.7%でしたが、本土では米軍基地の整理・縮小が沖縄県よりも進んだ結果、現在では全国の米軍専用施設面積の約70.3%が沖縄に集中しています(「沖縄から伝えたい。米軍基地の話。Q&A Book 令和2年版」より)。

 

【問題2】の問1について

少年法は、少年の健全な育成を図るため、非行少年に対する処分やその手続などについて定める法律です。少年法による手続・処分の特色として、

  • 少年事件については、検察官が処分を決めるのではなく、全ての事件が家庭裁判所に送られ、家庭裁判所が処分を決定すること

  • 家庭裁判所は、少年に対し、原則として、刑罰(懲役、罰金など)ではなく、保護処分(少年院送致など)を課すこと

などが挙げられます。(以上、法務省HPより)

1949年の施行以来、大きな改正はしばらく行われませんでしたが、2000年以降、後述する2022年改正の他にも、刑事罰対象年齢の16歳から14歳への引き下げ、少年に科す有期刑の上限の15年から20年への引き上げなど、厳罰化を柱とする法改正が度々行われています。

【問題2】の問2について

少年法は、その目的を「少年の健全な育成を期し、非行のある少年に対して性格の矯正及び環境の調整に関する保護処分を行うとともに、少年の刑事事件について特別の措置を講ずる」(第一条)としています。
前述したように、家庭裁判所は、少年に対しては原則として、更生(立ち直り)を目的として保護処分(少年院送致、保護観察)を課します。
少年院送致では、対象者を少年院に収容し、その特性に応じた矯正教育などを行ったり、保護観察では、対象者を施設に収容せず、社会内に置いたまま、保護観察所が指導監督、補導援護を行ったりして、少年に更生の機会を与えます。

【問題2】の問3について

選挙権年齢や民法規定の成年年齢が20歳から18歳に引き下げられ、18・19歳の者は、社会において、責任ある主体として積極的な役割を果たすことが期待される立場になりました。それに対応して、2022年4月施行の改正少年法においては、18・19歳の者が罪を犯した場合には、その立場に応じた取扱いとするため、「特定少年」として、17歳以下の少年とは異なる特例を定めることになりました。主なポイントは下の2つになります。

① 少年法の適用

  • 18・19歳も「特定少年」として引き続き少年法が適用される

  • ただし、原則逆送対象事件の拡大や、逆送決定後は20歳以上の者と、原則同様に取り扱われる(例えば、有期懲役刑の期間の上限が17歳以下の少年と比べて引き上がる)ようになる

② 実名報道の解禁

  • 少年のとき犯した事件については、犯人の実名・写真等の報道が禁止されているが、18歳以上の少年(特定少年)のとき犯した事件について起訴された場合には、その禁止が解除される

(以上、法務省HPより)

 

 

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2022年5月6日号

A面「ワークシート」の解答ポイント

【問1】

性別にもとづくアンコンシャス・バイアスにはどのようなものがあり、それはどのような問題を引き起こすと考えられるか。資料やイラストを参考に、具体的な例をいくつかあげてみよう。

 

【解答例】

  • 子育て中の女性社員に対して、本人の意思や状況を確認することもなく、責任の重い仕事を与えない方がいいと一方的に決めつけてしまうと、女性社員のやる気を奪うだけでなく、男女格差の拡大をも招いてしまう。

  • 親や教師が「女子は理系が苦手」と思い込んでいると、いつのまにか子どもや生徒も同じ思い込みを抱くようになってしまう。
    また、それによって子どもたちが理系科目に対しておのずと苦手意識をもってしまい、進路にも影響を及ぼしてしまう。
    さらに、「女子は理系が苦手」という偏見は、理系が苦手な男子に対するプレッシャーとなってしまう。

  • 保育士になりたいと思っていた男性が、「保育士は女性の仕事」という思い込みによって自らの夢をあきらめてしまう。

 

【解説】

アンコンシャス・バイアスの問題について具体的に理解できているかを確認する問いです。
【解答例】では、各資料・イラストからそれぞれ一つずつ具体例を指摘しています。
【資料1】では第2段落、【資料2】では教授の回答の内容がヒント。イラストでは、保育士を目指すことをあきらめかけている男性のほか、「女の子は料理をするもの」という価値観を一方的に押しつけられてストレスを感じている女性をとりあげてもいいでしょう。

 

【問2】

日本では、アンコンシャス・バイアスの一つとして「男は外で仕事、女は家で家事・育児」というように性別によって役割を分ける意識が根強く残っている。これについてあなたはどのように思うか、まとめてみよう。

 

【解答例】

現在共働きの家庭が増えており、家事や育児の負担を夫婦で分かち合うことが大切になってきている。
そうしたなかで、「男は外で仕事、女は家で家事・育児」という考えは、妻に仕事・家事・育児という多大な負担を強いることになる。
また、「男は仕事」という思い込みが職場で強いと、夫の側も長時間労働になりやすくなる。
結果として夫婦ともに心身に大きな負担がかかり、少子化の一つの要因にもなってしまう。
昨今、子育て支援や働き方改革などの制度面での対策が進んでいるが、それに加えて社会全体での意識改革も必要だと思う。

 

【解説】

「男は仕事をし、女は家庭を守るべき」という性別役割分業の考え方に賛成する人は一昔前に比べれば減ってきていますが、まだまだ日本に根強く残る価値観です(映画やドラマなどでもそのような考え方をする人物がしばしば登場します)。
しかし、夫婦共働き世帯数は1990年代に専業主婦世帯数を上回り、現代では核家族化も進行しています。
こうした状況で、共働きの夫婦がその親や祖父母の世代、職場の上司などから性別役割分業の考え方を押しつけられると様々な問題が生じます。
男性は長時間労働を強いられる一方、女性の社会進出は妨げられ、育児は孤立化し、少子化に歯止めがかかりません。
もちろん、政府も働き方改革や子育て世帯への経済支援などの対策を行っています。しかし、そのような政策に加えて、社会全体で性別役割分業の意識を見直していく必要もあるでしょう。
制度面の改革と意識面の改革、これらは別々に分かれているのではなく、制度が変われば意識にも変化が生じ、意識が変われば制度改正に向けた動きも生じやすくなるというように、相互に影響を与え合います。
この二つを両輪として動かしながら、家族が安心して暮らせる社会への道を切りひらいていく必要があります。

 

【問3】

【資料1】の下線部「アンコンシャス・バイアスはいつでも、どこでも、誰にでもあり、完全になくすことは難しい」を踏まえて、今後あなたはアンコンシャス・バイアスとどのように向き合っていきたいか、自分の考えをまとめてみよう。

