時事王 代々木ゼミナール×読売中高生新聞

2024.10.3

読売中高生新聞「時事王」掲載問題の解答ポイントなどを公開。テストに役立つ時事を学ぼう!

読売中高生新聞「時事王」掲載問題の解答ポイントなどを公開。テストに役立つ時事を学ぼう!

2024年10月4日号

A面「ワークシート」の解答ポイント

【問1】

小売店の販売価格をメーカー側が拘束する行為を「再販売価格維持行為」という。これによって生ずる不利益は、どのようにして生じ、誰が被るだろうか。簡潔にまとめてみよう。


【解答例】

再販売価格維持行為による値上げが大幅であれば消費者は驚いて購入を控えるだろうが、小幅であれば販売数量はあまり減らず、メーカーも小売店も売上高ひいては利益が増える可能性がある。それに対し【資料2】や右図から、価格競争がなくなり安い商品を選択できなくなった消費者だけが不利益を被ると考えられる。


【解説】

はじめに種明かしを。【資料1】は記事の全文ではなく、一部を略してあります。そこにはこう書いてありました。
「メーカーが店での販売価格を決めてしまうと、店同士の価格競争が(さまた)げられ、私たち消費者は、商品を安く買う機会を奪われることになる。公取委は、日清食品がこうした行為を禁止する独占禁止法の規定に違反する疑いがあると判断したのだ。」(引用おわり)
そこから深掘りすると、ちょっとした発見がありました。総務省統計局が毎月公表している消費者物価指数(CPI)のうち「カップ麺」によると、2020年の小売価格の平均値を100とする指数は、2022年の5月(100.1)から6月(110.0)にかけて9.89%上昇し、翌2023年の5月(111.4)から6月(124.3)にかけて11.58%上昇しました(2024年8月の指数は124.3)。日清食品は両年6月にカップ麺の出荷価格を最大13%引き上げた(読売新聞2024年8月23日朝刊)ということなので、タイミングがぴったり符合します!
実は、消費者物価指数(CPI)のうち「カップ麺」については、最も一般的に売られている日清食品カップヌードル(中華タイプ、内容量78g)の小売価格だけが調査されているのです(総務省統計局Webページ「小売物価統計調査」の「調査品目及び基本銘柄」による)。
2024年10月1日に「日清食品グループ オンラインストア」を閲覧したところ、一般的な各種カップヌードル・どん兵衛・焼そばU.F.O.の普通サイズ1個の税別価格は236円でした。おそらく、2022年5月までは200円弱で、値上げのたびに約1割ずつ上がったのでしょう。各回は「大幅値上げ」とは言えず、消費者の買い控えはさほど起きなかったと推測されます。
カップ麺の出荷価格上昇の主な原因は、2021年に小麦輸出量世界1位だったロシア(2022年は5位)と世界5位だったウクライナ(同7位)の戦争が2022年2月24日に始まったことです。両国からの輸出が急減すると予想されてから、世界的に小麦価格が上昇していきました。消費者物価指数(CPI)の「小麦粉」によると、2022年の1月(105.2)から10月(123.7)にかけて17.59%上昇しました(2024年8月の指数は128.8)。おそらく企業間の取引価格も高騰したでしょう。
ほかにも、物価全体を押し上げるエネルギー価格が上がり始めた2022年以降、外食産業などでも値上げが似たペースで進みました。だからカップ麺の値上げも仕方ないのですが、それをメーカーが「強要」したのは、さすがに弁護しづらいですね。

 

【問2】

「トップ企業」が再販売価格維持行為をしてしまった理由を考え、挙げてみよう。


【解答例】

【資料1】にある「特売セールで販売する場合の価格の最低ラインも設定していた」は、自社商品が値崩れしてしまうような価格競争を防ぐためだったのだろう。カップ麺の業界トップ企業としてのブランドを維持しつつ、値上げを必ず達成しようとしたと考えられる。


【解説】

もう一つ種明かしを。【資料1】の略した部分にはほかに、こう書いてありました。「商品が安売りされることで、ブランド価値が下がることを恐れたためとみられる。」
実は、日清食品の創業者である安藤(もも)(ふく)(1910~2007年)は立志伝中の人物なのです。
1958年に即席麺(袋麺のチキンラーメン)の開発に成功した後、1966年のアメリカでの営業で、相手が試食のためチキンラーメンを割って紙コップの中に入れ、湯を注ぎフォークで食べたことから、カップ麺の開発を着想。1971年に発売したカップヌードルは現在、世界100か国で販売されるほど世界的に普及しました。
また、カップ麺の開発に成功するまでをフィクションに仕立てたNHKテレビの朝ドラ(連続テレビ小説)「まんぷく」が2018年10月から翌年3月まで放映され、モデルとなった日清食品創業者のことも有名になったようです。
カップヌードル以降の商品開発の結果、日本では、シーフード、カレーを含むカップヌードル3種と、うどん(どん兵衛)、焼きそば(U.F.O.)の計5商品がカップ麺の主力となりました。
おそらく「不動の人気」を得た商品なのでしょう。主力5商品の「ブランド力」を活用して、問1でみたような値上げを何としても実現したかったと推測できます。ただし、やりすぎてしまったようですが。

 

【問3】

【資料1】の下線部のように、中古品でない本・新聞・音楽CDなどの再販売価格維持行為が違法とされない理由は、どう考えたらよいだろうか。簡潔にまとめてみよう。


【解答例】

本・新聞・音楽CDなどの著作物の場合、価格競争が行われると薄利多売が見込めない商品は流通しにくくなり、文化の多様性が失われてしまう。そこで定価販売を認め、書店・新聞販売店・CD販売店などが東京から遠い地方都市でも成り立つよう保護していると考えられる。


【解説】

本・新聞・音楽CDなどの再販売価格維持行為を独占禁止法違反としない制度を「著作物の再販制度」といいます。主要先進国の中では、日本の制度はかなり厳格です。
競争(独占禁止)政策を重視するアメリカには再販制度がなく、アメリカから著作物が多く流入するイギリスは1990年代に制度を廃止。そのほか、「時限再販」といって、例えば書店が本を買い取り、販売開始から半年~2年ほど経つと価格を変更できるという制度がフランスやドイツに存在します。この制度だと、タイムセールのように売り切りできそうです。
対して日本の制度は、例えば出版社が書店に販売を委託する(売れ残りは返品)委託販売制という商慣行を前提にしているようです。公正取引委員会には再販制度の見直し(廃止または時限再販の導入など)の機運もありましたが、強固な反対などのため、実現しませんでした。当時の状況を反映した『平成20年度文部科学白書』には、「著作物の再販制度」について、次のような長い解説がありました。
「再販売価格維持行為は、原則独占禁止法違反となる行為ですが、新聞、書籍・雑誌、レコード盤、音楽用テープ、音楽用CDといった著作物については、昭和28年以来、例外的に独占禁止法の適用が除外されています(著作物再販適用除外(いわゆる再販制度))。著作物再販制度により、新聞社、出版社、レコード会社などが取引先である卸売業者や小売業者などに対して、卸売価格や小売価格を示して、これを維持させることができます。この制度の下で、新聞販売店、書店、レコード店において、これらの著作物の全国的な定価販売が可能となっています。
文化庁では、再販制度は、国民のニーズの多様化・高度化に応じた多種多様な著作物を、身近な場所において容易に確実に入手することを可能にしているとの考えから、文字・活字文化や音楽文化の振興普及のため、その維持・存続に向けて取り組んでいます。
公正取引委員会は、平成13年3月に、競争政策の観点からは再販制度を廃止するべきであるが、同制度の廃止について国民的合意が形成されるに至っていない状況にあるとして、当面この制度を存置することとし、再販制度の廃止について、国民的合意が得られるよう努力を傾注するとともに、著作物の取引実態の調査・検証に努めることとしています。」(引用おわり)

 

B面の解答ポイント

【問題1】の問1について

十二支が12年で一巡するようにそれぞれの年につけられるのと同様、十干は10年で一巡するようにそれぞれの年につけられます。そのため、十干十二支の組合せである干支は60年で一巡します(120年ではありません)。1924年が「甲子」なので、その次が1984年、その次が2044年と考えると、今年から見た次の「甲子」の年は20年後とわかります。60歳(正確には数え61歳)になったことを「還暦」としてお祝いする風習は、干支が生まれ年と同じものに戻ることに由来しています。
干支は皆さんが社会科の学習をする中でも登場します。例えば、歴史においては、日本の「壬申の乱」「戊辰戦争」、朝鮮の「壬辰・丁酉の倭乱」「甲午農民戦争」、中国の「戊戌の変法/政変」「辛亥革命」など干支を使って表される出来事が多々あります。東アジア地域で共通して干支を使って年を表す習慣があったことの表れです。また、日本の人口動態では、「丙午(ひのえうま)」に関する迷信から、「丙午」の年の出生数が少なくなる現象が見られます。

 

【問題1】の問2について

ベーブ・ルースは1914年から1934年まで大リーグでプレーし、その間に12回もホームラン王(シーズン中の最多ホームランを放った打者のことで、大リーグではアメリカン・リーグとナショナル・リーグそれぞれで選出)となっています。ベーブ・ルースが当時の打者のなかでいかに突出してホームランを打っていたかがわかる記録と言えるでしょう。ア(シーズン中の最多ホームラン本数)は2001年にバリー・ボンズが記録した73本が最多です。ウ(投手としてのシーズン中最多勝利数)は1904年にジャック・チェスブロが記録した41勝が最多です。エ(唯一の10勝10ホームラン達成者)については、ベーブ・ルースが1918年に10勝10ホームランを達成して以来、彼が長らく唯一の達成者でしたが、2022年に大谷翔平が2人目の達成者となって日本でも大きな話題となりました。大谷は2023年にも10勝10ホームランを達成しました。
ベーブ・ルースが活躍していた頃、アメリカではラジオが普及していきました。大リーグもラジオで中継されるようになってファン層を拡大させ、アメリカの大衆文化を形作る要素の一つとなりました。ベーブ・ルースは花形選手としてファン層の拡大に一役買ったと言えるでしょう。

 

【問題1】の問3について

1945年、第二次世界大戦に敗北した日本は連合国軍(アメリカ軍中心)による占領統治を受けることになりました。この占領統治の中心となったのが「連合国軍最高司令官総司令部」でした。日本では主に「GHQ」と呼ばれますが、これは「総司令部」の部分だけを表す略語なので、「GHQ/SCAP」とも呼ばれます。最高司令官となったのはアメリカのマッカーサー元帥であり、実質的にはアメリカだけで日本の占領統治を行っていました。日本政府は占領期間中も存続しており、GHQの命令は勅令や政令を通じて実現されました(ポツダム命令)。
当初、GHQの占領政策は日本の民主化を図るもので、公職追放や政治犯の解放、国家神道の解体、財閥解体や農地改革などを行いました。しかし、冷戦が本格化すると日本を東アジアにおける共産主義に対する防波堤となす方針がとられて、民主化政策を後退させつつ経済復興への支援を強化しました。GHQによる占領は1952年にサンフランシスコ平和条約が発効した後、終了しました。

 

【問題1】の問4について

1995年1月17日、淡路島・兵庫県東南部・大阪府北部をマグニチュード7.3、最大震度7の地震が襲い、神戸市など都市部が広がる地域を直撃したことから死者6434人におよぶ甚大な被害をもたらしました。これを阪神・淡路大震災と呼びます。1995年には他にもオウム真理教による地下鉄サリン事件が起こるなど、日本にとって激動の年となりました。
阪神・淡路大震災の結果、阪神甲子園球場は記事の通り、スタンドに亀裂が入るなどの被害を受けました。しかし、同年春のセンバツ高校野球は予定通り開催され、球場内には復興応援のメッセージと、復興支援への感謝のメッセージが掲げられました。


【問題2】の問1について

レオナルド・ダ・ヴィンチは、ルーヴル美術館に所蔵されている「モナ・リザ」や、ミラノの教会に残る壁画「最後の晩餐」などの傑作で知られる芸術家です。「万能の天才」というあだ名が示す通り、彼の才能は科学・工学・発明・医学など様々な分野で発揮されました。一般的には「ダ・ヴィンチ」と略して呼ばれますが、これは「ヴィンチ村生まれ」を意味しており、いわゆる名字とは異なります。そのため、美術史学などのアカデミックな世界では「レオナルド」と略すのが普通です。なお、記事にある羽ばたき飛行機(オーニソプター)の実物大模型は、東京ディズニーシーで見ることができます。

 

【問題2】の問2について

ヘリコプターの語源はギリシア語にあります。「螺旋」を意味するヘリックス(hélix)と「翼」を意味するプテロン(pterón)を組み合わせたものです。「ヘリ」と略すことが定着しているので違和感がありますが、語源的には「ヘリコ」と略す方が正確といえそうです。pterónという言葉は翼のある動物の名に含まれていることも多く、翼竜の「プテラノドン」が有名です。

 

【問題2】の問3について

ライト兄弟の本業は自転車の製造・販売でした。彼らが製作した飛行機「ライト・フライヤー」では、エンジンの回転をプロペラに伝えるチェーンや車輪などに自転車の技術が応用されました。

 

【問題2】の問4について

サン=テグジュペリ(1900~44)は、少年期から飛行への情熱にとりつかれ、ヨーロッパ・アフリカ・南米などで郵便飛行の仕事をしながら作品を執筆しました。墜落・遭難といった生命の危機に幾度も直面しながらも、その経験をもとに『夜間飛行』『人間の土地』などの力強い作品を著し、世界的に評価されました。1944年、当時ドイツの支配下にあったフランス本土への偵察飛行に出発し、地中海上で撃墜されました。20世紀末に彼の搭乗機の残骸がマルセイユ沖で発見されています。


