2018年公開 2021年度 早稲田大学 政治経済学部
学部独自試験サンプル問題分析

2018.10.19

2021年度 早稲田大学 政治経済学部 学部独自試験サンプル問題を分析しました

代々木ゼミナールでは、早稲田大学政治経済学部の学部独自試験のサンプル問題を分析しましたのでお知らせします。

早稲田大学政治経済学部において2021年度入学者(2018年度現在の高校1年生以降)のための入試から実施されることになる入試改革の方向性が2018年5月に公表され、本改革の一環として新たに導入される学部独自試験のサンプル問題が同年8月に公開されました。
今回導入される学部独自試験は、1科目のみ90分間で実施され、日英両言語による長文を読み解いたうえで解答する形式で、記述解答が含まれます。

今回は、主に次の2つの観点から分析を行いました。

  • これまでの政経学部の入試問題との違いについて

  • サンプル問題のような問題を解くためには、今後どのような学習が求められるか

大問Ⅰ:日本語の長文問題(配点40点)

国語科の分析が主ですが、文章の内容として政治哲学的な内容(ロールズの議論など)を含むため、公民科の分析を加えております。

国語科

 

これまでの政経学部の入試問題との違い

 

概要

従来

サンプル問題Ⅰ

本文量

大問数2(現代文)
各2500~3500字程度

7000字程度

設問構成

(一)知識問題3、空欄補充問題3、傍線部説明問題1、主題確認1
計8問

空欄補充問題5(うち2問は記述)、傍線部説明問題1
計6問

(二)知識問題1、空欄補充問題4、傍線部説明問題2、記述問題1(40字) 
計8問

 

本文について

  • 従来の政経学部の現代文では、明治~昭和期に書かれた文学や芸術に関する文章と、近年執筆されたオーソドックスな評論という2題の構成が続いていたが、今回のサンプル問題では日本語の問題が1題のみとなり、後者に近い現代社会に関する文章が採り上げられた。

  • 本文の分量は従来2500~3500字程度(大問一題あたり)であったが、サンプル問題は約7000字の長文であった。これはセンター試験(4500字程度)や東大(3000字程度)など、他大の問題と比べても非常に長い。

 

設問について

  • 従来頻出であった漢字や文学史等の知識問題がなくなった。

  • 傍線部説明問題の割合が減少した。

  • 空欄補充問題の割合が増えた。うち2問は短字数(30字、50字)での記述式問題であり、空欄の内容を自分で考えて書くことが求められた。従来の記述式の設問では、解答の構文や使用する語句などについての煩雑な指定がついていたが、今回のサンプル問題ではそれがなくなり、よりシンプルな記述問題となっている。

  • 全体を通して、文と文や段落相互の繋がりを読みとる論理的思考力を問う問題の比重が増している。

 

こうした問題を解くために、今後どのような学習が求められるか

  • 本文の長さや設問形式の面で若干の変更はあったものの、空欄補充問題中心の設問構成等、本文の展開や構造を丁寧に読みとる論理的思考力が求められる点においては従来の出題から一貫している。

  • 文と文との繋がりや段落相互の関係を読みとり、文章全体の主題を把握する従来通りの現代文学習が求められる。標準~やや難レベルの評論問題に積極的に取り組み、演習を積むことが有効である。

  • それに加えて、長文を読むトレーニングが求められる。やや長めの評論文を素材として、意味段落単位の部分要約や、本文全体の要約を作成するという練習が効果的である。

  • 記述式の空欄補充問題については、前後の文脈からある程度答えが絞られるものであり、それほど自由度の高いものではないが、ある程度の表現力は求められる。過去問演習において、選択式の空欄補充問題では選択肢を見ずに空欄に入る表現を記述してみるなどの対策が考えられる。

 

公民科

 

