「大学入学共通テスト」試行調査(プレテスト)分析
(数学・理科)

2017.12.05

「大学入学共通テスト」試行調査で出題された問題について、各科目ごと、出題における特徴的な点、設問ごとの分析などを公開しています。

「大学入学共通テスト」とは?

大学入学共通テスト」とは、1991年1月から実施された大学入試センター試験(以下、センター試験)に代わり、2021年1月から新しく導入される共通テストのことです。
このテストでは、センター試験で出題されてきたマーク式問題に加え、国語と数学に記述式問題が導入されます。
また、英語も4技能を評価する問題に変更となります(※)。
(※)2023年度までは、大学入試センターが作成する2技能(「読む」「聞く」)を測る試験と民間団体が提供する英語4技能の資格・検定試験が併用されます。
マーク式問題も、従来のセンター試験に顕著であった「知識の理解や習得を測る問題」に加え、「思考力・判断力」といった「知識の活用を測る問題」が出題されます。
このように、大学入試センター試験とは異なる「新しいタイプのマーク式問題」や「記述式問題」が導入されることから、文部科学省(大学入試センター)は、出題等の検証を含めたプレテストを2017年11月13日より実施し、12月4日には文部科学省から試行調査の結果が一部公表されました。

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プレテスト分析 数学Ⅰ・A

 

試験概要

 

配点 100点
試験時間 70分

 

出題における特徴的な点

 

  • 試験時間に対し、情報処理量が多いため、数学の力だけではなく、従来以上に「空所補充」の受験対策が重要となる。
  • 数値を計算させる問題が減り、計算を必要としない択一式の問題が増えている。
  • 第2問・第3問では現実の社会に密着したテーマを選び、従来とはまったく違う出題の形式になっている。
  • 従来のセンター試験の図形問題は、受験者にある程度の解法の選択の自由があったが、 この試験では指示通りにやる方法しかなくなっている。
  • 従来のセンター試験と同じ内容の問いについても、直接問いとは関係のない文章により、問題文が大幅に長くなっている。
  • 記述式の問題については、論証を述べるような出題ではなかった。

 

第1問[1](2次関数)

  • 2次関数のグラフの頂点だけに絞り、主に定性的性質を問題にしている。
  • 計算量は従来に比べ少ない。
  • 記述式の設問は易しいが、あまり見かけないタイプなので戸惑う受験者もいるかもしれない。

 

第1問[2](三角比)

  • 与えられた三角関数の式をテーマに色々なことを問うという設定だが、いずれも指示通りにやらねばならず、 「自由に考える」という方向からはほど遠い。
  • 本問に与えられた題材は、「加法定理の応用」として出題すべき内容とも受け取れる。

 

第2問(データの分析)

  • 現行のセンター試験の「データの分析」の出題とは全く異なり、むしろ「関数の最大・最小」がメインであるような印象を受ける。
  • 設問自体は易しいが、問題文が極めて長く、しかも「漢字」の用語が多いので、読むだけで時間をとられる受験者が多そうである。

 

第3問(確率)

  • 「さいころ」、「コイン」といった題材ではなく、「道路の渋滞」という現実の社会に密着したテーマを選んでいることは意欲的である。
  • ただし、リアリティーを出すために車の台数を4桁としており、「約分」の苦手な受験生には重たく感じられるかもしれない。 計算が面倒であるため、本質的な理解とは異なるの場所で、処理量が増加した印象である。

 

第4問(図形の性質)

  • 従来のセンター試験に比べ、「思考力」より「知識」がポイントとなる内容になっている。
  • 前述のこととも関連して、計算問題がまったく含まれておらず、すべての小問が「択一式」になっている。

 

第5問(整数の性質)

  • 選択問題の3題の中では、もっとも現行のセンター試験との違いが小さい。
  • 設問自体は適切であるが、問題の分量が多すぎる。

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プレテスト分析 数学Ⅱ・B

 

試験概要

 

配点 100点
試験時間 60分

 

出題における特徴的な点

  • 従来のセンター試験数学II・数学Bに対する「計算量が多すぎる」との批判に応えてか、第2問・第4問などを中心に 計算量はかなり減少している。
  • 内容的には第1問[4]、第3問は従来にないタイプの問題であるが、全体的な出題傾向は大きく変わっていない。
  • 第3問では「解法」が問題文中に与えられている。こういった形式を使えば、やや高度な内容についても出題が可能に なってくるだろう。

 

第1問(図形と方程式、指数関数と対数関数、三角関数、相加平均と相乗平均の関係)

  • [1]~[3]は基礎知識を問う出題であり、特に目新しさはない。
  • [4]は受験生がよく犯す誤答を題材に、誤りを指摘させる問題であり、これは目新しい。

 