 

2024年9月6日号

A面「ワークシート」の解答ポイント

【問1】

ふるさと納税とはどのような制度か、記事や総務省などのWebサイトを参考にまとめよう。また、自分が住む自治体の返礼品について調べてみよう。


【解答例】

ふるさと納税とは、自分で選んだ自治体に寄付を行った場合に、寄付額のうち2,000円を越える部分について、所得税と住民税から原則として全額が控除(一定の金額を差し引くこと)される制度。(自分が住む自治体の返礼品については省略)


【解説】

総務省によると、ふるさと納税制度は、「進学や就職を機に生活の場を都会に移したような地方出身者が、自分が生まれ育った『ふるさと』に、自分の意思でいくらかでも納税できる制度があってもいいのではないか」というような問題提起から始まったとされています。そして、ふるさと納税の大きな意義として、一つ目は、納税者が寄付先を選択するからこそ、その使われ方を考えるきっかけとなり、税に対する意識が高まって、納税の大切さを自分ごととしてとらえる貴重な機会になる、ということ。二つ目は、生まれ故郷はもちろん、お世話になった地域、これから応援したい地域へも力になれる、ということ。三つ目は、自治体が国民に取組をアピールすることでふるさと納税を呼びかけ、自治体間の競争が進み、地域のあり方をあらためて考えるきっかけへとつながる、ということの三つを挙げています。

 

【問2】

下線部に関して、税収が他の自治体に流失することで、流出元の自治体ではどんなことが懸念されているのか考えてみよう。


【解答例】

貴重な税収が他の自治体に流失した結果、流出元の自治体では今後、子育て、教育、福祉、医療、防災、まちづくりなどの行政サービスの提供に支障をきたすことが懸念されている。


【解説】

本来、特に地方税である住民税は、生活に身近な子育て、教育、福祉、医療、防災、まちづくりなどの行政サービスに必要な経費を、その地域の住民が負担し合うためのものであるが、それが他の自治体に流失することで、今後上記のような行政サービスの提供に支障をきたすことが懸念されている。特に都市部はその傾向(税収の流出)が顕著で、2024年度の住民税の税収の見通しは、上位から、横浜市が304億6700万円、名古屋市が176億5400万円、大阪市が166億5500万円の減収となっている。余裕があれば、自分が住む自治体の広報やニュースを調べて、税収がどうなっているか確認してみよう。

 

【問3】

問1問2を参考に、自分は将来、ふるさと納税制度を利用してみようと思うか、その理由も含めて考えてみよう。


【解説】

解答例については、人によって様々な考えがあると思うので省略します。「その地域のブランド牛やカニなどの名産品が食べたいから」という理由で利用したいと考える人もいるでしょうし、問2を参考に、「今住んでいる自治体で快適に生活するため」という理由で利用しない、と考える人もいるでしょう。ふるさと納税は、問1の解説で制度の意義として挙げたように、納税の大切さを自分ごととしてとらえ、自治体はもちろん、寄付をする私たちも節度を持って運用していくことが大切です。

 

B面の解答ポイント

【問題1】の問1について

正解はアの札幌・ウの長野です。
過去に日本では、1964年夏季(東京)、1972年冬季(札幌)、1998年冬季(長野)、2020年夏季(東京)の4度の五輪が開催されています。記憶に新しい2020年夏季五輪は、新型コロナウイルス感染症の世界的流行を受けて1年延期され、実際には2021年に開催されました。なお、イの名古屋は1988年夏季、エの大阪は2008年夏季の開催都市に立候補しましたが、いずれも招致に失敗し実現しませんでした。

 

【問題1】の問2について

正解はギリシャ(ギリシア)です。
現在行われている五輪は「近代オリンピック」ともよばれています。これは古代ギリシアのオリンピアで行われていた、いわゆる「古代オリンピック」を復興させる形で1896年にギリシャ(ギリシア)のアテネ大会を第1回大会として始まったものです。起源の「古代オリンピック」は紀元前9世紀頃に始まったとされる、ゼウスをはじめとする神に捧げる競技会で、宗教的に大きな意味を持つ祭典でした。参加する競技者や観客のため、開催中やその前後に最大3か月の休戦期間が設けられていたほどです。当時の実施種目には短距離走、中距離走、長距離走、レスリング、ボクシングなど現代に受け継がれる競技も多くありました。

 

【問題1】の問3について

正解はナポレオン(ナポレオン=ボナパルト、ナポレオン1世)です。
フランスでは厳しい税負担などに対する民衆の不満が高まり、1789年に革命が起こりました(フランス革命)。その結果王政が廃止されて共和政が成立し、国王ルイ16世は処刑されましたが、その後も勢力争いなどの混乱は続きました。この状況を収め国内で権力を握ったのが、外国との戦争で活躍した軍人のナポレオンです。彼は皇帝となって国家制度の整備を進めるとともに、周辺諸国に攻め入ってヨーロッパの多くを支配下に置きました。しかし、ロシアへの遠征失敗をきっかけに周辺諸国の反撃にあい、勢力を失って皇帝を退位させられました。その後、一度復位したもののイギリスらの連合軍に敗れて再び退位し、南大西洋のセントヘレナ島に追放されこの地で死去しています。

 

【問題1】の問4について

正解はイの2月11日です。
大日本帝国憲法は1889年2月11日に発布されました。これは明治時代の祝日であった紀元節に合わせたものです。紀元節は初代天皇とされる神武天皇の即位日を祝うもので、太陽暦に換算すると2月11日となることからこの日が紀元節として制定されました。紀元節は戦後の1948年に廃止されましたが、のちに同じ日が「建国記念の日」として国民の祝日となり、現在に至っています。大日本帝国憲法の制定により、日本はアジアではじめての近代的立憲国家となりました。その内容は天皇が元首として国家を統治する権限を持つことが定められるなど、現行の日本国憲法とは多くの点で異なるものでした。


【問題2】の問1について

正解はウの葛飾北斎です。
北斎は江戸時代後期に活躍した浮世絵師で、風景を描いて諸国の名所を紹介する風景版画をはじめ、様々なジャンルの絵画を数多く世に残しました。北斎らの作品は海外に渡ってヨーロッパの画家に影響を与え、ヨーロッパでジャポニスム(日本趣味)の流行を生みました。『富嶽三十六景』は富士山を各地から眺めた図で構成された作品集で、北斎の代表作です。当初は名前の通り36枚でしたが、後に10枚が追加されて46枚となりました。アの喜多川歌麿、イの東洲斎写楽、エの歌川広重の3人も、いずれも江戸時代の浮世絵師です。歌麿は美人画、写楽は役者絵の分野で活躍しました。広重は北斎と同じく風景版画の分野で活躍し、『東海道五十三次』などの作品が知られています。

 

【問題2】の問2について

正解はイです。
オーバーツーリズム(観光公害)とは、過度な観光客の集中が地域住民の生活に悪影響を及ぼしたり、旅行者の満足度を低下させるような状況を指します。具体的な事例としては、公共交通機関の混雑や交通渋滞、観光地の景観の悪化、文化財の劣化・損傷などがあります(ア・ウ・エはいずれもオーバーツーリズムの事例として適当)。一方、イの「観光地での雇用の創出」は観光客の訪問により地域が受ける好影響であり、オーバーツーリズムの事例には当てはまりません。観光客の増加は、前述のような悪影響をもたらす一方で、飲食・宿泊や土産の販売など地域の様々な産業に活気をもたらし、さらなる人手が必要となることで新たな雇用を生み出す、という良い影響をもたらしてくれることもあります。観光地にとって観光客の増加は、良い面と悪い面の両方をもっているのです。

 

【問題2】の問3について

正解は山梨県です。
富士山は山梨県と静岡県の2県にまたがっています。4つの登山ルートのうち「吉田ルート」のみが山梨県側にありますが、記事にある通りこの「吉田ルート」が全登山者の約6割が利用するメインルートとなっています。富士山の山梨県側には富士五湖とよばれる5つの湖があり、その周辺は美しい自然を持つ魅力的な観光地として知られています。富士五湖の1つである(もと)()湖の水面に富士山が上下反転した形で映り込んだ構図の写真は、旧千円紙幣の裏面に採用されていました。

 

【問題2】の問4について

正解は環境省です。
日本経済は1950年代半ばから高度経済成長とよばれる急激な成長期を迎え、1968年にはアメリカに次ぐ世界第2位の国民総生産(GNP)を実現しました。しかしそのような成長の中で、公害対策が不十分なまま工場や自動車、家庭などから有害物質が排出されて深刻な被害が発生し、公害が社会問題となっていきました。中でも被害の大きかった水俣病、四日市ぜんそく、イタイイタイ病、新潟水俣病は四大公害病とよばれます。この問題に対応し、当時各省庁でばらばらにおこなわれていた公害行政と環境保全施策の一本化を図るため、1971年に環境庁が設置されました。この環境庁が2001年の中央省庁再編により改組されて発足したのが、現在の環境省です。環境省は環境保全や公害の防止などに加え、現在では原子力規制に関する政策についても管轄をしています。


 

2024年8月2日号

A面「ワークシート」の解答ポイント

【問1】


【解答例】

・人工的に血液を作ることができないから
・生きた細胞を含む血液は長期間の保存ができないから


【解説】

【資料1】の内容から必要な情報を読み取る問題です。といっても、前半部に書かれているので気付かなかった人は少なかったのではないでしょうか。
献血は文字通り身体から血液を一定量採血することになりますが、【資料1】にもある通り、長期間の保存ができません。具体的には、赤血球は採血後28日間、血漿は採血後1年間、血小板は採血後4日間、全血(血液の成分全て)は採血後21日間が有効期間とされていますが、実際には検査期間もあるのでより短期間となります。
また、献血した分の血液が体内で再生成されるまでそれなりの期間を要します。日本赤十字社HPのQ&Aによれば、血小板や血漿成分は1週間程度で元に戻るとされています。赤血球は、通常、200㎖の場合は約2~3週間程度、400㎖の場合は3~4週間程度で回復するとされています。ただし、献血者の健康や安全性の確保を考慮して、採血間隔は長めに設定されています。例えば、血液の成分全てを献血する全血献血の場合、200㎖では男女ともに4週間は間隔を空けることになっており、400㎖では男性12週間、女性16週間となっています。このような条件もあるので、「1人が短期間に何度も献血すれば解決する」という極端な解決策は認められないと言えるでしょう。
なお、日本赤十字社の公式HPや厚生労働省HPなどに掲載されている献血基準には、16~69歳までの老若男女を対象として血圧や脈拍、血色素量(ヘモグロビン濃度)や献血間隔など、詳細な項目が設けられていますが、これらの基準のほかにも「献血をご遠慮頂く場合」という注意事項もあります。これは、献血当日に発熱などの体調不良であったり、一定期間内に予防接種を行っていたり、ピアス穴を開けていたりなど、何かしら血液に問題が生じている恐れがある場合に「献血をご遠慮頂く(ことがある)」というものです。もし献血を希望するのであれば、事前にHPで自分に当てはまるものがないか確認しておくとよいでしょう。

 

【問2】

【解答例】

・少子高齢化の影響で若者の母数自体が減少しているから
・医療の発達によって、服薬履歴がある場合には献血してはいけないと判明した薬品が増えたから
・近場に献血できる場所がなかったり、部活帰りや仕事帰りの時間と献血ルームや献血バスの受付時間とが合わなかったりするから
・血を見るのが怖かったり、血を抜かれる感覚が怖かったりするから
など

【解説】

考え方のヒントとしては、「自分や自分の周りの人たちならば、どのような理由で献血に行かないだろうか」ということを考えてみるとよいでしょう。その際、実際に家族や友人にその疑問を尋ねてみるのも効果的です。それらの内容を踏まえて、次に「国や日本赤十字社はどのように把握しているのか」を調べてみましょう。例えば、厚生労働省では「若年層献血意識に関する調査結果(報告書)」や「年代別献血者数と献血量の推移」などの調査結果が公表されています。こうした様々な視点からの情報を収集することによって、理解をより深めることができるようになります。

 

【問3】

【解答例】

・学校などの教育機関と従来よりも密接に連携して、献血ができない年齢のうちから献血の重要性を子どもたちに伝える活動をし、将来の子どもたちが献血に対する忌避感を覚えないようにする。
・学校や駅などへの献血バスの派遣を増やしたり、献血ルームや献血バスなどの受付時間を延長したりするなど、学校の部活帰りの生徒や仕事帰りの社会人でも立ち寄りやすいようにする。


【解説】

問2で考えた原因・理由を踏まえて、その対処法を考える問題です。
上記の解答例について、前者は長期的な視野に立って行う対処法であるため、すぐには結果が出ませんが、活動が上手くいけば将来的な献血協力者として継続的な献血が望めます。後者は労働時間等の問題があるものの、ある程度調整すれば実現可能な対処法です。
なお、お金を払って血液を買う(お金を貰って血液を売る)という案を考えた人もいるかもしれませんが、現在の日本では2003年に施行された「安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律(血液法)」によって、有償での採血等は禁止されています。かつての日本には売血(買血)をしていた人や企業が確かに存在していましたが、衛生面でのモラルが不足していたり、ウイルス検査が不十分であったりしたことなどが原因でウイルス汚染された輸血用血液が出回ってしまい、ライシャワー事件(※)を代表とする様々な問題が生じてしまいました。そうした問題が生じた結果、現在の日本では血液の売買が禁止されているのです。海外でもこうした血液売買に関する様々な問題が生じているので、興味があれば調べてみるとよいでしょう。

