2018年度実施「大学入学共通テスト」試行調査(プレテスト)分析
(国語)

2018.11.28

2018年度実施「大学入学共通テスト」試行調査で出題された問題について、各科目ごと、出題における特徴的な点、設問ごとの分析などを公開しています。

プレテスト分析 国語

 

試験概要

配点 200点+記述式の評価
試験時間 100分

 

出題における特徴的な点(2017年度実施の試行調査との比較)

  • 第1問では従来の日常的、実用的文章からの出題が、評論(文化論)の出題へと変化した。

  • 第2問では実用的な観点から著作権がテーマとして取り上げられており、著作権法の条文の読解が求められている。

  • 第3問では従来の小説からの出題が、詩とエッセイの出題へと変化した。本文量は大幅に減少している。

  • 第4問では従来の傾向を踏まえつつ、最後の会話形式の設問で和歌に絡めて本文を深く読み取らせる工夫がなされている。

  • 第5問では漢文読解が中心の設問に変化したほか、2つの文章から構成され、また設問に生徒間の会話が付加された。

 

第1問 (現代文・記述)

本文は、人間特有の「指差し」行為のもつ意味を明らかにした二つの文章(文章Ⅰ=鈴木光太郎「ヒトの心はどう進化したのか」、文章Ⅱ=正高信夫「子どもはことばをからだで覚える」)である。
設問は、傍線部説明問題(問1・30字)、二つの文章を関連づけ、具体的な本文表現の一般化を求める問題(問2・40字)、「資料」の文章(川添愛「自動人形の城」)にもとづき、文章Ⅰ、Ⅱと関連づけて傍線部の理由を説明させる問題(問3・80〜120字)の三題構成である。
本文は日常性と関連づけられた文化論であり、従来のセンター試験(評論)の世界に近づいた印象。
問1と問2は何を書くべきか明らかであり、的確な要約力、一般化能力があれば対処できる。
それに比べて問3は解答をまとめるのにやや苦労する。とくに正答の条件⑤についてはさまざまな表現が可能であり、自己採点が的確に行われるかどうか、やや微妙である。

 

第2問 (現代文・評論)

本文は、著作権に関するポスター(資料Ⅰ)、著作権法の一部(資料Ⅱ)、著作権に関する文章(文章=名和小太郎「著作権2.0 ウェブ時代の文化発展をめざして」)の三種類のテキストから成る。
設問は漢字(小問5)、具体例を選ばせる問題(問2)、本文の内容判定問題(問3)、「文章」中の表の解釈問題(問4)、「文章」の表現に関する問題(問5)、資料Ⅰの空欄補充問題(問6)。
複数の資料を関連づける力、法律文および説明文の読解力、および表現に関する理解力が問われている。
著作権のやや煩瑣な説明も見られ、一部に難度の高い問題も含まれている。

 

第3問 (現代文・詩とエッセイ)

本文は吉原幸子の詩(「紙」)とエッセイ(「永遠の百合」)。
語句の意味を問う問題(問1)、詩の表現の説明問題(問2)、エッセイの説明問題(問3〜問5)、詩とエッセイの表現に関する問題(問6)。
従来の小説からの出題に変え、詩とエッセイという新たなジャンルからの出題となった。
本文の量は詩とエッセイを合わせて2ページ程度と、従来よりも大幅に減少した。おそらくは時間的な余裕をもたせるための配慮と思われる。
選択肢も短いものが多く、従来のセンター試験よりも短時間で解くことが可能になった。設問は標準的なものが大半である。

 

第4問 (古文)

本文は『源氏物語』「手習」巻(2007年広島大学で出題されていた箇所と一部重なっている)。
設問は傍線部説明問題(問1、4)、語釈問題(問2─小問3)、内容合致問題(問3)、複数の文章を用いた会話形式の問題(問5)。
問1~4までは『源氏物語』本文の読解が問われており、前回の試行調査よりも従来のセンター試験の傾向を引き継いだ形になっている。
最後の問5においては、傍線部に関連する教師と生徒の会話文や『遍昭集』の引用文(和歌を含む)を踏まえて、生徒の解釈の中から正しいものを2つ選ぶ形式が特徴的である。
前回の試行調査よりも本文の文章量を減らすなどして読解の負担は配慮されているが、和歌の解釈や複数の文章から必要な情報を抜き出して判断する力は今回も継続して求められており、解答する上で苦労すると思われる。

 

第5問 (漢文)

本文は文章Ⅰで朝三暮四の典拠(『荘子』)の現代語訳が、文章Ⅱでその派生作品(『郁離子』所収)が出された。
文章Ⅱは1984年度の共通1次試験(追試験)と同文で、文字数は現行センター試験より若干少ない。
漢字の意味(問1─小問2)、返り点・送り仮名と書き下し文(問2)、書き下し文と解釈(問3)、解釈(問4)、文章ⅠとⅡをめぐる生徒の会話(問5─小問3)。
主に設問の前半で漢文訓読(訓点・語彙など)の技能が、後半で内容理解(故事成語の意味を含む)が問われ、知識と内容理解とがバランスよく配されている。
設問の難易度は高くないが、漢文訓読の慣れや比喩表現の理解等、単なる暗記では対応しづらい言語の運用が必要となっている。

 

対策としてどのような学習が効果的か

現代文については、従来から求められている評論文の読解力に加えて、複数のテキストを関連づけて理解する能力、本文内容を簡潔に要約する表現力、本文の理由を説明する論理的な思考力・表現力が求められている。
第3問では、従来の小説ではなく、詩とエッセイからの出題となっており、より広いジャンルの文章に日頃から目を通しておく必要がある。

古文については、従来と変わらず古語や古典文法、古典常識などの基本的な知識習得がまず求められる。
その上で複数のテキストや設問意図などを素早く読み取れるように、様々な形式の問題に触れておきたい。
前回の試行調査に続いて和歌が出題されており、とりわけ和歌に関する理解を深めておく必要がある。

漢文については、これまで同様に句法や重要語の学習、本文構成や比喩表現の理解が不可欠である。
それに加えて、文学史を含む古典の知識を幅広く吸収し、漢文読解の基礎を築くなど、これまで以上に総合的、学際的な学力を養うことが望ましい。
また積極的な音読によって漢文のリズムを覚え、生きた言葉を身につける訓練も積み重ねてほしい。

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