 

【解答例1】

アンコンシャス・バイアスの影響をおさえる第一歩は、資料に書かれているように自分が思い込みを抱いているかもしれないことに「気づく」ことだろう。
そのためには、相手とのコミュニケーションをしっかり行うことが重要だと思う。
相手に抱いているイメージは、実際に面と向かって話してみるとずれていることも多い。
ただし、思い込みから完全に自由になることは難しいため、自分のものの見方が正しいと思わずに、コミュニケーションを通じて柔軟に見方を変えられる姿勢を大事にしていきたい。

【解答例2】

アンコンシャス・バイアスは人間関係をあやうくしかねない。
しかし、アンコンシャス・バイアスは誰にでもあり、完全になくすのは難しい。だから、仮に相手が私に対して何らかの偏見を持ってしまっていたとしても、私はそのこと自体をきつくとがめるのではなく、それは偏見だと丁寧に説明したうえで、お互いがわかり合える道を探すといった前向きな姿勢を大切にしたい。
自分がバイアスに「気づく」だけでなく、このように相手に「気づかせる」ことも必要だと思う。

【解答例3】

世の中には様々な情報があふれている。そうした情報のなかには、物事の一面だけを捉えていたり、それを過度に強調したりしているものもある。
さらに、SNSでは自分の好みの情報ばかりが集まりやすく、その結果偏見が形成されやすくなる。
私は、自分がこのような情報環境のなかにあることを自覚し、常に複数の情報源を比較することで、自分が偏ったものの見方をしていないか自己チェックを行っていきたい。

 

【解説】

問1と問2を通じて、アンコンシャス・バイアスがどのような問題を引き起こすのかについて考えてきました。
問題があるならそれを解決する必要がありますが、【資料1】の下線部でアンコンシャス・バイアスは「完全になくすことは難しい」と指摘されています。
たしかに、私たちは一人ひとり育ってきた環境や普段得ている情報、置かれている立場などが異なりますから、思い込みや偏見から完全に自由に物事を眺めることは困難です。
そのため、【資料1】の最後で書かれているように、今の自分のものの見方や感じ方が絶対的なものではないことに「気づく」ことが重要なのです。

ではどうすればそのような「気づき」が得られるのか、これが問3のポイントです。
【解答例1】は対面コミュニケーションの重要性を指摘しており、【解答例2】は自分だけではなく相手に「気づかせる」ことも必要だと述べ、【解答例3】は身の回りにあふれる情報との向き合い方という視点から意見をまとめています。

他にも、たとえば小説を読んで、人間の複雑な心情や割り切れない気持ちなどを追体験することで、他者への想像力を豊かにし、人を簡単に決めつけない姿勢を身につける、という意見も考えられます。
また、性別に関する思い込みに気づくためには、日本と他国を比較することも効果的です。
日本はまだまだ男性の家事・育児参加がとぼしく、国会議員が育児休暇を取ろうとするだけで世間がざわつくような状況です。
しかし、海外に目を向けると男性が積極的に家事・育児をしている国も多いですし、在任中に産休や育休を取得した首相も見受けられます。
このように外国の状況を調べてみると、日本の「あたりまえ」がグローバルな視点では時代遅れとして映ることもあるでしょう。

グローバル化した現代社会において、男性や女性、子ども、高齢者、障害者、外国人など様々な立場の人々が共に生きるためには、多様性(ダイバーシティー)を認めることが大切です。
そのためにも、アンコンシャス・バイアスに注意して、互いの立場を尊重しながらコミュニケーションをとることが重要と言えるでしょう。

 

B面「テスト形式」の解答ポイント

【問題1】の問1について

スイスはヨーロッパの多くの国を巻きこんだナポレオン戦争後のウィーン会議で、「永世中立国」として国際的に認められました。
以後、世界では様々な戦争が起こりましたが、スイスは200年以上に渡って中立の立場を守りつづけています。

 

【問題1】の問2・問3について

大阪府の人口は約880万人で、スイスの人口とほぼ同じです。
また、九州の面積は4.2万㎢で、スイスの面積とほぼ同じです。
スイスの地理は、南部にはアルプス山脈がそびえ、その北にはスイス高原が広がっています。多くの人々が住んでいるのがこの高原地方です。

 

【問題1】の問4について

EUの正式名称はヨーロッパ連合です。
EUは1993年に、それまでのヨーロッパ共同体(EC)を前身として、成立しました。
EU内のドイツやフランスなどでは、共通通貨のユーロを用いるなど、経済統合を強めています。
現在ではヨーロッパの27カ国が加盟していますが、スイスや2020年に脱退したイギリスなどEUに加盟していない国も少なくありません。
また、スイスはアメリカ中心の集団安全保障機構であるNATOにも非加盟で、当初は国連にも加盟していませんでしたが、冷戦終結後の2002年には国連への加盟を実現させました。

 

【問題2】の問1について

ゼレンスキー大統領は各国の国会で、その国の歴史や社会の関心に則った事項を取り上げて、ウクライナへの支援を引き出そうとしました。
日本の場合は2011年の東日本大震災に伴って生じた福島第一原子力発電所の事故を取り上げて、日本とウクライナで放射能汚染への恐怖を共有していることを強調して日本の関心を得ようと考えたようです。

【問題2】の問2について

② 真珠湾攻撃は1941年12月8日(現地時間では12月7日)に、日本軍がハワイの真珠湾にあるアメリカの海軍基地を奇襲した事件です。
この真珠湾攻撃と同日のマレー半島上陸作戦によって太平洋戦争が開戦し、第二次世界大戦の戦火が拡大しました。
1914年は第一次世界大戦が勃発した年です。

③ 2001年の9月11日に、アメリカで同時多発テロが起きました。
ニューヨークの世界貿易センタービルや、首都ワシントン郊外の国防総省ビルなどの4か所が、ハイジャックされた飛行機を使った自爆テロに襲われたのです。
アメリカは実行者をテロ組織アル=カーイダと認定し、アフガニスタンのターリバーン政権がアル=カーイダを保護しているとして、アフガニスタンに大軍を派遣します。
1991年は冷戦が終結した年です。

②も③もアメリカが奇襲によって大きな被害を受けた事件でした。
ゼレンスキー大統領は、アメリカでの演説ではこれらを取り上げて、ロシアの奇襲を受けたウクライナと重ね合わせてもらおうと考えたようです。