※ライシャワー事件:1964年、アメリカ大使館ロビーで駐日アメリカ合衆国大使であるエドウィン・O・ライシャワーが当時19歳の少年にナイフで太腿を刺されて重傷を負った事件。ライシャワーは虎ノ門病院に運ばれて輸血された際、「これで私の体の中に日本人の血が流れることになりました」と発言して多くの日本人から賞賛されたものの、この時の輸血が原因で輸血後肝炎に罹ってしまった。この事件がきっかけで売血問題が注目され、血液は献血によって調達されることに閣議決定がなされた。

 

B面の解答ポイント

【問題1】の問1について

正解はヒンドゥー教です。
ヒンドゥー教は、古代インドのバラモン教と土着の宗教とが融合して生まれた多神教です。インド人民党はヒンドゥー教に基づくナショナリズムを掲げ、インド国民の約8割を占めるヒンドゥー教徒を重視する政策をとっています。このため、野党などからは、イスラーム教徒をはじめとする少数者に差別的であるとする批判の声もあがっています。

 

【問題1】の問2について

正解は衆議院です。
インドの議会は、上院(定数245名)と下院(定数543名)からなる二院制が採用されています。上院議員は、州の代表という位置づけで、州議会によって間接的に選出されます。任期は6年で、2年おきに3分の1が改選され、解散はありません。一方の下院議員は、人民の代表という位置づけで、国民による直接選挙で選出されます。任期は5年で、解散があります。

 

【問題1】の問3について

(1)の正解はグローバル・サウスです。
「グローバル・サウス」は、アジア・アフリカ・南米の新興国・途上国の総称として、2023年頃からよく使われるようになっています。「グローバル・サウス」という名称は、対象国の多くが南半球に位置することに由来しますが、意味や範囲に明確な定義はなく、話者や文脈によって変化します。一般的には、インド、インドネシア、ナイジェリア、ブラジルなどが含まれ、中国は含まれないことが増えています。
「グローバル・サウス」には今後の人口増加が見込まれる国が多く、その経済的な可能性が注目されています。また、対立が深まる国際環境において、「グローバル・サウス」の国々は中立を維持しようとする傾向があり、国際政治にも影響力を持ちつつあります。一方で、貧困問題や環境問題、政治的不安定といった課題を抱える国も少なくありません。

(2)の正解はイギリスです。
イギリスは17世紀にインドに進出し、当初はインドの特産品である綿織物を輸入していました。しかし、18世紀後半の産業革命を経て綿製品の大量生産が可能になると、イギリスは綿製品の輸出先として、また原料である綿花の生産地として、インドの統治を強化するようになります。過酷な統治に対してインド大反乱が起こりますが、イギリスはこれを鎮圧し、イギリス国王を皇帝とするインド帝国を成立させました。以後、イギリスの植民地支配は、1947年のインド独立まで続きました。
モディ首相は、独立100周年に当たる「2047年までの先進国入り」を目標に掲げています。

 

【問題2】の問1について

正解は大西洋です。
イタリア出身のコロンブスはスペイン女王の支援をうけて、大西洋に面する港パロスからインドを目指して出航しました。当時のヨーロッパではアメリカ大陸の存在が知られておらず、コロンブスは大西洋を西に進めばインドにたどり着くと信じていました。コロンブスは大西洋を横断する長い航海の後に、ついにカリブ海の島に到達しました。ここでコロンブスはアメリカの先住民に対して略奪や虐殺を行いました。コロンブスには「コロンブスの卵」として知られるように、当時のヨーロッパ人にとっては未知の土地に初めて到達した先駆者の側面と、見知らぬ土地の人々を虐殺した侵略者の側面があると言えるでしょう。ただし、実際には「コロンブスの卵」の逸話はコロンブス本人が行ったことではないと言われています。コロンブス以降、ヨーロッパの航海者は競ってアメリカ大陸までやってくることになりますが、先住民にとっては苦難の時代の始まりとなったとも言えます。

 

【問題2】の問2について

正解はウの先住民です。
問題となったMVでは、コロンブス、ナポレオン、ベートーベンらに扮したバンドメンバーが類人猿に扮した人に人力車を引かせたり、ピアノを教えたりする場面がありました。SNS上ではこのような描写が先住民や奴隷を表しているのではないかと批判されました。批判の背景には、コロンブス以降、特に16世紀から20世紀にかけて西洋諸国が他国の人々や先住民を無理矢理従わせる植民地政策を行っていたことがあります。植民地政策の中で西欧諸国は、先住民や黒人を奴隷として無理矢理働かせたり、「文明的」でないとみなして音楽・スポーツなども含めて様々なことを「教育」することによって「文明化」しようとしたりしました。その際に、先住民や黒人独自の文化は軽んじられていました。また、植民地政策を採った国の人々は、先住民や黒人を猿や、ゴリラなどの類人猿に見立てて自分たちよりも劣った存在とみなしていたことも批判が広がった一因です。

 

【問題2】の問3について

正解はプランテーションです。
主に西洋諸国によってアメリカ大陸などで経営された、商品作物を栽培する大規模農園はプランテーションと呼ばれます。プランテーション経営は、サトウキビやタバコなどの単一の作物が生産されるモノカルチャー化が進みやすい特徴があります。これは、西洋諸国から独立を達成した現在でも大きな問題となっています。例えば、モノカルチャーのもとでは、その作物の国際価格が下落した際に、大打撃を受けるなどの危険性があります。しかし、このような産業構造を変えるために必要な資金を、その作物を外国に輸出することに頼らざるをえず、結果として現在でもモノカルチャーから抜け出すことができない国もあります。

 

【問題2】の問4について

正解はエの「風とともに去りぬ」です。
この映画は南北戦争(1861~65)前後のアメリカ南部を舞台にしています。原作となった小説は1936年に出版され、映画は1939年に公開されました。この映画の黒人に対する描写については公開当時から批判がありました。2020年に黒人への差別に反対し、黒人の権利を守ろうとする運動(BLM運動)が活発化すると、南北戦争中に奴隷制維持に賛成した南部の白人の立場から描かれた「風とともに去りぬ」も、奴隷制を肯定する描写がある、といった批判の対象になりました。しかし最終的には、差別表現を修正・削除することは偏見の存在自体を否定することになるとして、注意書きをつけた上で配信を再開することになりました。


 

 

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2024年7月5日号

A面「ワークシート」の解答ポイント

【問1】


空き家が増加している原因として考えられることは何だろうか。表から、地方でその傾向が多くみられていることに着目して考えてみよう。


【解答例】

特に若い世代が地方から都市部へ流出していることで、地方では過疎化と高齢化が進行して住む人がいない家が増えるため。また、これらの住居は高齢者が亡くなるなどして家を管理する人がいない状況となることが多いため。


【解説】

空き家が増加している原因はさまざまですが、今回は地方で空き家が多いことに着目して考えることとしました。解答では二つの視点からまとめています。
一つ目は、現在、日本では地方人口が過疎化する一方、都市部では人口が集中していることが挙げられます。総務省が2020年の国勢調査を受けて行った発表では、日本全国の市町村の半分以上が「過疎地域(人口の減少や高齢化により生活水準や生産機能が困難な状況の地域)」に指定されました。都市部の人口が増加する背景には、利便性のよさや充実した高等教育、就職などさまざまですが、特に若い世代が都市部に向かいやすい状況にあります。
二つ目は、日本が少子高齢化社会であることです。6月5日に厚生労働省から発表された2023年の合計特殊出生率は、過去最少の1.20となりました。また、日本は長年、『高齢化社会』と言われてきましたが、近年ではさらにその傾向が強まった『超少子高齢化社会』と言われ、出生数の減少と高齢者の割合の増加がますます社会問題になっています。
このような社会状況が、地方の空き家を増加させる背景となっていると言えます。

 

【問2】

【資料2】を読んで、空き家の増加によって生じる問題点をまとめてみよう。また、【資料2】で挙げられていること以外にも考え、挙げてみよう。


【解答例】

空き家が増加すると、倒壊の危険が高まったり犯罪に悪用されたり、所有者に連絡が取れずに災害時の復旧作業の妨げになったりする。また、ねずみや害虫の増加により近隣住民に迷惑をかけたり、いたずらに放火されたり火災時の延焼のもとになることが考えられる。

【解説】

空き家が増加すると様々な問題が起こります。【資料2】に挙げられているものをまとめつつ、その他に生じうる問題を考えてみましょう。国土交通省のHPによると、空き家を放置するリスクとして、犯罪や倒壊以外にも、老朽化による外壁の落下や景観の悪化、ねずみや害虫の増加や悪臭問題、不法侵入、枝のはみだしなどが挙げられています。また、老朽化した空き家を放置することでいたずらに放火されることや、火災時の延焼のもとになるなどの問題も考えられます。

 

【問3】

空き家の増加と地方の過疎化という問題に着目して、地方移住のメリットとデメリットを考えてみよう。


【解答例】

<メリット>

都市部に比べて家賃が安く、通勤時の混雑も緩和されており、自然が豊かであること。地方は物価が安いことが多く、ゆとりを持った生活ができること。子育て世帯にとっては子どもを自然と触れあいながら育てることができること。など

<デメリット>

公共交通機関が限られていて移動手段が少なく、場所によっては車を持たなくてはならないこと。スーパーやコンビニが少なく、買い物に不便なこと。進学や就職における選択肢が少ないこと。都会に比べて人口が少ないため、交際関係が限定されること。など


【解説】

空き家は特に地方に多いため、空き家問題への対策は地方の過疎化への対策にもつながるでしょう。そこで、問3は地方移住のメリットとデメリットを考えるという問いです。
地方は都市部に比べて家賃や物価が安く、ゆとりをもった生活ができることなどからかえって暮らしやすいと考えて、リモートワークを利用したり、町の支援策を利用してカフェやパン屋の開業などに挑戦したりと地方に移住して新しい生活をする人も出てきています。一方、地方暮らしは交通の不便さや進学、就職の選択肢が少ないなどというデメリットもあり、地方への移住政策はなかなか進みづらい状況です。こうした問題の解決に向け、私たち一人一人がライフプランを設計する中で地方移住や空き家利用を検討することが重要になるでしょう。

 

B面の解答ポイント

【問題1】の問1について

正解はベビーブームです。
ベビーブームは子どもの生まれる数、すなわち出生数が急増することです。第二世界大戦後の日本では、ベビーブームが2回ありました。まず1947~1949年の第一次ベビーブームは、第二次世界大戦中に子どもを産み育てられなかった人々が多く子どもを出産したことで起こりました。そして1971~1974年の第二次ベビーブームは、第一次ベビーブームの世代が結婚、出産したことで起こりました。しかし、その後の日本は価値観の多様化、女性の社会進出などが原因となって既婚率が下がって少子化が進み、1975年以降の出生数は減少傾向が続き、ベビーブームは見られません。

 

【問題1】の問2について

正解は5月5日です。
「こどもの日」は、1948年に制定された国民の祝日に関する法律で5月5日と定められました。1949年から始まり、来年2025年も5月5日となっています。国民の祝日の中には7月第3月曜日の「海の日」(2024年は7月15日)のように、年によって日付が変わるものもあります。
「こどもの日」の趣旨は「こどもの人格を重んじ、こどもの幸福をはかるとともに、母に感謝する」となっています。なお、こいのぼりや五月人形を飾ったり、かしわもちを食べたりする5月5日の「端午(たんご)節句(せっく)」も男の子の(すこ)やかな成長や幸福を願う中国由来の行事ですが、「こどもの日」との直接的な関係はありません。

 

【問題1】の問3について

正解は沖縄です。
沖縄県は47都道府県で最も15歳未満の人口の割合が高いです。その理由としては、他の都道府県と比べて若い女性の既婚率が高く、合計特殊出生率が高いことが考えられます。しかし少子高齢化の影響は沖縄県にも及び、2023年の沖縄県の合計特殊出生率(1人の女性が生涯において産む子どもの数の平均)は史上最低の1.60で、15歳未満の人口の割合は低下傾向にあります。

 

【問題1】の問4について

正解はCです。
Cの「東北地方で最も長い北上(きたかみ)(がわ)」の源流は岩手県で、太平洋に面した河口は隣の宮城県にあり、北上川は秋田県を流れていません。秋田県を流れる代表的な河川は雄物川(おものがわ)米代川(よねしろがわ)などで、河口は日本海に面しています。
Aの八郎潟(はちろうがた)男鹿(おが)半島の付け根にある湖で、かつては琵琶湖に次いで日本で2番目に大きな湖でしたが、8割以上が食糧増産のために干拓され水田などの農地となったことで大幅に縮小しました。Bの世界自然遺産の白神(しらかみ)山地は隣の青森県にまたがり、貴重なブナの原生林が残っています。Dの特別豪雪地帯は、法律によって特に冬の積雪が多い湯沢(ゆざわ)市などの内陸部の一部の地域が指定されています。日本海に面した秋田県は北西の季節風と対馬海流の影響で冬の積雪量が多く、県の全域が豪雪地帯か特別豪雪地帯に指定されています。


【問題2】の問1について

正解は必須アミノ酸です。
タンパク質は生物の重要な構成成分であり、アミノ酸が結合することで作られています。人間のタンパク質は20種類のアミノ酸で構成されていますが、そのうち9種類は体内で十分な量を合成することができず、栄養分として摂取する必要があります。この9種類のアミノ酸を必須アミノ酸といいます。また、食べ物に含まれる必須アミノ酸の配合バランスを、100を最大値として評価した指標のことをアミノ酸スコアといい、薄力粉(はくりきこ)は56なのに対し、うるち(まい)の米粉は89と高い数値を示しています。

 

【問題2】の問2について

正解はAです。
2022年の日本の小麦生産量は約99万3,500トンであり、そのうち北海道の小麦生産量は約61万4,200トンと、圧倒的な1位です。北海道は冷涼な気候で降水量が少ないため小麦の生産に適し、帯広(おびひろ)市などの十勝(とかち)地方などが産地になっています。ただし、2022年の日本の小麦のカロリーベース食料自給率は16%と低く、需要の多くを輸入によってまかなっています。

