2018年度実施「大学入学共通テスト」試行調査(プレテスト)分析
(日本史)

2018.11.28

2018年度実施「大学入学共通テスト」試行調査で出題された問題について、各科目ごと、出題における特徴的な点、設問ごとの分析などを公開しています。

プレテスト分析 日本史

 

試験概要

配点 100点
試験時間 60分

 

出題における特徴的な点(2017年度実施の試行調査との比較)

  • 問題数の増加(30問→32問)、視覚資料・史料などの増加、思考力重視の踏襲などの点で、前回よりも難化の印象を受ける。

  • 「歴史の見方の多様性」を問うような作題の傾向は、前回を踏襲している。

  • 生徒による発表形式や「カード」形式の採用など、グループ学習の体裁は前回を踏襲している。

  • 写真や地図、統計データから思考させる問題が前回より増加した(地図は今回が初めての出題)。

  • 史料が前回の約3倍に増加し、また史料の精読を要求される問題が少なくなかった。

  • 「正誤判定問題+組合せ問題」など、出題形式を複合したような問題がいくつか見られた。

 

第1問 (開発・災害と人々との関係史)

  • 問4…碑文に刻まれた2つの史料の共通点を考察する問題で、近年の防災意識の高まりを反映したものとなっている。なお、地理Bの試行調査では、2年連続で防災に関する問題が出題されている。

  • 問6…5文の年代整序問題。時代推移による発展の具合を考えればよいだろうが、時代を特定しづらい文もいくつかあるため難しい。

 

第2問 (官道制度,関〈関所〉)

  • 全大問の中で最も難度が高い大問であったと思われる。

  • 問1…センター試験では、視覚資料(写真や地図など)から情報を分析する問題がたびたび出題されるが、本問は提示した文(読み取れる事項)に対して、その事項の背景や理由を考察させている。センター試験の出題形式から、一歩踏み込んだものとなっている。

  • 問3…今回の中で特に新傾向と言える問題。まず地図から読み取れる情報の正誤判断を行い、次に正しいと判断した文と合った歴史的事実を選択する。こうした複合型は解答に時間がかかり、特に組合せの部分でかなり迷うことが予想され、難度は高い。

  • 問4…組合せと年代整序の複合問題。解答時間の点で少々難しさはあるものの、良問と言える。

 

第3問 (外的影響と社会の変化)

  • 問1…4つの写真のうち、設問条件にあったものを選択する問題。センター試験でも見られる出題形式だが、本問は知識よりも情報を読み取る力を必要としている。

 

第4問 (近世の資料〈文書・絵図など〉)

  • 問1…史料読解問題で、精読しないと誤る可能性がある。その意味で、日本史よりも国語(古文)に近い問題と言える。

  • 問2(2)…俳句の読解問題で、俳句の意味するところを歴史的に考察する必要がある。

  • 問4…正誤組合せ問題で、一方は史料の読解、他方は史料と関わりのある政策を選択する。史料における意見は、何の政策が実行される中で提言されたものかを考察させている。

 

第5問 (近代の経済・国際関係)

  • 問4…リード文で提示された絵とそれを説明したメモをもとに、その絵と同じテーマで描かれた絵を選択する。絵の鑑賞に関する問題は前回も出題されたが、本問はその発展形とも言え、絵やその説明をしっかり理解しないと選択に迷う。

  • 問5…4つの資料を参考にした正誤判定問題。選択肢自体はすべて正しいため、設問条件をしっかりと押さえる必要がある。資料一つひとつを検証すれば正解にたどり着け、またレベルも適切と言えるので、今回の中では考察力・検証力を試す最良問である。

 

第6問 (近現代における時代の転換点)

  • 問4…4文の正誤判定問題で、どの選択肢も民本主義の説明として正しく、第5問の問5と同様、設問条件をしっかりと押さえなければならない。民本主義の理解を前提としており、教科書本文の説明だけでなく、教科書等に掲載されている史料も学習しておく必要がある。

  • 問7…前回も出題された、どちらを支持するかによって正答が変わる問題で、「歴史の見方の多様性」をテーマとしていることが感じられる。2年連続で出題されたため、「大学入学共通テスト」でこの形式が採用される可能性が高まった。

 

対策としてどのような学習が効果的か

2年にわたった試行調査では、知識で対応できる問題もあるが、多くの問題で思考力が求められた。
また、その思考力問題でも、多様な出題形式が採用されており、センター試験のようにある程度形式がパターン化されるということは考えにくい。
したがって、2年分の試行調査を解き、大学入学共通テストでどのような出題形式が来ても焦ることのないよう、時間配分などを考えながら冷静に対応できるようにしておく必要がある。

日本史学習については、センター試験対策と同様、教科書を主軸とした学習が基本となる。
ただし、知識の習得(暗記)に終始するのではなく、日本史用語の周辺情報(「事件」であれば、発生の背景・結果・影響といったもの)も合わせて理解する必要がある。
また、テーマによってはすべての時代を縦断することもあるので、時代ごとの学習に留まらず、「歴史はつながっている」との意識を持って、歴史の流れを把握しておきたい。

もちろん、日本史知識も求められている以上、従来のセンター試験を解くことは重要である。
また、国公立大学の2次試験問題では、大学入学共通テストで問われそうなテーマを出題していることもあるので、そういった問題を見るだけでも違うだろう。

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