第2問(微分法と積分法)

  • 従来の出題と扱っている内容に大きな差はないが、極力計算量を減らす工夫がされている。
  • 選択肢の一つとして、4次関数のグラフが出題されている点は注目すべきところである。

 

第3問(数列)

  • 題材として私立医歯薬系入試で頻出の「薬の血中濃度」を取り上げているが、このような題材は知っているかいないかで 差がかなりつくだろうと思われる。そのため、この試験には適さない恐れがある。
  • 取り上げられている漸化式は、従来も出題されている基本的なものである。
  • 本問についても、計算量は従来のものよりも減っている。

 

第4問(ベクトル)

  • いわゆる「計算問題」は(1)だけであり、従来のベクトルの問題に比べ計算量は大幅に減少している。
  • 内容的にはベクトルを利用するのは垂直条件だけであり、大半は図形問題という印象である。
  • (5)は面白い問題であるが、少々難しいと思われる。

 

第5問(確率分布と統計的な推測)

  • 分野の性格上避けられないのだろうが、(1)から結構計算が必要となっている。
  • 内容的には、それほど大きく変わったところはない。

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プレテスト分析 物理

 

試験概要

 

配点 100点
試験時間 60分

 

出題における特徴的な点

  • 全体を通じて、日常生活と関連した設問が増え、数値計算の割合が格段に増した。
  • 実験手順の把握、実験データの解析やグラフの書き方など実験を主体とする設問が増えた。
  • 数値計算、実験データの解析など、解答に時間を要する。
  • リード文が会話文となり、その中から内容を解釈し、情報を引き出させる設問が見られた。
  • 選択肢において、該当するものがない場合の選択肢が設定された。
  • 前問で誤った答を選択していても、次の問題で計算手順が合っていれば、前問に関わるので本来は誤答だが、正答となる設問があった。
  • 従来の最も適切な数値を選択する設問からセンター数学のような数値を直接マークする設問に変更されたものがあった。
  • 選択問題である第5問・第6問がなかった。
  • 波動分野は2問のみ、気体の状態変化に関する設問がないなど、力学、電磁気に偏った出題であった。

 

第1問 (小問集合)

 

1題増えてはいるが従来と同じく小問集合。
いずれも過去のセンター試験で出題されたものであり、基本的な設問で構成されている。
ただし、問3、問5では、臨界角の設問に対し池に潜って外を見る描写や、水力発電における貯水槽や発電機の描写があるなど、日常生活に絡めた設問が見られた。

 

第2問 (力学(振り子運動))

 

力学の振り子運動からの出題である。
前半は、振り子の周期の測定実験に関する考察力を問う問題である。
従来ならひもにつながれた物体であったものが、ブランコに乗った人になった点、周期の観測データが与えられている点が新しい。公式を覚えるだけでなく、物理法則を元に正しく思考し、解析する力が問われている。
後半は、実験結果を元にグラフを作成する際の軸の設定を行う問題が出題された。
実験データを解析することに慣れている必要がある。総じて新傾向の設問が並んでいる。なお、本テーマは中学入試において度々見られる出題であり、2016年麻布中に類似のテーマの出題が見られた。

 

第3問 (力学(円運動)・熱(温度と比熱容量))

 

A,B 構成の出題である。A は、力学の円運動、等加速度直線運動からの出題である。
まず、会話文が問題文のリードとなっている点が目新しい。
この会話文の情報を元に、運動を解析していくが、従来のセンター試験の物理と異なり、数値計算を行う必要がある。また、会話文から情報を正確に読み取る能力も必要とされている。なお、Bは金属の比熱容量についての新傾向の問題である。
問4では方眼紙が与えられ、使用することができるが、使用しなくても解決することが可能な出題であった。本問も数値計算が必要となり、単位の変換まで含めて正確に計算を行う必要がある。
なお、A の問3、B の問4、6などは踏み込んだ理解がある人にとっては容易であるので、バックグラウンドを知っているか否かで差がつきやすい。

 

第4問 (電磁気(電磁誘導))

 

電磁誘導からの出題である。
設定自体は典型的であるが、角速度が具体的な数値で与えられ、グラフの目盛りを考えさせるなど新しい要素が含まれている。
2次試験の対策に加え、数値計算の練習をしっかりと行っていれば、迷いなく解決できるので、日頃からの演習の成果が反映されやすい問題である。

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プレテスト分析 化学

 

試験概要

 

配点 100点
試験時間 60分

 