 

【問題2】の問3について

正解はBです。
食料自給率とは、国内で供給される食料のうち、国産の食料でまかなえている割合を示すものです。米や小麦、肉や野菜などそれぞれ性質の異なる品目を合計して食料全体の自給率を算出する場合、単位をそろえて算出する必要があります。食料全体の自給率には国民1人が1日にとる国産食料のカロリーを、外国産食料を含めた全体のカロリーで割って算出するカロリーベース食料自給率や、食料の経済的な価値に着目し、金額に換算して算出する生産額ベース食料自給率などの種類があります。カロリーベースでは穀物などの重量当たりのカロリーが高い品目のウェイトが大きくなり、生産額ベースでは野菜や果実などの単価が高い品目のウェイトが大きくなります。2022年度の日本の食料自給率は、カロリーベースでは38%、生産額ベースでは58%です。農林水産省によると、国産の(こめ)()パンを1人が月に5枚食べると、食料自給率が1%と上がると推計されています。

 

【問題2】の問4について

正解は食料安全保障です。
食料安全保障とは、すべての人が将来に渡って良質な食料を合理的な価格で入手できるようにするという方針やそのための取り組みのことをいいます。世界的な人口増加による食料需要の増大、気候変動による農業への影響や政情不安による国際市場への農産物供給量の減少など、近年では安定した食料供給に関する様々な懸念があります。そのため、不測の事態に備えて国内での農業生産の増大、食料の備蓄などに加えて、食料の安定供給を妨げる要因の分析や対応策の整備などが各所で行われています。


 

 

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2024年6月7日号

A面「ワークシート」の解答ポイント

【問1】


制服のリユースとリサイクルはどう違うだろうか。【資料1】をヒントにまとめてみよう。なお制服のリユース(再利用)では、不用になった制服を修繕、綺麗にした上で、そのままの形状で次の人の手に渡るようにする。


【解答例】

リユースでは、古着のように、他の人が着た制服を着ることになる。リサイクルでは、回収した制服を原料に戻してから加工し直すので、新たに仕立てられた全く別の制服を着ることになる。


【解説】

【資料1】の3番目が「リサイクル」の事例になっています。
「リユース」「リサイクル」をはじめとして、制服をめぐる取り組みには、それぞれ一長一短があるでしょう。例えば私立学校の中には、独自デザインの「カワイイ」「カッコイイ」制服で人気になる学校もありますが、このことと「地域統一型」の両立は難しいかもしれません。

 

【問2】

あなたは【資料1】のうち、どの取り組みの制服を着てみたいと思うだろうか。環境のことも意識して、理由とともに考えてみよう。


【解答例1】

「サブスク制服」を着てみたい。成長に合わせて無料でサイズ交換できるのは実際便利だ。また、サイズが合わなくなったことを理由とした制服の廃棄が、大きく減ると思うからだ。

【解答例2】
「地域統一型」を着てみたい。理由は、一定地域内で制服が統一されていれば、親戚などの間で制服を柔軟に使い回せる可能性が出て、エコになると思うからだ。

【解答例3】
「循環型制服プロジェクト」に賛同したいと思う。自分が卒業した時、制服がリサイクルされ後輩に受け継がれると思うと、学校生活をしっかり送ろうという気になれそうだ。プロセス全体で原料を抑えられるのも魅力だ。


【解説】

問題文には「環境のことも意識して、理由とともに考えてみよう」とあります。何事であっても、自分の選択は、大局的な観点を踏まえ、そう選んだ理由の説明を用意しながら表明することが大切です。
これは学校という主体でも同様です。政府でも企業でも学校でも、現代ではSDGs(持続可能な開発目標)への真剣な取り組みが重要になっています。取り組んでいない場合、「なぜ取り組んでいないのか」と問われてしまうこともあります。「していること」だけでなく、「していないこと」や「しようと思っていること」にも、理由の説明が必要になる場合があるのです。

 

【問3】

【資料2】の「衣類を捨てない社会」を実現するため、あなたにできることは何だろうか。普段の私服のことも考え、意見を出し合ってみよう。


【解答例】

私は、少し逆説的かもしれないが、各人が「ファッションセンスを磨く」ことが、「衣類を捨てない社会」の実現のためには重要になると考える。私は「ファッションセンス」を持っていない。そのため私は、せっかく私服を自分で選んで買っても、後から「やっぱり似合わなかった」と思い、着なくなってしまうことがある。「自分に似合う服はどんな服か」「何年経っても着続けられる服とはどんな服か」ということを、各人で真剣に考えてみるのもよい。それを話し合う授業があってもよいのではないかと思う。

【解説】

環境問題の議論では、多くの場合、一人ひとりの日常生活内でのアクションが求められます。ですが、そこで単なる義務感が先行するのでは、持続させることは難しいでしょう。衣類のケースでも同様で、「オシャレを犠牲にすることで環境問題に取り組む」のではなく、「オシャレも、環境問題への取り組みも、同時にできる」という枠組みを作っていくことこそ、根本的な問題解決のためには重要になるはずです。

B面の解答ポイント

問1について

正解はbの産業革命です。イギリスは石炭や鉄鉱石を豊富に産出したことや、奴隷貿易により資本が蓄積していたこと、近代的な社会制度が整備されて技術革新が促進されたこと等の条件が重なって、1760年頃から産業革命が始まりました。工業の動力が人力から石炭の燃焼による蒸気力に変わり、生産力が飛躍的に向上しました。特に鉄とガラスの生産量が急増したことを受けて、1851年の第1回万国博覧会ではそれらをふんだんに使用した建物が建ちました。特に注目を浴びたのが、全面ガラス張りで建てられた水晶宮(クリスタル・パレス)です。

 

問2について

正解はエのナポレオン3世です。高校で歴史総合を学んでいないと難しかったかもしれません。ウのナポレオン1世の甥で、1852~70年までフランスの皇帝でした。フランスの産業育成に尽力し、その促進や成果の誇示のために1855年と1867年の万博開催を主導しました。
アのルイ14世は1643~1715年に在位したフランス王で、「太陽王」と呼ばれて典型的な絶対王政を行いました。イのルイ16世はフランス革命により1793年に処刑されたフランス王です。ナポレオン1世はフランス革命の混乱を収めて1804年に皇帝に即位しました。

 

問3について

正解は渋沢栄一です。問題文の通り、彼は江戸幕府の使節の随行員として1867年のパリ万博に派遣され、江戸幕府の万博パビリオンの運営者としても活躍しました。渡仏中には万博やパリの視察を行って経済について学び、帰国後の明治時代には多くの企業の設立に携わりました。このため渋沢栄一は「日本資本主義の父」と呼ばれています。この功績から、2024年7月から発行される新紙幣では1万円札の肖像に選ばれました。
なお、1867年の日本の出展は江戸幕府と薩摩藩、佐賀藩に分かれていました。これは薩摩藩が倒幕を主導する立場として、自分たちは江戸幕府とは別の政府であると主張したためです。幕末の政治混乱が万博にも影響を与えた事例と言えます。

 

問4について

正解はアの「パビリオン内に日本庭園が築かれた」です。万国博覧会は、特に19世紀には各国が主に科学や科学技術の進展をアピールする場となっていましたが、1873年の日本はまだ明治時代に入ってすぐの時期であり、科学や科学技術は欧米諸国に比べて遅れていました。このため日本文化を紹介するパビリオンを建設する方針とし、パビリオン内には日本庭園を造り、また浮世絵や漆器・陶磁器を展示しました。これらは来場者の好評を博し、オーストリア皇帝フランツ・ヨーゼフ1世も日本館を訪れました。こうした1867年のパリ万博や1873年のウィーン万博を受けて、オーストリアやフランスでは日本文化への関心が高まり、日本趣味(ジャポニスム)が流行しました。
イの「エレベーターが初めて設置された」のは1853年のニューヨーク万博の建物、ウの「世界初のファクスが展示された」のは1851年のロンドン万博での出来事、エの「回転ずしが展示された」のは1970年の大阪万博での出来事です。


問5について

正解はaのフランス革命です。1889年の百年前、1789年にフランス革命が起きました。革命前のフランスは身分制を基礎とした社会であり、わずかな聖職者(第一身分)や貴族(第二身分)は税などを免除され、平民(第三身分)は重い負担に苦しんでいました。この状況を打破しようとして起きたのがフランス革命です。初期の革命を指導したラ=ファイエットにより「人権宣言」が発表されて、人権の観念が確立されることになった重要な出来事です。

 

問6について

正解はeの世界恐慌です。1920年代のアメリカは空前の好景気が続いていましたが、1929年10月にニューヨーク株式市場の株が暴落し、一転して不況に陥りました。アメリカが不況になったことで世界中に恐慌(不況)が波及し、世界恐慌と呼ばれる出来事になりました。1933年のシカゴ万博はまだアメリカが世界恐慌の痛手から立ち直っていない中で開催され、「進歩の世紀」をテーマとして最新の電車や自動車が展示されました。

 

問7について

正解はfのキューバ危機です。当時は社会主義を掲げるソ連と、資本主義を掲げるアメリカが争う冷戦の時代でした。キューバはカリブ海に位置するアメリカから近い国ですが、革命により社会主義国となり、ソ連と友好を深めていました。1962年にキューバでソ連がミサイル基地を建設して核兵器を配備しようとすると、アメリカがそれを妨害したため、核戦争の危機に発展しました。最終的にソ連が妥協してミサイル基地建設を中止して解決しましたが、キューバ危機は核戦争の恐怖を世界に知らしめる出来事となりました。

 

問8について

正解は「太陽の塔」です。1970年の大阪万博のシンボルとして、画家の岡本太郎氏が設計しました。独特の風貌から当時は賛否両論でしたが、時が経つにつれて高い評価を受けるようになり、現在でも万博記念公園内に立っています。塔内は中空となっていて、予約の上で入ることができます。


問9について

正解は「ミャクミャク」です。太陽の塔の系譜を引く独特な風貌で、かわいい反面、ちょっと怖くて気持ち悪い、いわゆるキモかわいいデザインということで話題になりました。2025年の大阪万博のテーマ「いのち輝く未来」にあわせて、赤い部分は細胞、青い部分は清い水を表しているそうです。この人間をまねた姿以外に様々な形に姿を変えることができるそうですので、会場ではきっと多様な姿を見せてくれることでしょう。愛称の「ミャクミャク」は「脈々」と受け継がれてきた人間のDNAや知恵、技術、文化などを未来につなぐという意味が込められているそうです。


 

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2024年5月3日号

A面「ワークシート」の解答ポイント

【問1】


トラック運転手らの労働時間の短縮によってどのような問題が生じると予想されるか、資料から読み取ろう。


【解答例】

宅配便の取扱個数は増える一方なのに対し、トラック運転手らの労働時間は短縮するので、運べる荷物の個数が減ってしまうこと。


【解説】

トラック運転手らの労働時間の短縮によってどのような問題が生じるかを答える問いです。【資料1】では勤務中の休憩時間に関する決まりの厳格化、時間外労働の上限規制、勤務と勤務の間の休息の決まりなどで、トラック運転手らの労働時間が短縮される話がされています。【資料2】ではトラック運転手らの稼働時間が短くなる一方で、宅配便の取扱個数が増加の一途をたどっており、将来的には運べなくなる荷物が生まれる話がされています。よって、【資料1】【資料2】の話を組み合わせると、宅配便の取扱個数は増える一方なのに対し、トラック運転手らの労働時間は短縮するので、運べる荷物の個数が減ってしまうという問題が生じるということが分かります。

 

【問2】

問1のような問題があるにもかかわらず、政府が「働き方改革関連法」でトラック運転手らの残業を規制したのはなぜだろうか、自分で考えてみよう。


【解答例】

・トラック運転手らの過酷な労働環境を改善するため。

・過酷な労働環境による働き手不足を解消するため。


【解説】

問題があるにもかかわらず、政府が「働き方改革関連法」でトラック運転手らの残業を規制した理由を考える問いです。「働き方改革関連法」という名前の通り、この規制はトラック運転手らの働き方を変える目的で行われました。物流業界は、若手不足と高齢化による労働力不足の中、宅配便の取扱個数は増え、長時間労働が慢性化し、過酷な労働環境によりさらに働き手が減るという悪循環に陥っていました。政府は、トラック運転手らの過酷な労働環境を改善し、働き手不足を解消するために今回の規制を行ったのです。記事ではあまり触れられていませんでしたが、規制にはこのような背景があるということも知っておきましょう。ほかにも、バス・タクシー運転手、建設業、医師にも、2024年4月から時間外労働の上限規制が設けられます。どれも長時間労働が問題となっている業種です。このような業種では、働き手の長時間労働の上に私たちの生活が成り立っていたので、時間外労働の上限規制は私たちの生活にも影響が出てくるかと思います。しかし、それは長時間労働の是正という正当な政策から生まれる影響なので、私たちもそれらの変化を受け入れ、一緒に対策をしなければなりません。

 