【問題2】の問3について

ヒトラーが率いたナチスはドイツの政権を握ると、ユダヤ人への大規模な迫害を開始しました。
当初はユダヤ人を国外追放にしたり財産を没収したり、強制収容所に収容して労働させたりしていましたが、第二次世界大戦の戦況が悪化するとユダヤ人を虐殺する政策に変わっていきます。
この虐殺政策をホロコーストと呼びます。ホロコーストはドイツ占領下のキエフ(キーウ)でも行われて多くのユダヤ人が殺されたため、市内に慰霊碑が建っています。

イスラエルはユダヤ人の立てた国です。そのため、ゼレンスキー大統領はロシアの侵略でウクライナ国民が虐殺されていることを、ホロコーストと重ね合わせてもらおうと考えたようです。

 

 

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2022年4月1日号

A面「ワークシート」の解答ポイント

【問1】

資料1や図を参考に、なぜ今回のウクライナ危機で原油や小麦の価格が大きく上昇したのかまとめてみよう。

 

【解答例】
まず原油価格の上昇は、アメリカやイギリスなどによる経済制裁の影響が大きい。
ロシアの主要輸出品である原油の買い取りを制限することでロシア経済に打撃を与える狙いであるが、ただしそのことで同時に、世界経済全体が深刻な影響を受ける事態ともなっている。
小麦価格の上昇は、戦争当事国であるロシアとウクライナの両国ともに、小麦の世界有数の産出国であることによる。
原油でも小麦でも、世界全体での流通量が減ってしまうのではないかという不安から、今後の供給量に対しての需要が急激に高まり、それが価格の上昇となってあらわれていると考えられる。

 

【解説】
グローバル化が進む昨今、私たちの生活は、エネルギーや食料品を世界中の国々と融通し合わなければ成り立たないようになっています。
良質な土壌を有するウクライナは「ヨーロッパのパンかご」と呼ばれるほどの穀倉地帯であり、広大な国土を持つロシアはエネルギー資源が豊富です。
戦争などによりそれまで当たり前であった生産活動が滞ると、ヨーロッパをはじめ世界中の国々に深刻な影響を及ぼしてしまうことになります。
どの国が、どんな理由で、どんな産業に強みを持っているのか、時間のあるときに調べてみるのもよいでしょう。

 

【問2】

日本は多くのエネルギー資源を海外からの輸入に頼っており、また食料自給率が低いことでも知られている。
他国に主要なエネルギーや食料品などを依存しているとどのようなときに困るのか、考えてみよう。

 

【解答例】
他国で深刻な天候不順や外交問題などが発生すると、国内的な対処ではどうすることもできないまま、輸入品の数量や価格が大きく左右されてしまう。
また、国内で新しい産業を振興したいと思っても、価格競争の面ではじめから輸入品に負けるなどしていると、思うように振興できないといったことも考えられる。
さらに、ある国に対して何らかの制裁を発動する必要に迫られても、過度な貿易依存があると、そのことでためらってしまう要因となる。

 

【解説】
近年の日本は、原油の輸入の9割ほどを中東諸国に頼っており、石炭の輸入の6割ほどをオーストラリアに頼っています。
エネルギー資源の過度な海外依存という問題を改善していくためには、もともと日本の領土である尖閣諸島や竹島近辺にも眠るとされる、石油や天然ガスなどの資源を有効活用することも重要なカギになると指摘されています。
こういった観点からも、資源が眠ると分かったとたんに領有権を主張しだした中国や、不法占拠を続ける韓国などとの間に抱える領土問題を、早期に解決することが望まれているのです。
また日本は、羊毛・綿花・衣類や、とうもろこし・えび・小麦・砂糖類・果実など、米以外の多くの食料品や農作物などを、海外からの輸入に頼っています。
近年では日本の食料自給率を上げるため、農林水産省が二毛作による小麦の作付け拡大への助成を実施するなど、様々な取り組みを行っています。

 

【問3】

日本は、先進国の中でも難民の受け入れに厳しいことで知られ、しばしば改善を促されている。
資料2も踏まえ、難民の受け入れについてのあなたの考えをまとめてみよう。

 

【解答例1】
一人でも多くの人の命を守るため、このような緊急事態での難民受け入れには全面的に賛成したい。
安全な場所や食事などを提供し、少しでも人道的な支援をしてほしいと思う。
また難民の受け入れは、貴重な異文化交流や他言語学習の機会にもなるはずなので、普段からもっと積極的に行ってもよいのではないかと思う。
今回のことで国家の有事は突然訪れるものなのだという危機感を持った。
国家間のトラブルに際し、様々な国と助け合える関係を平時から構築しておくことは、自国にとっても有益になると考える。

【解答例2】
難民の短期的な受け入れには賛成だ。
ただし、受け入れた難民がそのまま永住などしてしまうかもしれないケースを考えると、条件については慎重に議論するべきだと考える。
少子高齢化問題を抱える日本は、確かに近年、労働力としての若者を近隣諸国から積極的に受け入れるようになっており、徐々に国際社会に対して門戸を開いていっているように見える。
しかし外国人の過度な定住が進んでしまうと、日本という国のアイデンティティが損なわれたり、言葉や文化の違いから暮らしが不便になってしまったりしかねない。
理想も踏まえつつ、現実的な観点からも議論を深めていくべきだと思う。

 

【解説】
多くの難民が出てしまった出来事として記憶に新しいのが、2015年、内戦が続くシリアから大量の難民がヨーロッパへと殺到していったケースでしょう。
今回のウクライナ危機は、これに匹敵する規模となるおそれもあると指摘されています。
難民を受け入れ、その居場所を作るというのは非常に難しい課題ですが、まずはそもそも難民が発生しないような世界になってくれることを願いたいものです。

 

B面「テスト形式」の解答ポイント

【問題1】の問1について

ダーウィンは生物進化論の確立者です。聖書の内容の否定につながる「人間を含めた生物は現在とは別種の共通の祖先をもち、長い時間をかけてそれぞれの種に進化してきた」という説は、19世紀当時、宗教界から猛烈な批判を浴びました。

 

【問題1】の問2について

アイヌとは、アイヌ語で「人間」を意味する言葉です。
アイヌの人々は明治政府による北海道開拓などにより、住む場所を追われることとなりました。
もともと狩猟・漁労をして暮らしていたのですが、明治政府は彼らの農民化を推し進め、アイヌの言葉や文化までをも否定する同化政策をおこないました。
現在では、アイヌ民族は正式に日本の先住民族とみなされ、その伝統文化も保護の対象となっています。

 

