2018年度実施「大学入学共通テスト」試行調査(プレテスト)分析
(化学基礎・化学)

2018.11.28

2018年度実施「大学入学共通テスト」試行調査で出題された問題について、各科目ごと、出題における特徴的な点、設問ごとの分析などを公開しています。

プレテスト分析 化学基礎

 

試験概要

配点 50点
試験時間 2科目で60分

 

出題における特徴的な点(現行のセンター試験との比較)

  • 大問の中でテーマが変わる際はA、Bの中問に分けられていた。

  • 現行のセンター試験の大半を占める、知識があれば解答できるような単純な小問が減った。

  • 教科書の本文には載っていないような知識やデータを与え、考察させる2次試験のような問題が出題された。

  • 現行のセンター試験の問題と異なり、問題文が長いものが増え、知識のみを問うだけでなく与えられた情報をいかに処理できるかが問われる問題が多く出題された。

  • 実験操作に関する問題が、より詳細で具体的な内容になった。

  • 情報処理は必要だが、全体としては基礎的な知識・理論を身につけていれば点を取れるような内容であった。

  • 「化学」と同じ作成方針でつくられているが、「化学」よりも身近な化学を題材とした問題の比重が非常に大きい。

  • 受験生が文系中心であることから、考察的ではあるが内容的には平易であった。

 

第1問 (化学の基礎、身のまわりの化学)

A 生理食塩水と飲料水
問1 ナトリウムの物質量
生理食塩水中のナトリウムの物質量を求める計算問題。
リード文から情報を読み取る必要があるが、計算に関して求められる力は現行のセンター試験と同様。

問2 生理食塩水の性質
生理食塩水の性質に関する選択問題。基本的に求められる力は現行のセンター試験と同様だが、沈殿反応、イオン結晶、炎色反応など、様々な内容で問われている。
凝固点降下については教科書に明確には載っていないので、実際に出題された場合には受験生は戸惑うだろう。

問3 3種類の飲料水の決定
3種類の飲料水を、データと実験結果から決定する考察問題。
各飲料水に含まれる物質やpHなどの性質のデータおよび実験とその結果を与えている。
2つの実験操作から必要な情報をデータから読み取る力が求められるが、いずれも高校化学基礎までの知識があれば比較的容易に処理できる。
ただし、BTB溶液の変色に関しては、覚えていない受験生が多いかもしれない。

B 身のまわりの化学
問4 身のまわりの化学現象
身のまわりの化学現象の名称に関する組合せ選択問題。求められる力は現行のセンター試験と同様。

問5 身のまわりの物質
身のまわりに使われている物質の用途に関する組合せ選択問題。求められる力は現行のセンター試験と同様。

 

第2問 (酸化数、化学反応の量的関係)

教科書の本文には載っていないような、電気陰性度と酸化数に関する問題であり、リード文を元に各問に答える2次試験のような形式である。

問1 酸化数と極性
酸化数が+1の原子を含む無極性分子を選ぶ問題。
求められる力は現行のセンター試験と同様。

問2 有機化合物中の炭素の酸化数
エタノールおよび酢酸分子中の特定の炭素の酸化数を求める問題。
有機化学の知識は必要ないが、リード文で与えられた情報を応用して求める考察問題。
文章把握能力が求められる。

問3 ビタミンCと酸素の酸化還元反応
ビタミンC(アスコルビン酸)と酸素が酸化還元反応するときの、反応物質量のグラフ選択問題。
ビタミンCの還元剤としてのはたらきは教科書には載っていないが、問題文中で反応式が与えられており、求められる力は現行のセンター試験と同様。

 

第3問 (中和滴定)

塩酸と水酸化ナトリウム水溶液の中和滴定に関する実験報告書を資料として与え、それを元に各問に答える2次試験のような形式である。
実際に実験を行った際の報告書にかなり近づけているので、目的や操作方法、濃度や体積の数値などの情報量が非常に多い。
これに伴い、大問全体を通して必要な情報を読み取る力が求められる。