【問3】

問1の問題に対して私たちができる対策は何か、自分で考えてみよう。


【解答例】

・なるべくまとめ買いをして、配送回数が少なくなるようにする。

・到着を急いでいない荷物は、最短の商品到着日より遅い配達を選択する。

・置き配や宅配ロッカー、コンビニ受け取りを利用する。

・配送サービスの中で、あらかじめ、受け取り可能な日時を設定しておく。

【解説】

問2では問題の背景を考えましたが、問3では問題の対策を考える問いになっています。私たちにできることとして、まずは依頼する宅配物の数を減らすことが思いつきますが、様々な事情から宅配物を頼まなければならないこともあるでしょう。そこで、①なるべくまとめ買いをして、配送回数が少なくなるようにする、②到着を急いでいない荷物は、最短の商品到着日より遅い配達を選択する、③確実に受け取れるように、置き配や宅配ロッカー、コンビニ受け取りを利用する、④配送サービスの中で、あらかじめ、受け取り可能な日時を設定しておく、などの対策が考えられます。もし、私たちが何も対策を行わなければ、【資料2】にもあった通り、荷物が運ばれなくなる可能性や、運ばれたとしても送料がとても高くなることも考えられます。宅配物を頼むときも、それを運んでくれている人のことを考えられると、自分たちの今後のためにも、配送員の方のためにもなると思います。
また、ここでは取り扱いませんでしたが、物流業界としても対策を行っています。読売中高生新聞の3月15日号でも紹介されていますが、「ダブル連結トラック」というトラックのコンテナを連結し、一度に2台分の荷物を運べるようにしたものを使用したり、長距離輸送を1人の運転手が行うのではなく、中継地点を設け、何人かで分担する「中間輸送」という輸送方式を採用したりしています。さらに、トラック以外の、鉄道や船、飛行機、ドローン等を利用して輸送したりもしています。また、今後、AIを搭載したロボットを使って荷物の積み上げを行ったり、デジタルツールを導入して、業務の効率化を進めたりするといった対策も考えられています。例えば、ドライバーの拘束時間が長くなる原因の一つとして、荷物の積み下ろしの際に荷主や物流施設の都合によってドライバーが待機している「荷待ち時間」が問題視されてきました。この問題への対応として、トラック予約受付システムの導入が考えられます。予約受付システムを使用することで、トラックの到着時間が事前に予測可能となり、それに応じて荷積みや荷卸しの準備を効率的に行うことができます。さらに、トラックの到着時刻が分散され、ドライバーが荷物の積み下ろしを待つ時間が大きく減少するでしょう。このように、デジタルツールを使うということも今後大事になってくると考えられます。

 

B面の解答ポイント

【問題1】の問1について

正解は九州新幹線です。
1964年に初めての新幹線である東海道新幹線(東京-新大阪)が開通した後、山陽新幹線、東北新幹線、上越新幹線などの建設が進みました。1973年、政府が法律に基づき計画を決定した「整備新幹線」は、北陸新幹線以外にも九州新幹線などがあります。九州新幹線は2004年、熊本県の(しん)八代(やつしろ)から鹿児島中央まで、2011年、福岡県の(はか)()から新八代までが開通し全通となりました。現在は九州新幹線と山陽新幹線が相互に乗り入れ、新大阪から博多や熊本を経由して、鹿児島中央までの直通列車が運行されています。

 

【問題1】の問2について

正解は金沢です。
金沢は石川県南部に位置し、石川県の県庁所在地としてだけではなく北陸地方の中心都市としても発展しています。かつては百万石の領地があった(まえ)()家の城下町で独自の伝統文化が発達し、日本三名園の一つ、兼六(けんろく)(えん)などの観光名所があります。2015年、北陸新幹線が長野から金沢まで延伸され、東京までの所要時間が短縮されたことで観光客が増加するなど大きな経済効果がありました。

 

【問題1】の問3について

正解はDの若狭(わかさ)湾です。
若狭湾は福井県と京都府が面する日本海側の湾で、2024年3月16日より北陸新幹線の終点となった敦賀(つるが)は若狭湾の東側に面した港町です。若狭とは福井県西部の旧国名です。若狭湾沿いは複雑なリアス海岸が発達し,福井県側には複数の原子力発電所が立地しています。北陸新幹線は今後、敦賀から京都を経由して新大阪までの延伸が計画されています。
Aの諏訪(すわ)湖は長野県中央部にある湖です。Bの志摩(しま)半島は三重県にあるリアス海岸が発達した半島です。Cの濃尾(のうび)平野は愛知県と岐阜県に広がる平野です。

 

【問題1】の問4について

正解は紫式部です。
紫式部は平安時代の10世紀後半に京都の貴族、藤原(ふじわら)(のため)(とき)の娘として生まれ、本名は不明です。父の為時が996年、越前(えちぜん)の国司となったことで、一時期越前に住んでいたとされています。京都に戻り結婚し娘を産むも夫が先に亡くなり,この時代では他に例を見ない長編小説の『源氏物語』を書き始めました。紫式部はその文才を()大臣(だいじん)の藤原道長に認められ、1005年ごろから道長の娘である天皇のきさきに仕えました。かつて越前の国府(役所)があったとされ、2024年3月16日に北陸新幹線の越前たけふ駅が開業した越前市には「紫式部公園」があります。


【問題2】の問1について

家、学校、会社といった比較的小規模な組織の内部において、いくつかのコンピュータを接続することで構成されるネットワークのことをLANといいます。LANは「Local Area Network」の頭文字を取った言葉です。
LANを構成するには、専用のLANケーブルで各機器を接続する方法と、「アクセスポイント」と呼ばれる装置から電波を送受信して各機器を接続する方法が主流です。後者の方法で構成されるLANはよく「無線LAN」と呼ばれます。
また、離れた場所にあるLAN同士を接続してできるネットワークのことをWAN(Wide Area Network)といいます。皆さんはこのページを見るために「インターネット」を利用していると思いますが、このインターネットも、世界中にあるコンピュータやLANをつないだ、世界規模のWANといえます。

 

【問題2】の問2について

ランサムウェア(ransomware)は、「身代金」を意味する英単語「ransom」と、「software」を組み合わせた言葉です。
ネットワーク上で通信されている情報は基本的に、第三者に内容を見られないように暗号化されて送受信されています。暗号化された情報は、「鍵」を使って復号(詳細は問3の解説をご覧ください)しないとその内容を読み取ることが困難という性質があります。
ランサムウェアを用いたサイバー攻撃ではこの性質を悪用しており、他人の情報を意図的に暗号化することで利用できない状態にし、復号のために対価(身代金)を払うよう要求するというのが基本的な手口です。近年ではそれに加えて、コンピュータシステムに侵入した際に情報を盗み取り、それを外部に流出させると脅して二重に身代金を要求するという事例も出てきています。
記事にもある通り、ランサムウェアによる被害は国内外の様々な企業や団体に及んでいます。日本でも、自動車メーカー、大学、病院などが標的に遭い、業務が停止したり個人情報が流出したりする事件が発生しています。
その他の選択肢の意味は以下の通りです。
「トロイの木馬」…無害なソフトウェアを装って利用者にインストールしてもらい、侵入したコンピュータ内で不正な操作を行うソフトウェア
「フィッシング」…本物そっくりのウェブサイトに利用者を誘導し、そのウェブサイトでパスワードなどを入力させることで個人情報を盗み取る詐欺の手法
「ワンクリック詐欺」…ウェブサイトや電子メールに付けられたURLをクリックしただけで契約が成立したと主張し、高額な料金の支払いを迫る詐欺の手法

 

【問題2】の問3について

ネットワークを通じて離れた他人に情報を送るとき、通信路の途中では、その情報を盗み見たり、内容を書き換えたりしようと企む人もいます。そのため、もしメッセージを暗号化せず元の文章のまま(これを「平文(ひらぶん)」といいます)送信すると、その内容が第三者に盗み見られ、情報漏洩などにつながる危険性があります。
このようなことを防ぐために、平文は、第三者に見られても内容が分からないように変換して送受信する必要があります。この操作を「暗号化」といい、暗号化によって変換された平文のことを「暗号文」といいます。そして受信者に届いた暗号文は、その後平文に直すことで内容を読み取ることができます。この平文に直す操作を「復号(ふくごう)」といいます。
暗号化の方式は、暗号化と復号に同じ規則や情報(これを「鍵」といいます)を使う「共通鍵暗号方式」と、暗号化と復号で異なる鍵を使う「公開鍵暗号方式」の大きく二つに分類されます。

 

【問題2】の問4について

問題文にもある通り、ランサムウェアは他人のコンピュータに侵入し、コンピュータ内の情報を利用できないようにします。そのため、重要な情報はハードディスクなど外部の記憶装置に保存(バックアップ)しておくことで、ランサムウェアによって情報が利用できなくなったとしても、外部の記憶装置に保存していたものを利用することで、再びその情報を使うことができます。
その他の選択肢が不適切な理由は以下の通りです。
「ログインするためのパスワードを、複数のコンピュータで統一させる」
…複数のコンピュータで同じパスワードを使いまわすと、あるコンピュータで使われているパスワードが漏洩したとき、芋づる式に他のコンピュータにも侵入できるようになってしまいます。
パスワードは極力長く推測されにくいものにし、コンピュータごとに異なるものにすることが大切です。
「ウイルス対策ソフトのアップデートが発表されたとしても、むやみに更新しない」
…送信元が分からないソフトウェアはむやみにインストールするべきではありません。しかし適切な会社から提供されているウイルス対策ソフトウェアは、日々変容するコンピュータウイルスに対抗するために、定期的にソフトウェアのアップデートが行われています。
そのため、このようなウイルス対策ソフトウェアに関しては、アップデートが発表されたらできるだけ早く更新し、コンピュータを万全の状態に保っておくことが大切です。
「より高性能なCPUを搭載したパソコンに買い替える」
…CPU(中央処理装置)は、コンピュータ内の各装置に命令を送る「制御装置」と、コンピュータ内でデータの計算を行う「演算装置」を合わせた装置のことです。CPUの性能がコンピュータ全体の性能を左右するため、コンピュータの頭脳ともいえる重要な存在です。
しかし現在使われている暗号化方式は、復号のための鍵が無い状態では、スーパーコンピュータを用いて何万年もかけて計算を行わないと復号できないぐらい複雑な理論・技術が用いられています。そのためどれだけ性能の良いCPUが備わっていたとしても、ランサムウェアによって暗号化された情報は、鍵が無い状態で復号することはほぼ不可能です。


 

 

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2024年4月5日号

A面「ワークシート」の解答ポイント

【問1】


なぜ日本に花粉症の原因となるスギやヒノキ林が多くなったのか。またなぜ山林の少ない都会でも花粉症が発症、症状が深刻化するのか。文章を要約してみよう。


【解答例】

第二次世界大戦後の復興や高度経済成長で多くの木造資材が必要となり、成長が早く建築に使いやすいスギやヒノキが各地で組織的に植林されたことで増えた。都会では地面の大部分がアスファルトなので、土よりも花粉が舞い上がりやすくなるうえ、そこに汚染物質が付着して、さらにひどいアレルギー症状を引き起こす。


【解説】

読み手を意識して必要な情報をまとめ、資料後半の部分を自分なりの文章に言い換えてみましょう。戦争からの復興が、現在に至るまで意外な分野に影響を及ぼしているということを念頭に置いて世の中を見渡してみると、また違った景色が見えてくるのではないでしょうか。スギやヒノキは、植林後に安価な海外木材の輸入が増加して国産材の需要が減り、伐採されず放置されたという事情もあります。

 

【問2】

花粉症の原因は植物だが、歴史をたどれば人災であるとも言える。これまで、スギ花粉と同じようなパターンで引き起こされた社会規模での予想外のトラブルなどについて、どのような事例があったか考えてみよう。また、これから数十年後に、同様に社会規模でのトラブルを引き起こすかもしれない事例や、引き起こしつつあると考えられる事例があれば書いてみよう。


【解答例A】

(過去の事例)戦後の食糧難を打開するため、ブラックバスやアメリカザリガニ、ジャンボタニシ、ウシガエルなどが食用目的で海外から持ち込まれたが、それらの生物が持て余されて野生化し、日本固有の生態系を破壊したり、農業を阻害したりするようになっている。


【解答例B】

(将来の事例)エネルギー問題解決のため設置が推奨されてきた太陽光パネルであるが、その耐久性の弱さ、火災時の消火が困難である点などの問題が指摘されるようになってきている。今後は太陽光パネル付きの空き家が放置され、撤去費用や火災などの問題により、社会全体が不利益を被るかもしれない。


【Aの解説】

明治以降に人やモノの動きが活発になったことで、外来生物と在来種が混ざり合い、今日のような事態に至っています。2018年には、千葉県などが開催した環境イベントにて、カミツキガメを食材としたスープが振舞われ「おいしい」と話題になりました。他にも、北海道でかつては駆除対象でしかなかったウチダザリガニがレイクロブスターという名前で出荷され、今では人気食材となるなど、外来種を食べて減らそうという斬新な取り組みも見られるようになっています。


【Bの解説】

日本社会は、このままだと空き家が増加する見込みです。太陽光パネルによって引き起こされた火災は、消防隊員が感電するおそれがあり、消火が困難であることがわかっています。このペースで太陽光パネル付きの家が増えると、より危険な空き家の処理を未来世代に残すことになります。2023年現在、東京都は太陽光パネルの設置に助成金を払っていますが、設置や廃棄に伴う環境破壊も含め、慎重な計画が必要です。

 

【問3】

植林と花粉症の事例のように、ある時点で行われた組織的な活動が、未来世代に対して予想もつかない負の影響を及ぼす場合がある。問2で考えたこともふまえながら、何かある具体的な事柄をめぐり未来世代のためにどのような配慮をしていくべきか、あなたの考えを自由に書いてみよう。


【解答例】

現代では社会全体でデジタル化が推進され、教育現場でも活用が促されているが、そうした状況も背景として、中高生の多くがスマホ依存症に陥っていることが問題視されている。これに伴って、記憶力・集中力の低下や健忘など、「スマホ認知症」という症状が見られるという指摘も出ているようだ。集中力を要する人の作業によって支えられている社会が、そのような状況下で、将来的にどのように変わっていくのかを考えてみる必要がある。いずれ「スマホ依存症・認知症」が花粉症と同じような国民病となり、治療が広く行われるような未来が到来するかもしれない。教育現場に限らず、日常生活の様々な場面でスマホなどデジタル機器を活用せざるを得なくなっているという流れには、ある程度歯止めをかけておくべきなのではないだろうか。

