2018年度実施「大学入学共通テスト」試行調査(プレテスト)分析
(生物基礎・生物)

2018.11.28

2018年度実施「大学入学共通テスト」試行調査で出題された問題について、各科目ごと、出題における特徴的な点、設問ごとの分析などを公開しています。

プレテスト分析 生物基礎

 

試験概要

配点 50点
試験時間 2科目で60分

 

出題における特徴的な点(現行のセンター試験との比較)

  • 全体として文章の読解やデータの解析、考察を必要とする問題が増加し、知識重視である現行センター試験とは異なり、知識と考察のバランスのとれた出題であった。

  • 会話形式のリード文が、受験生自身が各テーマに参加して一緒に考えていく親しみやすさを強調するためか、全大問(第1問A・第2問B・第3問B)で与えられた。

  • ページ数や大問数・解答数など問題の分量に大幅な変化はなかったが、図表の数は大幅に増加したことにより、短時間で必要な情報を取り出し、判断する力が要求された。

  • 会話文の文脈に適する文を選ばせる穴埋め問題が出題された。これは、現行センター試験の生物でも出題されていない形式であり,正確な知識に裏付けられた文章読解力や解析力が要求されている。

  • 仮説を検証するための実験を設定する探究活動的な問題が出題された。国公立大学や私立大学では近年増加している形式だが、現行センター試験の生物基礎では知識問題や、データを与える形式の簡単な考察問題が中心であるため、目新しい。

 

第1問 (生物の特徴・遺伝子とそのはたらき)

  • Aは教科書などでよく取り上げられている、光学顕微鏡を用いたオオカナダモの葉の観察実験。
    問1は共生説の根拠となるものを選ばせる知識問題。
    問2の葉の断面図を選ぶ問題は、読解力に加えて顕微鏡に関する理解を要求している。
    問3では、仮説を検証するための実験を設定させており、生物基礎の試験で出題されるのは目新しい。なお、表中では光合成に適した条件であることを×、適さない条件であることを○と表しているため、読み取りに手間取ったかもしれない。

  • Bは、ゲノムと遺伝情報に関する出題。
    問4で正解選択肢となっている、ゲノムと病気の関係については、生物基礎の教科書では発展扱いである。
    問5は、トリプレットの出現頻度に関する単純な計算問題である。

 

第2問 (生物の体内環境)

  • A・Bともに,医学的な視点からの問題が出題された。身近なテーマから出題しようという意図が窺われる。

  • Aの問1で問われた、ヒトの腹部の横断面から肝臓を選ぶ知識問題は、国公立大学や私立大学の医学部で出題されるような問題である。
    問2・3は肝臓の構造やはたらきに関する基本的な知識問題であった。

  • Bは薬の投与法がテーマであるが、問われている内容はオーソドックスである。
    問6について、二次応答の抗体量変化のグラフを選ばせる問題ならば、2017年度センター試験(本試)生物基礎第2問の問5などの類題があり知識でも解答できるが、本問は血清を注射した患者の抗体量の変化を問う考察問題である。血清療法についての理解も要求されるため、難しかっただろう。

 

第3問 (生物の多様性と生態系)

  • Aの図1および問1は、2017年度センター試験(本試)生物基礎第3問とほぼ同じである。
    問2は単純な計算問題であるが、グラフから必要な情報を抽出する力が試された。

  • Bは問3・4ともに、物質の循環に関する会話文の空欄に適する文を選ばせる目新しい形式の問題である。
    内容については、問3は炭素循環について、問4はエネルギーの流れについての知識をもとに、会話文の文脈に即した観察結果を判断する必要があった。生態系への総合的な理解と読解力が求められたため、難しかったことだろう。

 

対策としてどのような学習が効果的か

まずは教科書レベルの知識を身につけ、科学的な考え方を理解する。
また、私たちヒトに関する話題など、身近な生物現象に対する意識を高め、疑問をもち、理解を深める。
さらに、実戦問題集などを用いた問題演習を通じて読解力を養い、総合力や解析力を身につける。

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プレテスト分析 生物

 

試験概要

配点 100点
試験時間 60分

 

出題における特徴的な点(2017年度実施の試行調査との比較)

  • 前回にも増して、身近な自然や事象に含まれる生物学的に重要なテーマを、多様な視点より複数の分野から解析させていく分野横断的な出題であった。
    実験・観察や資料解析を通じて読解力や考察力・解析力など総合的な理解度を試す内容となっており、時間内での全問解答にはかなりの実力が必要となる。

  • 前回と同様、すべて必答問題であった。
    大問数は前回より1題減少して5題となったが、設問数や解答数はほとんど変わらなかった。
    ページ数は4ページ減少したが図表が4つ増加しているため、受検者の負担は変わらなかったと思われる。