問1 中和滴定
塩酸と水酸化ナトリウム水溶液の中和滴定に関する計算問題。
問われているのは何倍に希釈するかだが、計算に関して求められる力は現行のセンター試験と同様。

問2 実験操作による誤差
実験誤差の原因を選ぶ問題。操作において何を気をつけるべきかということだけでなく、操作を誤るとどうなるかを理解しているかが問われている。
したがって、現行のセンター試験より少し踏み込んだ力が求められる。
また、実験結果からどこに誤差の原因があったか考察させる点は、実際に実験をした際に考察しうることなので、実験経験の有無によって解きやすさが変わってくる可能性がある。

問3 塩化水素の質量パーセント濃度
試料中の塩化水素の質量パーセント濃度を求める計算問題。
計算に関して求められる力は現行のセンター試験と同様。

問4 反応の種類
次亜塩素酸ナトリウムと塩化水素の反応と類似した反応と、その類似性を選ぶ組合せ選択問題。
反応の選択肢の化学反応式は示されていないが、高校化学基礎までの知識があれば比較的容易に処理できる。

 

対策としてどのような学習が効果的か

中学校理科の化学分野を含む高校化学基礎までの知識や理論を身につけることが第一に必要な学習である。
この際、定義を正確に覚えること、計算に関しては公式や計算方法の意味を理解することが非常に重要になる。
また、実験に関しては実験器具の使い方、操作の意味など細かく把握しておくとよい。
実際に実験をし、報告書を書くところまで経験できるとさらに効果的である。
これに加え、身につけた知識や理論を多方向から解釈・利用できるように、関連した問題を多く解くこと、2次試験(化学基礎分野)で出題されるような初見の知識やデータを与えて考察させる問題を解くことができれば、文章把握能力および問題を解くのに必要な情報を読み取る力を養うことができる。

ページのトップへ

プレテスト分析 化学

 

試験概要

配点 100点
試験時間 60分

 

出題における特徴的な点(2017年度実施の試行調査との比較)

  • 問の数は前回よりも増えた(前回:18→今回:27)。

  • 大問の中でテーマが変わる際はA、Bのような中問に分けられていた。

  • 複数の分野の知識を用いて解答する問が増えた。

  • 現行のセンター試験のような知識があれば解答できるような単純な小問が減り、問題文の長さに関わらず、その場で考察するものが増えた。

  • 教科書の本文には載っていないような知識やデータを与え、考察させる問が増えた。

  • 「すべて選べ」という、解答数が定まらない問は出題されなかった。

  • 「二つ選べ」という指示のある問において、前回は過不足なく解答できた場合のみ点を与える採点方式であったが、今回は一つずつ個別に点を与える採点方式になった。

  • 数値自体を答える計算問題の解答数が前回よりも減った(前回:4→今回:1)。

  • 全体として、上記3点のように正解しにくい形式の問が減り、内容的には基礎的な問が増えたので、平均点を上げるような工夫が感じられた。

 

第1問 (気体、反応速度、化学基礎)

A ガスボンベに用いる気体
問1 気体の性質
カセットボンベに用いるのに適する気体を、2つの条件から選ぶ問題。
気体の状態、蒸気圧に関する知識があれば比較的容易に解答できるが、aの条件がどういう意味か少し考えるかもしれない。

問2 生成熱
与えられた熱化学方程式と燃焼熱から、アルカンXの生成熱を求める計算問題。
計算の仕方に求められる力は現行のセンター試験と同様だが、アルカンであることと分子量から、アルカンの分子式を決定しなければ解答できないので、有機化学の基礎知識も必要である。
また、正確に計算する力も求められる(選択肢として数値は与えられていない)。
なお、問1で不正解の選択肢を選んでも、それを用いた場合の生成熱を正しく求めていればこの問の点は与えらえる。

B 反応速度
問3 生成物の濃度変化
Bの濃度の時間変化を表すグラフ選択問題。
反応式とAの濃度変化からBの濃度変化を考える問題だが、1 min、2 min、3 minにおける濃度うち、1点さえ分かればグラフの概形が予測できなくとも解答できる。