【解説】

解答例ではスマホ依存の話題を出しましたが、こと生態系や大気の状態などが関わる問題をめぐっての人間の活動は、時間差で自らの首を絞める結果になることが少なくありません。例えば、「生態系」という概念は1970年代以降に登場しましたが、その概念によって示されている事柄は、本当はずっと前からそこにあったものです。科学技術が発達して、従来まで当たり前であった大切な何かが破壊されてしまってから、初めてそれが意識されるということもあります。20世紀以降、急速に発達した科学技術ですが、進み続けるだけが人類のためになるとは限りません。過去から学び、一歩立ち止まる、時には何歩か下がることも、人類のための勇気ある選択なのではないでしょうか。

 

B面の解答ポイント

問1について

( ① )にはスイスが入ります。スイスはヨーロッパの中部に位置し、アルプス山脈が通るため平均標高は約1300mと高いです。スイスはおよそ北緯47度の場所に位置し、カカオベルトには含まれずカカオ豆の生育に適した気候ではありませんが、カカオ豆をカカオベルトに含まれる国から輸入してチョコレートを生産しています。チョコレートなどを販売する多国籍企業のネスレはスイスのヴヴェに本社を置いています。
また、スイスのジュネーヴは世界保健機関(WHO)や国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)などの本部が置かれるなど、国際都市として知られています。

 

問2について

( ② )にはインドネシアが入ります。インドネシアは赤道付近に位置する島国で、スマトラ島、カリマンタン島などに赤道が通っています。インドネシアは2021年の人口が約2億7400万人と世界第4位の多さで、人口の8割以上がイスラーム教徒であることから、イスラーム教徒の数が世界最大です。
インドネシアの他にも、カカオ豆の生産量が多い国は北緯20度から南緯20度あたりの、「カカオベルト」と呼ばれる地域に集中しています。カカオ豆は平均気温が27℃以上、降水量が1000mm以上の高温多湿の気候で育つため、カカオベルトの気候はカカオ豆の生育に適しています。

 

問3について

インフォグラフィック(Infographic)とは、情報(Information)を図(Graphic)などを使って分かりやすく表現したものをいいます。データをまとめる際に、単に数字を羅列するのではなく、図やイラストなどを使うことによって、データを視覚的に分かりやすく伝える効果が期待できます。
ピクセルは「画素」ともいい、コンピュータで画像を表現する際の最小単位を指します。コンピュータはピクセルごとに色の情報を与え、それを縦横にいくつも並べることによって、画像を表現しています。
ビッグデータとは、名前の通り、様々な種類のデータで構成された巨大なデータの集まりを指します。ビッグデータに含まれるデータの中から必要なものを見つけ出して分析することで、新たな価値が生まれたり、今まで気づかれなかった情報が見つけ出されたりすることもあります。そのため、ビッグデータは今後さらに重要度が増していき、より活発に活用されていくことでしょう。
ユニバーサルデザインとは、年齢や性別、障害の有無などにかかわらず、すべての人にとって使いやすくなるようなデザインのことを指します。例えば、シャンプーとボディソープの容器には、側面にそれぞれ異なる形の突起が付いていますが、リンスやトリートメントの容器には付いていません。これによって、目の不自由な人でも触るだけでどの容器か判別できるようになっています。

 

問4について

各選択肢の正誤を調べるには、問題文中にあるどのデータを用いればよいのか、またそのデータは選択肢の正誤を調べるのに適切なものであるのかを考えましょう。
割合などを考える際には、電卓を用いて計算しても良いですが、統計データの大枠を素早く読み取れるようになるために、下のような大まかな計算や考察ができるようにしておくと良いでしょう。


ア:コートジボワールのカカオ豆生産量は図から212万トンであることが分かります。もし世界全体のカカオ豆生産量のうち、コートジボワールが占める割合が50%を超えているとしたら、世界全体のカカオ豆生産量は424万トン以下となります。
ところが「カカオ豆生産量の地域別割合」のグラフを見ると、アフリカと中南米におけるカカオ豆生産量だけでも455.21万トンとなっており、アジア・オセアニアを含めると、カカオ豆生産量はそれより多くなります。よってコートジボワールのカカオ豆生産量は世界全体の50%未満(実際には約44%)であることが分かります。
なお、アフリカ全体におけるコートジボワールのカカオ豆生産量の割合であれば約59%となり、コートジボワールが半数以上を占めます。


イ:「カカオ豆生産量の地域別割合」のグラフから、中南米全体のカカオ豆生産量は96.34万トンであることが分かり、これの30%は28.902万トンとなります。エクアドルのカカオ豆生産量は37万トンなので、中南米全体のカカオ豆生産量のうち、エクアドルが占める割合は30%を超えている(実際には約38.4%である)ことが分かります。


ウ:もし日本のカカオ豆の輸入量のうち90%以上がガーナから輸入されているならば、それ以外の国からの輸入量の合計は全体の10%以下となります。これは言い換えると、ガーナからの輸入量はガーナ以外からの輸入量の9倍以上となるはずです。
「日本のカカオ豆の主な輸入国」のグラフから、エクアドルとベネズエラからの輸入量の合計は6000トン以上であることが分かり、ガーナからの輸入量はその9倍である5.4万トン以上でなければなりません。ところが同じグラフから、ガーナからの輸入量は約3.9万トンであることが分かるため、矛盾します。したがって日本のカカオ豆の輸入量のうち、ガーナが占める割合は90%未満(実際には約79.4%)であることが分かります。


エ:左上のグラフは、「1人あたりの」年間のチョコ消費量を表しているため、「国内全体での」年間のチョコ消費量を求めるには、別途各国の人口を考慮する必要があります。そのためドイツの「1人あたりの」年間のチョコ消費量は、日本のおよそ4.18倍であることは正しいですが、このことから直ちに、ドイツの「国内全体での」年間のチョコ消費量が、日本の4.18倍であることは言えません。
実際、ドイツの人口は約8300万人、日本の人口は約1億2000万人であることを用いると、国内全体での年間のチョコ消費量はドイツが約76.4万トン、日本は約26.4万トンとなり、ドイツの国内全体での年間のチョコ消費量は、日本の約2.89倍となります。


以上の分析から、正しい記述はイであることが分かります。

 

問5について

各選択肢のグラフの特徴を見てみましょう。
折れ線グラフは、一つの項目について、その値の変化を時系列的に見るのに便利なグラフです。また、線の傾きによって変化の割合を直感的に把握するのにも便利です。
円グラフは、各項目について、全体に対する割合を見るのに便利なグラフです。
帯グラフは、円グラフと同様に各項目の全体に対する割合を見るのに便利なグラフです。円グラフに比べて、帯グラフは時系列順に並べやすく、各項目の割合の変化を把握しやすいというメリットもあります。
箱ひげ図は、ある項目の数値の最小値、第1四分位数、中央値、第3四分位数、最大値の五つの値(平均値を含めて六つとすることもある)について、箱と線分を組み合わせることで値を見やすくした図です。帯グラフと同様、並べることで値の比較や経年変化を把握しやすいというメリットがあります。
ヒストグラムは、各階級に含まれるデータの個数を棒状に積み上げることで、データの分布を見やすくしたグラフです。棒グラフと非常によく似ていますが、棒グラフはデータの個数(度数)を棒の高さで表現する一方で、ヒストグラムは度数を面積で表現するという点に違いがあります。

上記の特徴を踏まえて、Aさん、Bさん、Cさんが使うべきグラフを考えます。
Aさんはカカオ豆輸入量の「国別割合」の「推移」を調べたいと思っているので、割合の推移が簡単に読み取れる「帯グラフ」を並べて表すのが適しています。円グラフの場合、特定の年の国別割合は把握できますが、割合の推移を把握するのにはあまり向いていません。
Bさんは、ドイツとスイスの1人あたりの年間のチョコ「消費量」の「推移」を調べたいと思っているので、量の推移が簡単に読み取れる「折れ線グラフ」が適しています。円グラフや帯グラフの場合、全体に占める割合はすぐに把握できますが、量そのものの推移を読み取るのにはあまり適していません。
Cさんは47都道府県ごとのチョコ消費量の「最大値や四分位数」を一目でわかるようにしたいと思っているので、これらの値が箱やひげの位置で値をすぐに把握できる「箱ひげ図」で結果を表すのが最適です。ヒストグラムの場合、都道府県ごとのチョコ消費量の分布を把握することはできますが、最大値や四分位数の具体的な値を読み取るのには適していません。

 

 

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2024年3月1日号

A面「ワークシート」の解答ポイント

【問1】


下線部①「地震直後の混乱のなかでは、中高生も地域の助け合いの輪に進んで加わることが期待される」とあるが、具体的にどのような行動が期待されているのか。本文中にある例をいくつか挙げてみよう。


【解答例】

・避難所の運営を手伝うこと。

・「災害弱者」と呼ばれる人たちを支えること。

・物資の運搬を手伝うこと。

・炊き出しを手伝うこと。

・小さな子どもと遊びながら、見守ること。

【解説】

下線部①にあるとおり、災害時には中高生も地域の一員として地域のほかの人々と助け合うことが期待されます。つまり自分の命や生活を守るだけでなく、地域の人たちみんなの生活を支えたり、困っている人を助けたりするということです。解答には、避難所の運営に関わるなど避難所全体に貢献することや、忙しい保護者から小さな子どもを預かるなど周りの人を手助けするようなことが当てはまります。設問には「いくつか」とあるので、複数の例を本文から抜き出して書きましょう。

 

【問2】

下線部②「『災害弱者』と呼ばれる人たちには、特別な配慮も求められる」とあるが、どのような人にどのような配慮が必要か。避難所の運営者になったつもりで書いてみよう。


【解答例】

・簡易テントの設営が困難な高齢者に、代わりに設営してくれる人を紹介する仕組みを作る。

・日本語に不慣れな外国人のために、避難所の看板などに英語を併記する。

・妊娠している人の名簿を作り、体調が変化した時にすぐに診療が受けられるように医師への連絡手段を確保しておく。

・障害などがあって歩行が困難な人が、炊き出しなどの列に並ばずに配給を受けられる仕組みを作る。

【解説】

まずは「災害弱者」とはどのような人か確認すると、下線部②にあるとおり災害時に特別な配慮が求められる人のことです。具体的には、下線部②の直前に「高齢者」「小さな子ども」「外国人」などが挙げられています。また次の段落には、避難所運営の訓練で「外国人」や「妊婦」の避難者の役があり、この人たちも災害時に特別な配慮を要する人々だと考えられます。もちろん、障害のある人など、本文では触れられていない「災害弱者」と思われる人もいるので、その人たちに着目しても構いません。
次に、このような「災害弱者」と呼ばれる人々が、それぞれどのような困難を抱えているのか、考えてみましょう。例えば「高齢者」なら重い物を扱う作業に不安がある、「外国人」なら日本語の看板が読みにくい、などです。ただし高齢者でも作業が得意な人や、外国人でも日本語が堪能な人などもいるので、「重い物を扱う作業に不安のある高齢者」などのように補足するのもよいでしょう。
最後に、そうした困難を抱える人たちへの配慮の仕方を考えましょう。ポイントは設問の「避難所の運営者になったつもりで」という点です。例えば、あなたの目の前に、重い物を扱う作業に不安のある高齢者がいるとき、その人の代わりに簡易テントを設営してあげることも、大切な配慮です。しかし、同じように作業に不安のある高齢者は避難所にたくさんいると思われます。もしあなたが避難所の運営者という立場であれば、テントを設営できる人をあなた以外にも複数確保して、手伝いが必要な人に斡旋する仕組みを作ることで、より多くの人を助けることもできるのです。このように、避難所の仕組み自体を改善して「災害弱者」と呼ばれる人たちに配慮するような内容を書けるとよいでしょう。

 

【問3】

災害時の避難所で、あなたはどのような行動ができるだろうか。地域の一員として、周りの人を支える視点から具体的に書いてみよう。また、そのような行動をとるためにどのような備えをしておきたいか、書いてみよう。


【解答例1】

けが人を運ぶなど、避難所の運営を手伝いたい。けが人の手当ての仕方を練習したり、避難所を運営する訓練をしてその仕組みを学んだりしておきたい。。

【解答例2】
英語が得意なので、日本語に不慣れな外国人に通訳をしたい。また、必要があれば避難所の運営者に看板などへの英語の併記を提案したい。備えとして、災害時に必要な英語表現を勉強しておきたい。

【解答例3】
小さな子どもと遊ぶことで、保護者から一時的に預かり、保護者が手続きなど様々な用事を進めやすいようにしたい。普段から近所の子どもや保護者と挨拶を交わし信頼を得られるようにしておきたい。