【問題1】の問3について

石川啄木は若くして亡くなるまでの間、生活感情あふれる新鮮な短歌を数多く詠みました。
引用されている「ふるさとの…」の歌は、「停車場にいる人たちが使っている話し言葉から、私の故郷の訛りが聞こえてきて懐かしい。人ごみの中に、その訛りをもっとよく聴きにゆくのだ」といった意味になります。
「はたらけどはたらけど猶(なお)わが生活(くらし)楽にならざりぢつと手を見る」も、啄木の歌としてよく知られています。
こういった生活の苦しみは、奈良時代の歌人、山上憶良の「貧窮問答歌」からすでに詠まれていました。
また啄木とも交流のあった与謝野晶子は、女性的な恋心を表現した大胆な歌風や、日露戦争時の「君死にたまふことなかれ」の反戦詩などで有名です。

 

【問題2】の問1について

①は写真からも分かるとおり「雪」。雪の結晶を模した聖火台は2月の北京冬季オリンピックだけでなく、3月開催の北京冬季パラリンピックでも使用されました。
中国では外国の国名も漢字で表記し、プラカードにもあるように「日本」はそのままの漢字で表記しますが、例えばギリシャの漢字表記は「希腊」、2026年に次の冬季オリンピック・パラリンピックを開催するイタリアは「意大利」となります。

【問題2】の問2について

②は「ギリシャ」。
ギリシャが近代オリンピック(五輪)発祥の地とされているのは、古代ギリシャで行われていた4年に1度の競技大会をもとに、1896年、フランスのクーベルタン男爵の提唱によりギリシャのアテネで第1回近代オリンピックが開催されたからです。
冬季オリンピックは1924年にフランスのシャモニーで第1回が開催され、2022年の北京大会は24回目でした。日本では1972年に札幌で、1998年に長野で開催されています。

③は「トンガ」。
トンガは南太平洋の島国で、付近の海底にプレートの沈み込む境界があり海溝や海底火山が分布しています。
2022年1月15日、以前から活動を続けていたフンガ・トンガの海底火山が大規模に噴火し、火山灰の降灰と津波によりトンガの島々は大きな被害を受けました。
この結果、直近の東京オリンピックやピョンチャン冬季オリンピックなどにも出場したトンガ唯一の選手は、北京オリンピックを欠場せざるを得ませんでした。
また、噴火を受けて発生した津波は約8,000km離れた日本列島にも到達し、沿岸部では避難指示が出されました。

【問題2】の問3について

正解はAの「91」の国と地域。
オリンピックを主催するIOC(国際オリンピック委員会)には206の国と地域が参加しています。
1年の延期を経て実施された2020東京オリンピックに参加した国・地域の数は、朝鮮民主主義人民共和国を除く205でした(加えて難民選手団も参加)。
2022北京冬季オリンピックに参加した国・地域の数は、その半分以下の91となっています。
冬季大会ではもともとこのくらいの数であり、スキー、スケート、スノーボードなど冬季オリンピックの競技は熱帯や乾燥帯では費用がかかり普及が難しいためで、開発途上国の多いアフリカからの参加は5か国のみでした。

 

 

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2022年3月4日号

A面「ワークシート」の解答ポイント

【問1】

現在、上野動物園には「シャオシャオ」「レイレイ」を含めて5頭のパンダがいる。
日本の動物園がパンダの個体数を確保する2つの方法について、資料を参考にまとめてみよう。

 

【解答例】
一つは、すでに日本国内の動物園にいるオスとメスを引き合わせ、繁殖させて個体数を増やす方法。
もう一つは、共同研究の一環として、お金を払って中国から借りる方法。

 

【解説】
いずれの方法も、【資料1】から容易に読み取ることができるでしょう。珍しい動物の入手をめぐり、かつては「購入」が認められていたこと、それが1973年の「ワシントン条約」で規制されるようになったことは、背景として再確認しておきましょう。
なお「ワシントン条約」は、高校の公民科目での必修事項で、大学入学共通テスト(従来のセンター試験)でも頻出です。

 

【問2】

資料にある「動物園が果たす四つの役割」も参考にしながら、あなたがこれまで体験して良かったと思う動物園の取り組み、もしくは、今後実現してほしいと思う動物園の取り組みについて、具体的に書き出してみよう。

 

【解答例】
遠出することの難しい高齢者などに焦点を絞った取り組みがあれば、動物園はさらなる社会的役割を果たせるようになると思う。
例えば、小型の動物などを連れて各地域を飼育員が巡回する「移動動物園」のようなイベントが日常的に開催されれば、「四つの役割」における「教育・環境教育」や「市民のレクリエーションの場」などに合致することになると思う。

 

【解説】
日本動物園水族館協会(JAZA)は記事にある「動物園が果たす四つの役割」以外にも、次のような活動を行っているとホームページ上で述べています(以下、該当日本動物園水族館協会(JAZA) 「そのほかの活動」ページから見出しだけ引用)。
・「動物が気持ちよく暮らせる努力をしています」
・「動物を守るため国際的な組織と協力しています」
・「教育係などのスタッフの技術向上に努めています」
・「不正輸入された動物を預かっています」
特に最後の項目については、その説明欄に、「ワシントン条約」による規制があるにも関わらず、「正規の手続きを行わずに、いまだに多くの動物たちが日本に持ち込まれているのも事実です」と、不正輸入をめぐる問題が指摘されています。現代の動物園が担っている役割には、実に多様なものがあると分かります。

 

【問3】

資料にあるように、人類はさまざまな野生動物の保護に努め、「動物福祉」にも取り組んでいるが、他方で動物の肉を食べることもある。
人類と動物との関わりについて、あなたが考えることを自由に書いてみよう。

 

【解答例】
よく考えてみると、人類は「かわいい動物」や「観賞しがいのある動物」を、良くも悪くも他の動物たちより優遇し、そのことで動物種の間に差別を生じさせているかもしれない。
動物たちは本来、それぞれの種が「人類にとってどのような存在か」ということとは無関係に生きてきたはずなのに、現代においては種の絶滅や存続の大部分が、「人類にとってどのような存在か」に依存して決定されがちなように見える。
食用になる動物もいるので、全ての動物種を平等に扱うことは本来的に難しいことは承知しているが、人類がそれぞれの動物種と向き合う際の態度をめぐる問題は、絶えず考え直されていくべきだろう。

 