  • 大問によって、解答数(3個~10個)や配点(12点~30点)が大きく異なっており、一見バランスに欠く印象をもつものの、各問題が分野別出題ではなく、より多角的な内容を含んだテーマ別出題であることから、やむを得ないと思われる。

  • 前回見られたような、選択肢数が12個(選択肢①~⑥)もある設問や、複数の答えを1つの解答番号内にすべてマークさせるなどの新しい形式のものは、今回見られなかった。

  • 部分点の与え方について、設問ごとに細かく設定されるようになった。

 

第1問 (動物の反応と行動・代謝)

  • 筋繊維(筋細胞)を題材とした出題。

  • Aでは身近な材料である缶詰のツナの観察を通して、筋繊維の構造に関する知識が問われた。
    問1・問2ともに問題自体は標準的だが、筋繊維の図が模式図ではなく、スマートフォンで撮影したとされる不鮮明な写真であったため、読み取りに手間取ったかもしれない。

  • Bの問3は、呼吸と発酵に関して、高校生が走りながら考えた内容の正誤を判定するという問題。図4を読み取れなくても、他の選択肢の内容を整理すれば、基礎的な知識だけで正答が選べる。

 

第2問 (生殖と発生・生物の系統・環境応答・生態と環境・バイオーム【基礎】)

  • 植物をテーマとした、様々な分野からの総合問題。

  • Aはトレニア属を題材とした出題。
    植物の生殖に関して、問1・問2は現行センター試験にもあるような実験考察であったが、問3では研究計画の適否を判断する、新テストらしい問題であった。
    問4は植物の系統に関する単純な知識問題であるが、生物名ではなく写真を選ばせている。

  • Bは、園芸部が入手したという植物Xを題材とした出題。
    問5・問6は花芽形成に関して資料を読み取る考察問題であったが、植物が日長を受容してから花芽が形成されるまでに時間がかかるという情報が問題中になく、知識から補う必要があった。
    問7は生物基礎の「気候とバイオーム」から出題された。生物基礎からの出題は前回の試行調査でも見られた。
    問8は物質収支に関して、資料から生産量についての情報を抽出できれば正答が選べただろう。

 

第3問 (生物の系統・生殖と発生)

  • 昆虫の発生のしくみを中心とした出題。
    問1は節足動物門の特徴を問う知識問題、問2~4は前後軸の形成やホメオティック遺伝子に関する、現行センター試験にもあるような実験考察問題であった。

 

第4問 (生態と環境・生殖と発生)

  • 個体群をテーマとした出題。

  • 問1・問2の個体数に関する資料解析では、様々なデータを含む表から必要な情報の抽出や適切な分析・処理をする能力が求められた。
    表1は受検者自身が調査官となって作成したという設定で、当事者的印象を与える内容になっている。

  • 問3~5では生息地の分断による個体群への影響が問われ、自然現象についての理解が試された。
    問5は、ある遺伝子座について、個体群を構成する個体の遺伝子型がすべてヘテロになる可能性が低いことに気付くかどうかがポイントとなり、遺伝の法則に関する本質的な理解が求められる内容であった。

 

第5問 (遺伝情報の発現・細胞と分子・生物の進化)

  • Aはバイオテクノロジーへの理解を試す出題。
    問1は遺伝子組換え技術に関する考察問題であり、問2は遺伝子の発現調節、問3は微小管の分布を表す図を選ばせる知識問題であった。いずれも基礎的な知識の活用が試されている。

  • Bはヒトのアルコール耐性に関する会話文形式の出題。
    問4はリボソームの存在場所について、試行問題としては珍しい単純な知識が問われた。
    問5・問6は、会話文中での誤った発言について、その計算に至った原因を考える内容になっており、多量体酵素の活性に関して数学的な要素を交えて考察させている。
    問7では、与えられた数値から計算できるのは正常型の遺伝子頻度であり、定石的な問題のように変異型の遺伝子頻度から計算しようとした場合は戸惑っただろう。

 

対策としてどのような学習が効果的か

まずは教科書レベルの知識の定着が最重要である。
各大問は生物基礎の範囲を含めて分野横断的に出題されており、苦手分野があると複数の大問で失点しかねないため、偏りのない学習を心がけたい。とはいえ単純な知識問題はほとんど出題されないため、生物用語を表面的に暗記するのではなく、周辺事項と有機的に結びついた理解が必要となる。
日頃から身近な自然現象に対する興味・関心をもつとともに、実戦問題集などを用いた問題演習を通じて、総合的な理解が問われる知識問題や、初見の実験・観察や資料に基づいた考察問題に対応するための、読解力や考察力・解析力を養うとよい。

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