【解説】

自分が避難所でどのような役割を果たせるかを考える問題です。
一つには、問2で見たような、避難所の運営側として活動することが挙げられます。けが人の救護や物資の運搬、炊き出しなど仕事の手伝いが主な例となります。なお、問2では避難所の運営の中核を担うつもりで考えましたが、実際の災害時には大人が中心になります。中高生が運営のあり方に関わる場合は、大人に意見を伝える形になると思われるので、このこともおさえておきましょう。
このような活動をスムーズに行うには、けがの手当てや料理などの実技に加えて、避難所運営の訓練などを通して、避難所の仕組みを理解しておくことなども有益となるでしょう。
また、避難所の運営側としてというよりは、避難者同士としての活動を挙げても構いません。問2の設問には「避難所の運営者になったつもりで」と指定があったため、運営者としての活動について述べる必要がありましたが、問3にはその指定がないためです。例えば目の前の外国人に通訳をしたり、小さな子どものいる保護者から一時的に子どもを預かり見守ったりする活動が考えられます。こちらは避難所の仕事を手伝うことほど多くの人々を助けるわけではないかもしれませんが、多様な事情を抱えた人々が集まってくる避難所では、それぞれの事情に合わせた細やかな助け合いも不可欠です。
臨機応変に活動することになるため、備えの仕方も多岐にわたります。また、こうした活動から避難所の改善点が見えてくれば、避難所運営側へ提案することもありうるでしょう。
ただし、個人の力には限界があることは意識しておきましょう。例えば自分の家の災害用食料を周りの人に配ることなどは、個人が食料を大量に用意することはできないため、一時的な助けとなってしまいます。大がかりな活動は組織的な力をもつ避難所側に任せ、それでは行き届かない細やかな部分をケアすることが、個人同士で助け合う場合に大切な視点だといえます。

 

B面の解答ポイント

【問題1】の問1について

阪神・淡路大震災を引き起こした兵庫県南部地震は1995年1月に発生した「内陸型」の地震で、最大震度7を記録しました。なお、「震災」は地震によって発生した津波や液状化現象、建物の倒壊、ライフラインの寸断といった災害全般を指す言葉であり、「阪神・淡路大震災」は「兵庫県南部地震」によって起きた被害全般を指す言葉です。
多くの人口を抱える阪神地域の直下の断層のずれによる地震であったため、阪神・淡路大震災は6,000人を超える死者、40,000人を超える負傷者を出し、住宅も全壊・半壊を合わせて200,000棟以上の被害が出るなど、甚大な被害をもたらしました。

 

【問題1】の問2について

②-aは太平洋、②-bはユーラシアです。日本は4つのプレートが接する境界に位置し、その4つの内訳は、海側のプレート(海洋プレート)は太平洋プレートとフィリピン海プレートの2つ、陸側のプレート(大陸プレート)は北米プレート(北アメリカプレート)とユーラシアプレートの2つです。日本は複数のプレートの境界付近に位置するため、地震が多く発生します。

 

【問題1】の問3について

③-aは海側、③-bは陸側、③-cは陸側です。海洋プレートと大陸プレートが衝突したときには、重い海洋プレートが軽い大陸プレートの下に沈んでいきます。このとき、海洋プレートは大陸プレートを引っ張るため、年月が経つにつれてひずみが溜まっていきます。ひずみが限界に達すると、大陸プレートが反発して地震を引き起こします。
なお、海洋プレートが大陸プレートの下に沈んでいくことによってできる深い溝のことを海溝といい、上のメカニズムで発生する地震のことを「海溝型地震」といいます。

 

【問題1】の問4について

④-aは「小さいが」、④-bは「浅い」です。内陸型の地震は活断層の動きによるもの、海溝型の地震はプレートの動きによるものであり、一般的に内陸型の地震の方が海溝型の地震より地震の規模(マグニチュードで表される)は小さくなります。しかし、震源に関しては内陸型の地震の方が一般的に浅く、震源が浅いと震源から地上までの距離が近くなるため、震源地付近では揺れ(震度で表される)は大きくなります。
以上のメカニズムを考えると、海溝型地震では被害地域の範囲が広くなること、内陸型地震では被害地域の範囲は狭いものの、震源地付近では極めて大きな揺れが生じ、被災地は被害が大きくなることが分かります。

 

【問題2】の問1について

正解は大西洋です。
NATOは北大西洋条約機構(North Atlantic Treaty Organization)で、アメリカ合衆国とイギリス、フランスなど西ヨーロッパ諸国が、旧ソ連など東ヨーロッパ諸国に対する集団防衛機構として1949年に結成されました。本部はベルギーのブリュッセルです。

 

【問題2】の問2について

正解は東西冷戦(冷戦,冷たい戦争)です。
第2次世界大戦で連合国だったアメリカ合衆国とソビエト連邦(ソ連)は大戦後対立を深め、直接戦火を交えることはなかったことから東西冷戦(冷戦,冷たい戦争)と呼ばれ、西ヨーロッパ諸国の自由主義陣営、ソビエト連邦を中心とする東ヨーロッパ諸国の社会主義陣営に分かれ対立が続きました。1980年代後半から対立が和らぎ、1989年、アメリカ合衆国のブッシュ大統領とソ連のゴルバチョフ書記長によるマルタ会談で冷戦の終結が宣言されました。それと前後して東ヨーロッパ諸国で社会主義政権が崩壊、1991年にソビエト連邦が解体されると、東ヨーロッパ諸国の北大西洋条約機構への加盟が始まりました。

 

【問題2】の問3について

正解は③がスウェーデン、④がフィンランドです。
 スウェーデン、フィンランドはともに北ヨーロッパのスカンディナビア半島に位置する国です。ロシアと国境を接するフィンランドは、第1次世界大戦以前はロシアに支配され、1917年にロシアから独立した歴史があるため、2022年2月、ロシアが隣国ウクライナへの侵攻を始めると、第2次世界大戦後の東西冷戦下から中立だった政策を変更し、NATOへの加盟を申請し、2023年4月、31番目の加盟国となりました。またフィンランドの隣のスウェーデンは第2次世界大戦中から中立でしたが、政策を転換しNATOへの加盟を申請,2024年2月,NATO32番目の加盟国となることが確定しました。

 

【問題2】の問4について

正解はCのトルコです。
トルコは地理的にアジアに位置しますが、ヨーロッパに隣接し1952年、ギリシャとともにNATOに加盟しました。AのイラクとBのイランは西アジアの国でNATOには加盟していません。Dのルーマニアは黒海に面した東ヨーロッパの国で、2004年、NATOに加盟しました。

 

 

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2024年2月2日号

A面「ワークシート」の解答ポイント

【問1】


資料1を読み、①「アップサイクル」とはどのような考え方のことか、②「アップサイクル」製品に求められていることは何か、それぞれ挙げてみよう。


【解答例】

① 「アップサイクル」とは、役割を終えて使われなくなり、本来であれば捨てられてしまうものを、“新たな価値”を持つ別の製品に生まれ変わらせること。

② 「アップサイクル」製品に求められていることは、高い品質やデザイン性である。

【解説】

 ① 「アップサイクル」という言葉は、1990年代半ば頃のドイツで初めて使われたとされており、日本では2000年代以降、「アップサイクル」に取り組む企業が見られるようになりました。「アップサイクル」が注目されている背景には、SDGs(持続可能な開発目標)の採択や、国による循環経済(サーキュラーエコノミー)への移行の呼び掛けなどがあります。なお、「アップサイクル」という言葉には、よりよいものを生み出すという意味も込められており、SDGsの目標の中では12番の「つくる責任 つかう責任」などに当てはまります。

② 「アップサイクル」製品に高い品質やデザイン性が求められる理由としては、より多くの人に、「これなら購入してもよい」と思われるような付加価値を感じてもらうためです。ほかにも、消費者に感動を与え、共感を呼ぶストーリー性も重要であると言えます。

 

【問2】

資料2を読み、9割の人が新品と同額以上で購入する意思を示した理由は何か、考えてみよう。


【解答例】

環境問題に対する消費者の意識が高まり、「自分も(環境問題の)対策に貢献できている」と感じることができるため。また、製品の品質は落ちていないと判断されたため。

【解説】

環境問題に対する意識の高まりが、「アップサイクル」製品の需要を拡大させていると言うことができるでしょう。そのデータをアンケート調査結果に見ることができます。こうした意識の高まりに加え、高い品質やデザイン性を兼ね備えた製品の画像を見ると、さらに「買いたい」という気持ちを強めることになるでしょう。結果として、新品と同額以上でも購入したいというアンケート調査結果につながっていると考えることができます。

 

【問3】

日本国内でも「アップサイクル」事業に取り組む企業があるが、まだ実験的であり、成功例も少ない。今後の日本国内で「アップサイクル」が浸透し広がっていくために、どのような「アップサイクル」製品を作れば良いだろうか。当事者として、アイデアを出してみよう。


【解答例】

・骨が折れて使えなくなったビニール傘のビニール部分を、防水性の高いバッグや防水カバーに「アップサイクル」する。

・廃材と牛乳瓶を組み合わせて、花瓶やペン立てに「アップサイクル」する。

・捨ててしまいがちな野菜や果物の茎や芯を、チップなどのお菓子に「アップサイクル」する。

など

【解説】

役割を終えて使われなくなり、本来であれば捨てられてしまうはずだったものを、“新たな価値”を持つ別の製品に生まれ変わらせる、それが「アップサイクル」です。【解答例】に挙げたものは、皆さんの日常でよく目にするであろうものを「アップサイクル」製品に生まれ変わらせる例として挙げました。
ほかにも、読売中高生新聞2023年12月8日号に、札幌市内の高校に通うサッカー部の生徒たちの取り組みが掲載されています。これは、古着をボールバッグに「アップサイクル」し、地域の子どもたちにプレゼントする、というものです。この高校生たちは地元の企業にボールバッグ製作の協力を依頼し、クラウドファンディングを実施、さらにサッカーJ1の北海道コンサドーレ札幌にも協力を呼び掛けました。すると、選手たちがバッグ一つひとつにサインを書いてくれたそうです。
このように、中学生・高校生であっても、「アップサイクル」製品のアイデアを考えて、それを形にすることは決して不可能ではないのです。環境問題への対策を考える上でも、ぜひ「アップサイクル」製品のアイデアを考えてみてはどうでしょうか。

 

B面の解答ポイント

【問題1】の問1について

1950年代後半からの高度経済成長を背景に人々の所得は増加し、それに伴って高額な耐久消費財が次々と普及していきました。中でも白黒テレビ・電気洗濯機・電気冷蔵庫は、日本の皇位継承の象徴とされる3つの宝物にちなんで「三種の神器」と総称されました。その後、1960年代後半には、自動車(Car)・カラーテレビ(Color television)・クーラー(Cooler)が新たな耐久消費財普及の中心となり、それぞれの英語の頭文字をとって「3C」と総称されました。

 

【問題1】の問2について

年功序列とは、勤続年数や年齢が増すに従って役職や賃金が上がる人事制度及び慣習のことです。高度経済成長期にはこの年功序列制度や、正規従業員を原則定年まで雇用する終身雇用制度、そして労使(労働者と使用者)の協調を特徴とする日本独自の経営方式が定着しました。しかし、近年では転職率の増加などによって、その経営方式に変化も生じてきていると言われています。

 

【問題1】の問3について

NISAは「少額投資非課税制度」の通称(Nippon Individual Savings Accountの略)で、イギリスのISA(個人貯蓄口座)を参考に、家計の安定的な資産形成の支援や成長資金の供給を目的として2014年1月に導入されました。株式や投資信託などの金融商品に投資をした場合、これらから得た利益に対して通常は一定の税金がかかります。しかし、NISA専用の口座で投資した金融商品から得られる利益は、年間の投資上限額はあるものの非課税となることから、年々利用者数が増加しています。
政府は家計の安定的な資産形成をさらに推進するため、NISA制度の抜本的な拡充や恒久化をはかり、2024年1月には旧NISA制度よりも大幅に拡充された新しいNISA制度(新NISA)が開始されました。

 

【問題1】の問4について

日本の名目GDP(国内総生産)はアメリカに次ぐ世界2位を長らく維持してきましたが、2010年に中国に追い抜かれて3位になりました。そして、2023年10月に国際通貨基金(IMF)が発表した見通しによると、2023年にはドイツが3位となり、日本は4位に下がると考えられています。なお、5位はインド、6位はイギリスとなっています。
ドイツに追い抜かれる見込みとなったのは、円安の影響やドイツの高い物価上昇が主な要因とされていますが、日本経済の長期的な低迷の表れとの指摘もあります。

 

【問題2】の問1について

JAXA(ジャクサ)は宇宙航空研究開発機構の英語名称であるJapan Aerospace Exploration Agencyの略称です。2003年に宇宙科学研究所(ISAS)・航空宇宙技術研究所(NAL)・宇宙開発事業団(NASDA)の3機関が統合して発足しました。「宇宙と空を活かし、安全で豊かな社会を実現する」との経営理念を掲げ、日本の宇宙開発利用を技術で支える中核的実施機関と位置付けられています。

 

【問題2】の問2について

リュウグウ(Ryugu)は1999年に発見された小惑星で、2015年に名称を公募してその名が選定されました。選定理由としては、浦島太郎が竜宮城から玉手箱を持ち帰ることと探査機「はやぶさ2」が小惑星のサンプルが入ったカプセルを持ち帰ることが重なったため、などとされています。2022年には「はやぶさ2」がリュウグウから持ち帰った砂や石から23種類のアミノ酸が見つかり、そのうち生物のたんぱく質をつくるアミノ酸が10種類近くも含まれていることがわかりました。
ちなみに、探査機「はやぶさ」(初代)は2005年に小惑星イトカワの探査を行い、2010年に地球に帰還しました。様々なトラブルに見舞われながらも帰還を果たしたことは人々の感動を呼び、「はやぶさ」を題材とした映画などの作品も作られました。

 

【問題2】の問3について

種子島は鹿児島県に属する島です。1543年(1542年説もあり)に中国船がこの種子島に漂着し、乗船していたポルトガル人が鉄砲(火縄銃)を伝えると、その後戦国大名の間に急速に普及して戦術のあり方や城の構造に変化をもたらしました。
現在、種子島には総面積約970万㎡にも及ぶ日本最大のロケット発射場である種子島宇宙センターがあります。2014年には「はやぶさ2」、そして2023年には月面探査機「SLIM」が、この種子島宇宙センターから打ち上げられました。

 