問4 反応速度定数
Aの平均濃度と平均の反応速度から反応速度定数を求める計算問題。
本問では反応速度式が与えられているので、表の値を代入すれば求まる。
方眼紙も与えられているが、目盛りの数値の振り方を自分で考える必要性があり、ミスしやすい可能性がある。
ただし、実際に反応速度式が不明な反応速度定数を求める際は、グラフを用いると効果的な場合もある。

C 小問集合
問5 同位体(化学基礎)
互いに同位体である原子どうしで異なるものを選ぶ問題。
求められる力は現行のセンター試験と同様。

問6 第一イオン化エネルギー(化学基礎)
第一イオン化エネルギーの原子番号における変化を表すグラフ選択問題。
2010年センター試験・化学Ⅰ第1問問3と全く同じ問題である。

問7 電気分解
硫酸銅(Ⅱ)水溶液の電気分解に関する選択問題。
2009年センター試験・化学Ⅰ第2問問4aと全く同じ問題である。

 

第2問 (無機化学、溶解性の仕組み)

A 無機化学
問1 化学反応式
あまり知られていないような化学反応式を完成させる問題で、生成物の化学式を選ぶ問題。
二硫化炭素の燃焼反応は教科書に載っておらず戸惑う受験生も多いかもしれないが、2つの生成物のうち1つは本文にヒントが書いてあり、そこから決定できるようになっている。
気体発生反応の基礎知識と、必要な情報を読み取る力が求められる。

問2 気体の発生および捕集装置
気体の発生装置および捕集装置を選ぶ問題。
求められる力は現行のセンター試験と同様だが、問1のイが正解でないと不正解の選択肢を選んでしまう可能性がある。

問3 酸化還元反応(化学基礎)
酸化還元反応でない化学反応式を選ぶ問題。
求められる力は現行のセンター試験と同様。

B 溶解性の仕組みの考察
教科書に載っていないような知識に関する資料を与え、それを元に各問に答える2次試験のような形式である。
一見難しそうだが、化学の基礎知識と文章把握能力があれば解答できる。

問4 イオン半径(化学基礎)
同じ電子配置であるイオンのうち、イオン半径の最も大きなものを選ぶ問題。
求められる力は現行のセンター試験と同様。

問5 化学結合(化学基礎)
陽イオンと陰イオンの間にはたらく力の名称を選ぶ問題。
求められる力は現行のセンター試験と同様。

問6 溶解性の考察
化合物の溶解性に関する記述・考察に関する選択問題。
資料で述べられていることを理解できれば、各選択肢の正誤は比較的容易に判断できる。

 

第3問 (脂肪族化合物、芳香族化合物)

A 脂肪族化合物の反応
炭素数の少ない脂肪族化合物の反応に関する問題であり、リード文を元に各問に答える2次試験のような形式である。
各問を解くにあたり、化合物A〜Dを決定できることが、問題を解く最低条件となっている点が目新しい。

問1 アセチレンとエチレンの性質
アセチレンとエチレンに関する知識の選択問題。
A=アセチレン、B=エチレンと分かれば、その後求められる力は現行のセンター試験と同様。

問2 アセトンとプロピオンアルデヒドの性質
アセトンとプロピオンアルデヒドに関する知識の選択問題。
C=アセトン、D=プロピオンアルデヒドと分かれば、その後求められる力は現行のセンター試験と同様。

問3 化学反応式
⑷式の反応は教科書には載っていないが、未知物質であるE、Fともに、本文にヒントが書いてあるのでそこから決定できるようになっている。
脂肪族化合物の基礎知識と、必要な情報を読み取る力が求められる。

B アセトアミノフェンの合成
教科書に載っていないような合成実験に関する資料を与え、それを元に各問に答える2次試験のような形式である。

問4 官能基の呈色反応
固体Xと固体Yの呈色反応に関する組合せ選択問題。
固体Yは構造の分かっているアセトアミノフェンが主成分であると考えられることから、選択肢は④または⑤に絞ることができる。
固体Xは未知物質であるが、本文に部分構造のヒントがあるので、そこから正解を導ける。
官能基の知識と、必要な情報を読み取る力が求められる。