【解説】
近年、高校「倫理」の資料集などで言及されることの多くなった人物に、ピーター・シンガーという倫理学者がいます。シンガーは食用目的で人が動物を家畜化するなどといった、動物に対する人類の「種差別」を批判し、自らはベジタリアンへと転向しました。「動物の解放」を訴える彼の主張は、多くの学問領域やライフスタイルへと決して小さくはない影響を今でも及ぼし続けています。
シンガーのような考え方は極端だとしても、それぞれの動物種に対する人類の適切な態度とはどのようなものであるべきか、各人が考え続けていく必要があるでしょう。

 

B面「テスト形式」の解答ポイント

【問題1】の問1について

【解説】
はじめにお断りしておきます。ウクライナ問題は非常に根が深く、簡単には話せません。
どうか、地図帳をご覧になりながら、長い話にお付き合いください。

ソ連は、ユーラシア北半の広大な旧ロシア帝国領のほとんど(ポーランドやフィンランドを除く)に建国された「ウクライナ・ソビエト社会主義共和国」など15の共和国を束ねた連邦国家でした。
ロシア、ウクライナ、ベラルーシ(ソ連時代は「はくロシア」)など4共和国からなる連邦国家としてのスタートは1922年。その百周年にロシアのウクライナ侵攻……、偶然なのでしょうか?

第二次世界大戦で社会主義国ソ連は、資本主義国アメリカ、イギリス等とともに連合国として枢軸国(大日本帝国と同盟したドイツ、イタリア等)と戦い勝利しましたが、戦後は主としてアメリカ・西欧諸国の軍事同盟NATO(北大西洋条約機構)とソ連・東欧諸国の軍事同盟WP(またはWTO、ワルシャワ条約機構)とが敵対した冷戦で疲弊しました。
1989年12月に米ソ首脳が「マルタ会談」で東西冷戦の終結を宣言した頃から、(1)東欧諸国の革命(社会主義政権を打倒しWPは解散)、(2)ソ連構成国が主権宣言や独立宣言を断行、(3)ソ連構成国の内部で少数民族などが独立を志向――という、桶のたがが3組同時に外れそうな状況になりました。

1990年にソ連構成国の独立宣言が始まり、1991年9月にバルト三国(エストニア、ラトビア、リトアニア)の独立をソ連が承認して国連に加盟。
同年12月には残る12か国の独立が実現してソ連は消滅。ロシアがソ連の継承国となって国連安全保障理事会の常任理事国に就き、ソ連とともに国連の原加盟国に名を連ねていたウクライナ、ベラルーシを除く旧ソ連の残る9か国も1992年に国連に加盟しました。
その際に、ウクライナ等にも配備されていた核兵器は条約によりすべてロシアに移され、その他14か国は日本と同じNPT(核拡散防止条約)の「非核兵器国」になりました。

 

【問題1】の問2について

【解説】
ロシア帝国は、真冬も使える不凍港の確保に苦労していましたが、ロシア・トルコ戦争の勝利を経て、オスマン帝国の保護国があった黒海北岸のクリミア半島を1783年にロシア領とし、黒海艦隊の基地を置くなどして、先住のクリミア・タタール人の流出とロシア人流入が進んでいきました。
軍事的に重要なため、ソ連時代もロシア共和国に属していましたが、1954年、17世紀にロシアとウクライナ人が協力関係を結んだ協定の「300周年記念」というおめでたい(皮肉です)理由で、住民の多数がロシア人であるクリミア半島をウクライナ共和国に移管してしまい、そのまま1991年のソ連解体・15か国独立に至ります。

翌年以降、クリミアではウクライナからの独立も視野に入れた住民投票が行われるなど、住民の多数がロシア系であるウクライナ南部(クリミア)・東部地域のロシア帰属志向が高まりました。
これを収めるためウクライナは、クリミアの自治権を認め、ロシアの黒海艦隊基地使用を認める協定を結びました。ウクライナは、ソ連時代からのロシアとの深い軍事・経済関係を無視できませんでした。

その一方で、東欧諸国・バルト三国がEU(欧州連合)に加盟して経済的に西欧諸国と一体化するだけでなく、軍事同盟NATOにも加盟した2000年代になると、ウクライナではロシアとの関係を薄めて欧米諸国との関係を深める志向が強まります。
親欧米の政権が成立した2004年の革命は同政権の内紛などで2010年の大統領選挙で親ロシア政権に戻りますが、この政権が2014年2月の政変で打倒され、暴力がエスカレートしてロシア系住民への攻撃も多発しました。

ロシアのプーチン政権は、まずクリミア半島に介入して同年3月の住民投票で「独立」を選択させ(ウクライナ憲法では国民投票が必要)、ロシアとの条約という手続を経て「ロシア編入」を実現しました。
ウクライナ東部ではロシア系住民が武装闘争に入り、ウクライナの新政権との紛争が勃発します。
フランス、ドイツ両首脳が仲介して、ウクライナと東部のロシア系勢力を代弁するロシアとが停戦をはたらきかける協定(ミンスク2)が2015年2月に成立し、ウクライナ東部のロシア系住民に特別の自治権を与える憲法改正などが合意されましたが、小規模な戦闘が続くなど、事態はこじれたままでした。そして同協定は、2022年のロシアのウクライナ侵攻で無効化しました。

 

【問題1】の問3について

【解説】
結局のところ、ロシアのプーチン政権は、自国領に隣接する国が軒並みNATOに加盟してロシアを「仮想敵国」としており、そこにウクライナが加わることに特段の脅威を感じているのです。
すでにNATOに加盟しているバルト三国のうちエストニア、ラトビアはロシア本土に隣接している(地図の北側ではノルウェーも)ほか、第二次世界大戦の勝利でドイツから獲得した飛び地カリーニングラード州(地図のポーランドとリトアニアに隣接)も今やNATO加盟国に挟まれています。
それらNATO加盟国にアメリカがもし核ミサイル基地を建設すれば、それは1962年にソ連がキューバに核ミサイル基地を建設した時(キューバ危機)の構図とそっくりです。核戦争の危機の再来です。

2月24日からのロシアのウクライナ侵攻による死者は少なくありませんが、何とか28日に両国代表団の交渉が始まりました。
ロシアの最大の要求はウクライナの中立化(NATO加盟を不可能にする保証)でしょう。
ウクライナの要求は即時停戦と、ウクライナ全土からのロシア軍撤退です。

ただし、たとえ両国の交渉がまとまっても、ロシアの軍事行動が合法的な「自衛権行使」ではなかったという非難を免れないでしょう。
そうしたロシア非難の決議は、国連安保理あんぽり(安全保障理事会)では常任理事国ロシアの拒否権行使で成立しませんでした(2月25日)。