【問題2】の問4について

アメリカの民間会社「スペースX」の創業者で、SNS大手「ツイッター」を買収した実業家はイーロン・マスク氏です。「スペースX」は、2002年に創業されたアメリカの宇宙開発会社です。2020年にこの「スペースX」の開発した有人宇宙船の打ち上げが成功したことは、当時世界で大きな話題となりました。またイーロン・マスク氏については、2022年10月に「ツイッター」を買収したことでも有名です。「ツイッター」はその後、2023年にサービス名が「X」に変更されました。
ちなみに、ジェフ・ベゾス氏はアマゾン・ドット・コムの創業者、ビル・ゲイツ氏はマイクロソフトの創業者、マーク・ザッカーバーグ氏はメタ(旧・フェイスブック)の創業者です。

 

 

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2024年1月5日号

A面「ワークシート」の解答ポイント

【問1】


日本の家庭において「和食離れ」が進んでいる原因としてどのようなことが挙げられるか。資料から読み取り、説明してみよう。


【解答例】

・日本でも欧米流の食生活が普及したから。

・和食は手間がかかるから。

・年中行事などで伝統的な和食を家族や親戚と食べる機会が減っているから。

【解説】

「日本人の和食離れ」については【資料1】で触れられているので、それをもとに考えてみるといいでしょう。
例えば、現在、日本の食生活は欧米流が主になり、米や魚よりも肉やパンを好むようになったということが挙げられるでしょう。外にも、忙しい毎日のなかで、手間のかかる和食を用意することが敬遠されていることや、おせち料理や地域の伝統料理など、和食と深く結びついている年中行事もなかなか行われなくなり、家族や親戚が集まって食卓を囲む機会が減っていることも原因の一つとして挙げられます。

 

【問2】

日本のだしを世界に広めようと考えたときに問題となりうることにはどのようなことがあるか。資料から読み取り、説明してみよう。


【解答例】

・出汁の取り方に関する考え方が違うため、ただそのまま紹介するだけでは、味を再現できないということ。

・世界の多くの地域で利用されている「硬水」では、ミネラル等の成分が邪魔をしてうまく出汁がとれないため、「軟水」を用いなければならないこと。

【解説】

海外の多くの国々と日本で出汁の取り方に違いがあるということは【資料2】で触れられています。フランス料理の「ブイヨン」や中華料理の「湯」は長時間煮込むのに対し、日本の出汁は昆布やかつお節、煮干しなどを短時間煮て作られます。
また、それらの違いの主な理由として、調理に使う水の違いが説明されています。ミネラル分を多く含む「硬水」が主流の諸外国に対し、ミネラル分の少ない「軟水」を主に利用している日本では、昆布などのうま味成分が抽出しやすく、出汁の文化が根付いたのだと考えられます。
つまり、日本の出汁を世界に広めようとする場合、このような調理の方法や水の違いについて理解したうえで説明をしていかなくてはならないということになるでしょう。単に日本の方式を伝えるだけでは、出汁の良さを十分に伝えることはできないと考えられます。

 

【問3】

あなたが世界に向けて紹介したいと思う日本の文化を一つ挙げ、紹介する際に注意すべきことを考えてみよう。


【解答例】

・私が世界に向けて発信したいと考える日本の文化は、寺社仏閣などの伝統的な建物だ。これらは長い歴史を持ち海外からの人気も高いが、禁止されているところで動画を撮影するなど外国人観光客のマナーの悪さが問題になっている。そのため、複数の言語に対応した注意書きを用意するなどの対応が必要になるだろう。

・私が世界に向けて発信したいと考える日本の文化は、アニメやゲーム、漫画といったサブカルチャーである。すでに日本の漫画が海外で流行した事例もあるが、国によってはピースサインが侮辱の意味を表すなど、日常の習慣や物の捉え方の違いから、日本では当たり前に受け入れられているものが海外では問題になることもある。そのため紹介するものを厳選したり、解説をつけたりする必要もあるのではないかと考える。

・私が世界に向けて発信したいと考える日本の文化は茶道である。おもてなしの精神や、わびさびといった日本独自の考え方を海外に広めるいい機会になると考えるが、細かい作法は日本人でも知らない人が多く、海外の人にも理解しやすいように説明の方法を模索する必要があると思われる。また、正座をする習慣がなく、長時間続けることが難しい人のためにルールを緩和できないか検討していくことも有効だと考える。

【解説】

紹介してみたい日本の文化と、それを紹介する際の注意点について述べる問題です。みなさんは「日本の文化」と聞いてどのようなものを思い浮かべたでしょうか。今回は解答例で挙げた三つを軸に考えてみましょう。
まずは、和食と同様に伝統的な日本文化が考えられるでしょう。解答例で挙げた寺社仏閣などの建物はその代表的なものだといえます。実際、海外からの観光客は行きたい場所として京都を挙げることが多いといわれています。しかし、これらの建物は築1000年以上のものも多く、扱いには十分な配慮が必要です。このような伝統的な日本文化としては、他に着物などが考えられます。
そして、日本の文化といえるものは、何も古いものばかりではありません。アニメやゲーム、漫画といったサブカルチャーも世界に向けて発信しうる日本の文化といえるでしょう。しかし、作者は基本的に日本で暮らしている人なので、日本の生活習慣や考え方に基づいてこれらを作成していることになります。そのため、海外の人が読んだときに意図がうまく伝わりにくい場合もあるでしょう。このような問題を避けるためには、海外向けに翻訳する際の表現について吟味したり、ときには解説を添えたりして、理解しやすいように配慮する必要があると考えられます。
もう少し細かいくくりで考えてみるのもいいでしょう。今回はその例として「茶道」を挙げました。茶道もまた、古くから続く伝統的なものであり、客人をもてなす心やわびさびといった独自の考え方をもつものです。しかし、実際に海外に広めることを考えると、作法の難しさ等が問題になってくるでしょう。異なる言語を母語とする人たちにどのように伝えればよいのか模索していく必要があります。また文化の違いでいえば、基本的に椅子に座る生活をしている人が長時間正座をすることは難しいのではないかということ等が挙げられます。
以上のように、海外に向けて日本の文化を紹介するときには、環境や言語、考え方が異なることを理解したうえで対策を考える必要があるでしょう。また、【問3】では最初に自分で考えた「紹介したい日本の文化」を挙げる必要があったので、ここで悩んでしまった、答えが考えられなかったという人もいるかと思います。小論文では、ときに日ごろから様々な情報に対してアンテナを張り巡らせることができているかということが問われる場合があります。その際は、新聞を読んだり、気になったことは調べたりといった日々の積み重ねが皆さんの力になります。日ごろから意識してみるとよいでしょう。

 

B面の解答ポイント

【問題1】の問1について

邪馬台国は、 30ほどの小国を統一した連合国家で、身分秩序や租税、刑罰の制度も整っており、その国の女王として巫女である卑弥呼が治めていたとされています。「魏志倭人伝」の記録には、長い間国内で戦乱が続いていたので、諸国が共同して卑弥呼を王として立てたところ、ようやく収まったとあります。そして、卑弥呼は239年に中国(魏)の皇帝に使いを送り、「親魏倭王」の称号と金印などを授かり、その権威を背景に支配力を強めました。3世紀半ばの卑弥呼の死後、男の王が跡目を継いだものの倭国が治まることはなく、壱与という卑弥呼の一族の女子を王とすることによって再び国が治まったと「魏志倭人伝」には記載されています。なお、邪馬台国の場所についてはいまだ不明で、九州北部にあったとする九州説と近畿地方の大和(奈良県)にあったとする畿内説とで古くから議論されています。

 

【問題1】の問2について

日本では701年の大宝律令の完成によって天皇を頂点とする中央集権国家が整い、「日本」という国号もこの頃に正式に用いられるようになりますが、その際に日本が模範としたのが中国王朝の唐です。618年に隋を滅ぼし中国を統一した唐は、律令(律は刑罰に関する法、令は役所の組織・職務や税制など政治に関する法)を定めて人民の名前や性別などを戸籍に登録し、それに基づいて人民に田を与え、税や兵役の負担を課すという中央集権国家を形成しました。また、都の長安は人口約100万人の世界的な都市で、国際的な文化が発展し、日本もその政治制度や文化を取り入れようと遣唐使が8世紀にはおよそ20年に1度の割合で派遣され、日本に多大な影響を与えました。

 

【問題1】の問3について

消費税は1989年に大型間接税として導入され、その当時は一律3%でした。その後、1997年に5%、2014年に8%、そして2019年に10%(一部8%)と徐々にその税率は高くなってきています。消費税が導入されたのは、本格的に到来する少子高齢化社会において、働いている世代だけでなく全ての人々で社会を支えることができる税の体系を構築し、社会保障などの公的なサービスの費用をまかなうための安定的な歳入を確保することなどを目的としたことにありました。ただし、消費税の是非については現在も議論されています。例えば、消費税は個人の所得に関わりなく同じ割合で税金を負担しなければならず、所得の少ない人ほど税負担の割合が高くなるという特徴があるため(このことを逆進性といいます)、不公平であるといった意見などもあります。

 

【問題1】の問4について

軽減税率は、2019年の消費税10%の引き上げと同時に導入されました。高所得者よりも低所得者層が重い税負担を強いられるという逆進性の対策として、飲食料品や新聞に対して税率を8%のまま据え置くという制度となっています。軽減税率制度は低所得者への対策とされていますが、対象品目の基準が明確であるのかというのはいまだに議論の対象となっています。例えば、甘酒、アルコール分1%未満のみりん風調味料やノンアルコールビールは飲食料品として軽減税率の対象となっているのに対し、通常のみりんや調理酒などは飲食料品とはみなされていないため、その対象ではありません。また、週2回以上発行される、定期購読されている新聞はその対象となっているのに対し、コンビニなどで販売されている新聞はその対象ではなく、そもそもなぜ新聞だけが対象なのかという疑問も出されています。軽減税率の境界線はかなり曖昧で、この制度が続く限り今後も議論の対象となっていくでしょう。

 

【問題2】の問1について

『罪と罰』は、自身の思想に基づいて老婆を殺害した青年ラスコーリニコフが、犯した罪に苦悩する姿を描いた小説です。この小説を書いたドストエフスキーは、19世紀のロシアを代表する作家として知られ、その他の代表作に『カラマーゾフの兄弟』があります。
1866年に出版された『罪と罰』は、これまでに何度も映画化や舞台化、漫画化などがなされており、手塚治虫も1953年に『罪と罰』を漫画化しています。なお、手塚治虫はそれ以外にも、ゲーテの戯曲『ファウスト』や、シェイクスピアの戯曲『ヴェニスの商人』なども漫画化しています。

 

【問題2】の問2について

AIは、「人工知能」を意味する英単語「Artificial Intelligence」の頭文字を取った略語で、人工知能を意味する言葉として広く使われています。
人工知能(AI)とは、事前にインプットされたデータや、センサーなどを通して得られたデータをもとに、コンピュータが自ら推論し、問題解決や意思決定を行うことをいいます。これは、私たちが今までに覚えてきたことや、日頃見聞きしたことを基に、特定の問題に対して自分の頭で考え、答えを導き出すことと似ています。
今回の『ブラック・ジャック』最新話制作プロジェクトでも、人間が提示したいくつかの単語や質問を基に、AIがストーリーのプロットやキャラクターデザインを提案するという形で、AIが大きな役割を果たしました。

 

【問題2】の問3について

設問にある通り、「拡張子」とは、保存されているファイルがどういう種類のデータなのかを示すために付けられる文字列のことです。たとえば「example.txt」と書かれているファイルの場合、末尾の「.txt」が拡張子です。
一つの種類のデータでも、拡張子はいくつかの種類があり、それぞれ圧縮率の良さや、元のデータに復元できる度合いといった点に違いがあります。

ア  「.txt」はテキストデータによく使われる拡張子です。

イ  「.mpeg」は動画データに使われる拡張子で、一般に画像データには使われません。画像データとして使われる拡張子には「.jpeg(.jpg)」「.bmp」「.png」などがあります。

ウ  「.mp3」は音声データによく使われる拡張子です。音声データとして使われる拡張子にはほかにも「.aac」「.flac」などがあります。

エ  「.avi」は動画データによく使われる拡張子です。動画データとしては、ほかにも「.mp4」や、選択肢イでも登場した「.mpeg」などがよく使われています。

 

【問題2】の問4について

AIに画像を学習させることにより、その画像の作風などを踏まえた新しいイラストを生み出すことができます。今回の『ブラック・ジャック』最新話制作プロジェクトでもその技術は利用され、故人の作風を蘇らせて新たな作品を生み出しました。
これと同様にして、人物の画像や声、動きなどをAIに学習させ、これを既存の動画と合成させることによって新たな映像を生み出す技術も開発されてきました。このようにして生成された画像や映像は「ディープフェイク(deep fake)」と呼ばれ、本来は映画などのエンタメの場を想定して開発・利用がされてきました。
しかし中には、生成された画像・映像があまりにも精巧であるため、実在の人物や出来事であると誤解してしまうようなものを生成し、悪用する事例も出てくるようになりました。ディープフェイクによって引き起こされた問題として、実際には発言していない内容を政治家がさも発言しているかのような動画が出回った、検索サイトでヒットした生き物の画像のほとんどがAIによって作られた偽の画像であったなどの事例があります。
AIに限らずあらゆる技術について言えることですが、技術がもたらす影響には良い点と同時に悪い点もあります。そして悪い点というのは、必ずしも意図的な悪用によってのみ生じるものではなく、技術を万全万能なものと過信し、漫然と使ってしまうことによっても生じることがあります。新しい科学技術に対して、私たちは、その技術のメリット・デメリット双方を理解し、その技術を利活用することが求められることになります。

 

 

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