問5 収率の計算
収率の定義を与えた上で、収率を求めさせる計算問題。
過不足がある反応の量的関係を考えられれば、比較的容易に解答できる。

問6 実験操作と化学現象
実験操作の名称と化学現象の名称の組合せ選択問題。
求められる力は現行のセンター試験と同様。

 

第4問 (二酸化炭素)

二酸化炭素に関する総合問題であり、リード文を元に各問に答える2次試験のような形式である。
教科書の本文には載っていないような炭酸の二段階電離およびそれに関するグラフが扱われている。
また、常用対数表が与えられた点も目新しい。

問1 二酸化炭素の水への溶解度
ヘンリーの法則を用いた計算問題。
求められる力は現行のセンター試験と同様。

問2 電離定数K2の式変形問題(a)と、それを用いてpK2を求める計算問題(b)。
各イオンの存在割合とpHの関係を表すグラフ自体に戸惑う受験生が多いと思われる上に、そのグラフのどの点を用いるべきかをヒントなしで考えなければならず、難易度の高い問題と考えられる。

問3 pHと水素イオン濃度
常用対数表を用いて、2つのpHにおける水素イオン濃度を比較する計算問題。
しかし、与えられたpHにそのまま対応する常用対数は表記されていないので、表記されている値を使えるように式変形をする必要がある。
pHに関する基礎知識と、計算の工夫が求められる。

問4 二酸化炭素の状態図
二酸化炭素の状態図をもとにした、体積の温度変化を表すグラフ選択問題。
化学の教科書では載っていないような片対数グラフが用いられている点が目新しい。
目盛りの読み方さえ分かれば、その後求められる力は現行のセンター試験と同様。

 

第5問 (天然高分子化合物)

だしに含まれる様々な化学物質(主に有機化合物)に関する問題であり、リード文を元に各問に答える2次試験のような形式である。

問1 コロイドの性質
コロイドとその他のイオンを分離する操作に必要な実験器具を選ぶ問題。
必要な知識は基本的なものだが、リード文から必要な情報を読み取る(アルギン酸ナトリウム=コロイド)など、答えにたどり着くまでいくつか段階を踏む必要がある。

問2 アルギン酸の構成単糖
アルギン酸の構成単糖を選ぶ問題。教科書に載っていないような物質であるが知識として知っている必要はなく、与えられた構造式から正確に推測できるかが重要である。
糖の立体構造を理解していれば比較的容易に解答できる。

問3 ヨウ素の性質
リード文と問題文の情報から、ヨウ素がどのような状態でどこに存在しているかを選ぶ問題。
必要な情報を読み取る力と、ヨウ素の性質だけでなく、塩素や酸化還元、有機溶媒などの知識も併せて必要となる。

問4 グルタミン酸の水溶液中の構造
グルタミン酸が水溶液中で主な構造となり得ないものを選ぶ問題。
求められる力は現行のセンター試験と同様。

 

対策としてどのような学習が効果的か

高校化学の基礎的な知識や理論を身につけることが第一に必要な学習である。
それが身についたら、その知識を多方向から解釈・利用できるように、関連した問題を多く解くと効果的である。
これにより知識の使い方の幅が広がったら、問題文が長いものを解くことで、問題文に書いてあることを自分なりに解釈する力(文章把握能力)と、問題を解くのに必要な情報を読み取る力を養う。
その後、2次試験で出題されるような初見の知識やデータを与えて考察させる問題を解くことで実践力を身につける。
また、1つの問に解答するにあたり様々な分野の知識が必要なものに対しては、2次試験の総合問題を解くことが効果的である。
なお、同じ大問の中でも小問どうしやリード文とのつながりが希薄で、比較的すぐに解答できるものも出題されうるので、現行のセンター試験の過去問や小問集合を解いておくことも対策として挙げられる。

ページのトップへ

シェアする

大学入試改革とは?のトップへもどる

おすすめ記事

ページのトップへ

ページトップボタン