これまでの政経学部の入試問題との違い

早大の政経学部では、2018年度入試から「政治・経済」の科目設置が無くなっているが、今回のサンプル問題で政治哲学の内容が扱われているのは、そのことの埋め合わせのようにも見受けられる。
つまり、読解の要素を多く含む「新テスト」的な形式を用いて、政治思想史上・経済思想史上の論争などを踏まえた議論を理解することができる学生を、一応選別しているようにも見受けられる。とは言え、大問Ⅰは思想史の知識が無ければ解けない訳ではなく、国語力ですべて正解することが可能な内容であると言える。
ただし、やはりロールズらの議論くらいは早大受験生として踏まえておいて欲しいというメッセージに思える。もっとも、ロールズなどの政治哲学は「政治・経済」でなく「倫理」的な内容であり、幅広い教養や日頃の読書などが試されているとも捉えられる。

 

こうした問題を解くために、今後どのような学習が求められるか

今回のサンプル問題だけでは断言できないが、やはり、政治や経済をめぐる学説や議論の歴史などには興味を持っておくことが必要であろう。今回の「正義論」をめぐる対立だけでなく、他にも例えば、「小さな政府か大きな政府か」「グローバル化の是非」「保護貿易か自由貿易か」「ポピュリズムは民主主義の結果なのか」など、時事にも絡む意見の対立は多くあり、かつこうした話題は、入試問題を作るのにも適している。
新書などをよく読み、現代の世界でどんなことが話題になっているのか、とにかく興味を持っておくことが必要と言える。そのためにも、「政治・経済」「倫理」の基礎的内容程度は押さえておいた方が絶対に有利になる。
ちなみに、文系学部の大学教授は思想史を好む、と言うか、思想史の知識を持っていることが、学問をする上では前提だと考えている節がある。

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大問Ⅱ:英語の長文問題(配点30点)

英語科

 

概要

  • 700語程度の英文を読んで、グラフ作図問題1問、記号選択問題4問、小論文(日本語で記述)1問という各小問に解答する。設問指示は日本語である。

  • 英文のテーマは、「年代別および地域別に見た日本人の英語学習状況」で、最近の英語教育改革を反映したタイムリーなものである。

  • 英文の内容を受動的に理解するだけではなく、本文と表・グラフから数値を読み取った上で受験生自身がグラフを作図したり、英文中の空所に適切な文章を推測したりすることや、自分の意見を理由とともに説明することを求められる点が特筆される。

  • 文章自体は比較的平易で読みやすい。ただ、統計学の知識までは不要なものの、本文と表・グラフから数値を読み取って情報を処理する能力が求められており、こうした作業に慣れていない受験生にとっては難しく感じられるだろう。

 

これまでの政経学部の入試問題との違い

従来型の本学部英語試験は、読解問題が3問と自由英作文1問である。読解問題は、文整序および語整序、空所補充、内容一致が定番の出題形式で、本文を丁寧に読み進めていけば解答を導くことのできる、きわめてオーソドックスな設問が多かったのが特徴である。
ただし、英文の難易度は比較的高く分量も多いため、速読力が求められた。
一方、サンプル問題は、英文自体は比較的平易で分量も少ないものの、英文の内容を理解できることは当然の前提として、受験生自らが本文や図表からの情報を組み合わせて処理、分析し解答を導き出していくことが求められている点で、従来型試験とは大きく異なる。
また、最後の小論文形式の小問も、従来型試験の自由英作文よりも本格的になり、受験生の主体的な思考力・表現力がより試されるものになっている。
ただ、英語ではなく日本語での意見陳述であるため、その点では難易度は高くない。
以上は、近年の教育改革における目標の一つである「主体的な学習」や、大学入学後の論文作成やプレゼンテーションを念頭に置いた出題であると思われる。

 

こうした問題を解くために、今後どのような学習が求められるか

英文内容を理解できることは前提であるため、従来どおりの英語の学習は必須である。それに加えて、数字が出てくる英文を読んで複数の情報を組み合わせて推論をするといった作業に慣れておくことが必要である。
できれば統計学(平均値・メジアン・最頻値・期待値など)の基礎的素養も身につけておくことが望ましい(数学が必須化されたことからも、ある程度の数学力も期待されていると推察される)。
また、今回のサンプル問題では、小論文は日本語での解答であったが、実際の新試験では英語での解答になる可能性もある。そこで、両方の言語での表現力を磨いておくことも重要である。

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