似た事例は、ソ連が支援した北朝鮮の韓国侵攻で始まった1950年の朝鮮戦争にアメリカ等が「国連軍」として介入する問題で発生しました。
そうした決定をできるのは安保理だけなのですが、ソ連の拒否権行使で成立しませんでした(アメリカなどの有志国が正式でない「国連軍」として参戦)。
その反省から同年に、安保理で拒否権が行使される場合に、国連の全加盟国による緊急特別総会で勧告を出す等ができる「平和のための結集」決議が成立しました。

日本時間の3月1日、21世紀最初の緊急特別総会が始まり、ウクライナとロシアの国連大使が相手国を非難する演説をしました。
歴史的な緊急特別総会の行方を見ておきましょう。そして、緊急特別総会が軍事侵攻の犠牲者への黙祷もくとうで始まったことも。(3月1日現在)

 

【問題2】の問1について

インドネシア共和国(インドネシア)は、東南アジア南部に位置する共和制国家です。面積は約192万平方キロメートルで日本の約5倍、人口は約2.7億人(2020年)です。
現在の首都はジャワ島に位置するジャカルタですが、2024年から順次、カリマンタン島の東部「ヌサンタラ」に首都機能の移転を本格化させる見通しとなりました。

【問題2】の問2について

( ② )の後ろの「大小1万4000以上の島々からなるインドネシアそのものを表す言葉」から、Bの「群島」が入ると推測できたのではないでしょうか。
ちなみに、記事内の「現地語」はインドネシア語を指します。

【問題2】の問3について

経済連携協定(EPA)とは、貿易の自由化に加え、投資、人の移動、知的財産の保護や競争政策におけるルール作り、様々な分野での協力の要素等を含む、幅広い経済関係の強化を目的とする協定です。自由貿易協定(FTA)と合わせ、日本は2022年2月時点で21の国と地域との間で発効、あるいは署名をしています。
日本とインドネシアのEPAは2008年に締結されましたが、日本が初めてEPAを締結したのは、2002年のシンガポールになります。

 

 

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2022年2月4日号

A面「ワークシート」の解答ポイント

【問1】

資料を参考に、それまで「20歳以上」であった「成人年齢」「選挙権年齢」「裁判員に選ばれる年齢」が、それぞれ「18歳以上」になる(なった)時期についてまとめよう。

 

【解答例】
「選挙権年齢」のみ、2015年(6月以降実施の選挙)から「18歳以上」になった。「成人年齢」と「裁判員に選ばれる年齢」は、いずれも2022年4月1日から同じタイミングで「18歳以上」へと引き下げられる。

 

【解説】
これらに先立つものとして、2010年施行の「国民投票法」があります。日本国憲法を改正するために必要な国民投票の手続きについて規定したもので、その投票権年齢が、「18歳以上」とされていました。
つまり施行順に、2010年に「国民投票の投票権年齢」が、2015年に「選挙権年齢」が、2022年に「成人年齢」と「裁判員に選ばれる年齢」、および資料にもある「少年法の保護を原則として受けなくなる年齢」が、それぞれ「18歳以上」へと設定されたり、引き下げられたりしてきたことになります。
(2022年4月施行の改正少年法では、罪を犯した18歳・19歳の者は「特定少年」の扱い。)
なお諸外国では18歳成人が主流であり、19歳成人の国には韓国、20歳成人の国にはニュージーランドなどがあります。

 

【問2】

18歳、19歳という若い裁判員の登場には、どのような司法的・社会的意義があるだろうか。また、そこに否定的な側面はないのだろうか。あなたの考えをまとめてみよう。

 

【解答例】
高校生や、高校を出たての若者などは、人生経験や法的知識に乏しい分、かえって「何が正義であるのか」を純粋に判断する心を保持していると思う。今回の対象者年齢の引き下げでは、そのような純粋さを発揮することが求められているのではないだろうか。
一方で、もしかすると若者は、例えば「この加害者は許せない」といった激しい感情に呑み込まれてしまいがちかもしれない。極端な判断を下してしまわないよう、気をつけておかねばならない。

 

【解説】
「読売中高生新聞」2022年1月14日号の特集記事には、裁判員制度をめぐって高校生が出した質問に対する、現職裁判官による回答も載っています。
回答した裁判官は、裁判員裁判に参加するにあたり「専門的な法律知識は不要」であるということや、また公正な判断をするためには「最初に抱いた印象に引っ張られないよう、『逆の結論を導く事実はないか』と反対側の視点から考えてみることが大切」だといったことを述べています。
さらに、「裁判員の対象年齢が引き下げられることの意義」をめぐって、「絶対に『10代ならでは』って感覚があると思う。色々な世代が意見を交わすことで議論は深まるから、『これは正義にかないますか?』みたいな素朴な疑問でもドンドンぶつけてほしい」とコメントしています。

 

【問3】

将来、あなたが裁判員に選出されたら、どのようなことを心がけながら審理に臨むべきだろうか。注意点や心構えなどを考えてみよう。

 

【解答例】
まずは、自分の感情を制御すること。審理の場で過度な同情や反発の念を抱いてしまわないよう、冷静さを常に保っておかねばならない。また、自分が最終的な判断を下す直前まで、積極的に質問などをしてそのための材料を集めておくことも大切だ。
人の人生を左右する判断を下すのだという自覚を持って、十分に考え抜いた上で自分なりの結論を出さねばならない。加えて、司法では過去の判例も大きな意味を持つようになるので、自分の判断が、将来の判例としての役割を果たすのだということも、強く意識しておく必要がある。
えん罪は絶対に防がねばならない。

 

【解説】
日本弁護士連合会のホームページは、裁判員制度に関して、以下のような「心にとめておきたい4つのこと」を挙げています。
「法廷に現れた証拠だけをもとに判断」。
「常識にしたがって『間違いない』と確信できないときは無罪とする勇気を」。
「自白の判断は慎重に」。
「刑罰は報復だけではなく社会でのやり直しのチャンスも考慮して」。
以上は刑事裁判の原則であり、無実の人を有罪とする「えん罪」を防ぐための知恵でもあります。
刑事裁判には「無罪の推定」という原則があります。すべての被告人はまず無罪と推定されることになっており、検察官が被告人の犯罪を証明しなければ、有罪とすることができません。
「疑わしきは被告人の利益に」という考えが重要で、「被告人は疑わしい」という程度の証拠しかない場合には、決して有罪にすることはできないのです。

 

B面「テスト形式」の解答ポイント

【問題1】の問1~問3について

「着衣着火」は身近にひそむ危険の一つです。東京消防庁の管内では2020年に死者4人、負傷者46人が報告されています。ただし負傷者の数ははっきりせず、実際にはこれよりも多いことが推定されます。
火を扱うときには、慣れていても充分に注意してください。「Stop, drop and roll」は、着火した際に大量の水をかけることや、衣服を脱ぐということが難しいときに役立つ消火の手法です。走ると風で火が大きくなることなども、知識として頭に入れておきましょう。

 

【問題2】の問1について

核拡散防止条約(NPT)は、1970年に発効され、現在の締約国数は191か国・地域です(地図中のインド、パキスタン、イスラエルは非締約国、北朝鮮は1993年と2003年に同条約脱退を宣言)。
その目的と内容は、①核不拡散:米、露、中、英、仏の5か国を「核兵器国」と定め、「核兵器国」以外への核兵器の拡散を防止(「核兵器国」から「非核兵器国」に核兵器の完成品や材料・情報を渡さない、「非核兵器国」が自ら核兵器を製造しない等を意味)、②核軍縮:締約国が誠実に核軍縮交渉を行う義務を規定、③原子力の平和的利用:原子力の平和的利用は締約国の「奪い得ない権利」と規定、となっています。

【問題2】の問2について

レーガンは、アメリカ合衆国第40代大統領として、1981年から2期8年務めました。内政面では、大幅減税や財政支出削減など経済活動に関する規制の撤廃と緩和による自由競争の促進等を軸とするレーガノミクスを推進しました。また、外交面では、ソ連との間で核兵器の削減を初めて合意した中距離核戦力全廃条約(INF全廃条約)を調印しました。
ゴルバチョフは、旧ソ連最後の最高指導者で、1985年に共産党書記長に就任し、後に初代大統領も務めました。内政面では、ペレストロイカ(改革)とグラスノスチ(情報公開)を断行し、停滞していたソ連の政治経済の抜本的改革を目指しました。また、外交面では、「新思考外交」に基づき、東欧諸国の民主化の容認や前述したINF全廃条約の調印を果たし、冷戦を終結させました。
ちなみに、①のブッシュ(父)はレーガンの次のアメリカ合衆国大統領、②のエリツィンはロシア連邦の初代大統領です。なお、ブッシュ(父)とゴルバチョフとの間でマルタ会談が行われ、冷戦の終結が宣言されました。

【問題2】の問3について

核兵器禁止条約は、核兵器を違法とし、その開発・実験・保有・使用などを全面的に禁止する条約で、2017年に国連で採択され、2021年に発効しました。しかし、アメリカやロシアなどの核兵器国や、核兵器国の「核の傘」の下にある日本など多くの非核兵器国は参加しておらず、その実効性が課題となっています。
核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)は、スイスのジュネーブに本部を置く国際NGO(非政府組織)で、平和や軍縮・人権などの問題に取り組む約100か国の600以上の団体で構成されています。2017年に、日本の被爆者らと連携して核兵器禁止条約を国連で採択させるのに貢献したとして、ノーベル平和賞を受賞しました。

 

 

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2022年1月7日号

A面「ワークシート」の解答ポイント

【問1】

【資料1】などを見ながら、あなたのクラスには「ケアをしている家族がいる」クラスメートは約何人いることになるか、おおよその人数を求めてみよう。
また、あなたの学年全体では、家族を「自分一人でケアしている」生徒は約何人いることになるか、値を計算してみよう。

 

【解答例】
解答者によって値が異なるため省略。

 

【解説】
「ケアをしている家族がいる」クラスメートのおおよその人数は、あなたが中学生であればクラスメートの総数に「0.057」をかけることで、あなたが高校生であればクラスメートの総数に「0.041」をかけることで求められます。
また、学年全体で家族を「自分一人でケアしている」生徒のおおよその人数は、あなたが中学生であれば、学年全体の生徒数にまず「0.057」をかけ、さらに「0.091」をかけることで求められます。あなたが高校生であれば、学年全体の生徒数にまず「0.041」をかけ、さらに「0.114」をかけることで求められます。
現代においては、おおよそ一クラスにつき1~2人の生徒が、何らかの形での「ヤングケアラー」であるということになります。

 

【問2】

ヤングケアラーの生活は忙しく、遊びはもちろんのこと、勉強するための時間も満足に確保できないことが多い。
もし、あなたの友人や身近な人がヤングケアラーであるかもしれない、と感じた場合、あなたはその人にどう接するべきだろうか。相手の立場に考慮しながら具体的に考えてみよう。

 

【解答例】
どこの家庭にも、それぞれの事情があるだろう。自分の家族の状況を、あまり話したくないというヤングケアラーもいるかもしれない。私は友人がヤングケアラーであるかもと感じた場合、その友人にあまり深いことを尋ねずに、学校で楽しい会話や遊びなどの時間をなるべく共有できるようにしてあげたい。
また、効率の良い勉強法を調べるなどして、その友人に教えてあげたい。一方で、自分の親や先生など、その友人の状況を大人に話してみることで解決することもあるかもしれないので、色々な手段を探ってみたい。

 

【解説】
中高生などの若者がヤングケアラーの問題を考えるに当たっては、「同じ感受性を持った同世代の者としてどう接することができるか」という視点と、「抜本的な問題解決に向けた具体策をどのように見いだしていくべきか」という視点の両方を考えることが求められるでしょう。
引用されている中高生新聞の記事と同じ特集ページ内には、精神科医の斎藤環氏からのアドバイスとして、「特に自宅に招待すること」が有効なのでお願いしたいと書かれています。自宅に招待することで、その人が自分の置かれた状況を客観視し、「福祉のプロ」に助けを求めるきっかけになるかもしれないからです。
また同世代同士の秘密として打ち明けられた場合でも、思い切って「ちゃんと大人に相談するべきだ」と斎藤氏は述べています。「何がその人に必要な支援なのかを適切に判断することは、経験を積んだ大人でなければ不可能」だからです。
一方で、気を張って「助けよう」と思うのではなく、「友だちが一息つける時間を作る」くらいの気軽さで良いとしています。

 

【問3】

ヤングケアラーの問題は各家庭に解決を委ねる問題ではなく、社会全体で改善を考える問題である。
状況の改善に向けて、地域社会や学校、行政は、どのような取り組みをするべきだろうか。あなた自身も当事者になったつもりで考えてみよう。

 

【解答例】
ヤングケアラーの問題で何よりも深刻なのは、その若者が、自分自身の将来のための勉強や活動などをできなくなってしまう点だと私は思う。こうした若者が増えることは明らかに、社会全体の不利益に繋がる。
ヤングケアラーのいる家庭に生活費の一部を支給するなどといった支援も必要で有効だろうが、私はそれらとは別に、例えば高校や大学の入試の際に、ヤングケアラー経験のある受験生を得点調整などで大幅に優遇する、といった措置があっても良いのではないかと思う。
本来、家事や介護などは相当な忍耐力や集中力がないとできないはずで、そのような経験を持つ若者であれば、潜在的な学力は高いと見なせるはずだと考えるからだ。

 

【解説】
ヤングケアラーの問題に限らず、現在、若者が悩みを気軽に打ち明けられる電話での相談窓口として、例えば「児童相談所相談専用ダイヤル(0120-189-783)」、文部科学省による「24時間子供SOSダイヤル(0120-0-78310)」、法務省による「子どもの人権110番(0120-007-110)」などが設けられています。また電話だけでなく、LINEやTwitter、チャットなどによる相談窓口も様々に設置されています。
ただ、悩みをどうしても打ち明けられなかったり、自分の状況はそこまで深刻ではないと信じ込んだりしてしまう若者も存在するでしょう。これからの社会においてヤングケアラーの問題は、もっと幅広く認知されていくべき問題になっていると言えます。

 

B面「テスト形式」の解答ポイント

【問題1】の問1について

秋篠宮家あきしののみやけの長女眞子内親王まこないしんのう(現在は小室眞子さん)の結婚・皇籍こうせき離脱によって、皇室は天皇、上皇、および15名の皇族(上皇后、皇后、愛子内親王、および4宮家の12名)で構成されるようになりました。未成年だった2名のうち愛子内親王の成年行事は、女性皇族の「ロングドレス・デビュー」を現世代で目撃するラストチャンスだったのです。
詳しい報道によると、12月5日午前の宮中三殿への参拝(宗教的行事)でのドレス「ご参拝服」は長袖で淡い色味のもの。次に宮殿で陛下から宝冠大綬章を授けられた際は「ローブ・モンタント」という長袖で襟元がつまったタイプのロングドレス(昼の礼装)で色は白。
そして午後には、ローブ・モンタントとともに新調されたイブニングドレス「ローブ・デコルテ」に宝冠大綬章と冠型の髪飾り「ティアラ」(叔母の黒田清子さやこさんから借用)を加えた女性皇族の最高の正装で一連の行事に臨まれ、宮殿の玄関で撮影されたマスクなしの写真はテーラードジャケットも着用された姿でした。
なお、興味を持った人は「女性皇族の衣装の変移について―明治の洋装化がもたらしたもの―」という題の2019年発表の論文をインターネット上で検索して閲覧してみるとよいでしょう。伊藤博文が初代首相と宮内くない大臣を兼務して女性皇族の洋装化を推進した理由など先人の葛藤や、和服も活用するようになった現代までの移り変わりがよく理解できます。ちなみに、同論文の著者名は「彬子女王あきこじょおう」です。

【問題1】の問2・問3について

成年年齢を18歳に引き下げることを内容とする「民法の一部を改正する法律」が2018年の国会で成立し、2022年4月1日に施行されます。
これによって同時に、皇室の基本法である皇室典範てんぱん(1947年制定)に明記されていない、皇族(皇太子・皇太孫を除く)の成年年齢(民法の規定を準用じゅんようも20歳から18歳になり、秋篠宮家の長男悠仁ひさひと親王の成年行事は2026年ではなく2024年に行われることになります。男性皇族の「モーニングコート(または燕尾服えんびふくデビュー」を現世代で目撃するラストチャンスになるのでしょうか。
なお、大日本帝国憲法とともに制定された旧皇室典範(1889年制定)には、一般の皇族の成年について「満二十年ヲモッテ成年トス」と規定され、天皇・皇太子・皇太孫については「満十八年ヲ以テ成年トス」と規定されました。それは、政務にあたるべき天皇が未成年の場合や、成年の天皇が長く政務不能となった場合に置かれる摂政せっしょうの最高の有資格者である次期天皇について、成年年齢を早めるためだったと言われています。
天皇・皇太子・皇太孫の成年を18歳とする現行規定は、わざわざ規定する意味が無くなる2022年4月以降も存続するようです。

 

【問題2】の問1について

南アフリカ共和国は、アフリカ大陸最南部に位置する共和制国家です。かつて後述するアパルトヘイト政策に対する国内での反対運動、国際的な経済制裁などにより、世界的に孤立していました。
しかしアパルトヘイト政策撤廃以降は、サブサハラ・アフリカの全GDPの約20%を占めるほどの経済成長を果たし、サブサハラ・アフリカ諸国における第2位の経済大国として、アフリカ経済を牽引するようになりました。
またアフリカ諸国で唯一のG20メンバー国ともなり、新興経済国の一員として、近年では、国連改革、核軍縮・不拡散、気候変動等のグローバル・イシューに関する発言力を強めています。

【問題2】の問2について

アパルトヘイトとは、南アフリカが1948年から1990年代初めまで実施していた、法によって定められた人種隔離・差別制度の総称を指します。
引用記事の2段落目に述べられているような差別の他にも、就職、賃金、教育、医療、宗教など、日常生活のありとあらゆる場面で非白人を差別する政策が、法と慣行で制度化されていました。

【問題2】の問3について

ネルソン・マンデラ氏は、若くから反アパルトヘイト運動に身を投じていましたが、1964年に国家反逆罪で終身刑の判決を受け、27年間に及ぶ獄中生活を送ることになりました。
その後、1990年に釈放され、翌年には反アパルトヘイトや黒人の人権擁護の中心的団体であるアフリカ民族会議(ANC)の議長に就任し、当時大統領だったデクラーク氏とともにアパルトヘイト撤廃に尽力し、実現しました。記事の4段落目にあるとおり、ノーベル平和賞を受賞して大統領に就任した後は、民族和解・協調政策を進め、経済政策として復興開発計画(RDP)を実施するなどしました。
AとBの選択肢について、それぞれキング牧師、マルコムXと聞くとピンときた人がいるかもしれません。2人は、1950年代から1960年代にかけてのアメリカの黒人(アフリカ系アメリカ人)が、公民権の適用と人種差別の解消を求めて行った公民権運動に大きな成果をもたらしました。
公民権運動や思想の異なる2人についての関連記事は、読売中高生新聞2021年11月26日号の4面に載っています。簡潔にまとめられているので、読み直してみるといいでしょう。

 

 

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