出題における特徴的な点

  • すべて必答問題となり、問の数は大幅に減少した(現行のセンター試験27→試行テスト18)。
  • 現行のセンター試験の大半を占める、小問を読むだけで答えられるような単純な知識問題はほとんどなくなった。
  • 現行のセンター試験の計算問題の選択肢はすべて数値が予め示されていたが、数値自体を答える計算問題が出題された。
  • a とb に分かれている小問において、a を間違えるとb にも影響する問題が出題された。
  • 教科書で見かけないようなグラフを読み取る問題や、目盛りの数値の振り方も受験生自身が考え、グラフを作成して考察する問題が出題された。
  • 大問1 題すべてを用いて、1 つの実験に関する問題が出題された。
  • 現行のセンター試験と異なり、必要以上の情報を与えて受験生に取捨選択させる問題が出題された。
  • 現行のセンター試験の問題と異なり、問題文が長いものが増え、知識のみを問うだけでなく与えられた情報をいかに処理できるかが問われる問題が多く出題された。
    特に実験に関する問題が大幅に増加した。
  • 「すべて選べ」という、解答数が定まらない問題が出題された。なお、過不足なく解答できた場合のみ点を与える採点方法を採用していた。
  • 「二つ選べ」という指示のある問題において、現行のセンター試験では一つずつ個別に点を与えていたが、プレテストでは過不足なく解答できた場合のみ点を与える採点方法を採用していた。
    ただし、問題とプレテストの調査結果によっては採点方法を検討するとしている。
  • a とb に分かれている小問において、a で選んだ数値を用いてb の問題を解く場合、a において不正解の数値を選択していても、その数値を用いて正しい方法でb の数値を出せていれば正解とするという、現行のセンター試験にはない採点方法を一部の問題で採用していた。

 

第1問(化学反応、状態変化)

 

問1 気体の性質、物質量

同温・同圧で同じ体積の気体の物質量が等しいことを利用して解く計算問題。求められる力は現行のセンター試験の問題と同様。

問2 物質のもつエネルギー

与えられた熱化学方程式を利用してエネルギーの大小比較をする問題。計算を必要とする。
エネルギー図を使えば比較的容易に解けるが、エネルギー図の利用をどこまで習うかは学校によってばらつきがある可能性がある。
なお、2009 年センター試験本試験・化学Ⅰ第2問問2と全く同じ問題である。

問3 二酸化窒素と四酸化二窒素の平衡反応実験

実験操作と結果から考察できることは何かを選択する問題。
平衡に関する表面的な知識のみでは間違える可能性があり、普段から実験をし、結果から考えられる仮説を立て、その検証ができる力が求められる。
また、選択肢の一つに「Q の正負は判断できない」というものもあり、このような「実験をしたが、結果としてわかることはない」という選択肢が正解になる問題が将来的に出題される可能性もある。

問4 ナフタレンのシクロヘキサン溶液の凝固点降下実験

実験結果からグラフを作成し、凝固点を求める問題(a)と、その結果からシクロヘキサンのモル凝固点降下を求める計算問題(b)。
a のグラフ作成では、問題用紙に用意されたグラフに目盛り線はあるが、数値は与えられていない。どのように数値を振れば適切なグラフを作れるかの判断、またその上でグラフを正確に作り、そこから必要な情報を正確に読み取る力が求められる。
b の計算問題は単純なものだが、表2 では必要以上の情報を示している。必要な情報のみ取捨選択できる力および正確に計算をする力が求められる(選択肢として数値は与えられていない)。
また、a において不正解の数値を選択していても、その数値を用いて正しい方法でb の数値(正解とは異なる数値)を出せていれば正解とするという、現行のセンター試験にはない採点方法を採用している。

 

第2問(金属の反応、身のまわりの物質)

 

問1 溶解度積に違いによる2種の金属イオンの分離

片対数グラフを用いた、1つの金属イオンの沈殿に関するグラフの読み取り問題(a)と、2つの金属イオンの沈殿に関するグラフの読み取り問題(b)。
片対数グラフ独特のグラフの読み取りができる必要はないものの、教科書では見慣れないグラフであるため、動揺する受験生はいるかもしれない。
また、直線の上下での金属イオンの状態を、溶解平衡と絡めて考えられるかが、グラフを正しく読み取る鍵となる。

問2 金属イオンの分離

6種類の金属イオンのうち、4種類の金属イオンが含まれる水溶液から各イオンを分離する実験に関する問題(a、b)。
はじめに含まれる金属イオンの種類がわからない状態で、操作とその結果から可能性をつぶしていき、確実に分離できるもののみ選択していく問題である。
必要な知識は現行のセンター試験と同じだが、その知識の使い方の多様性が求められる。

問3 身のまわりの物質

身のまわりの無機物質に関する知識問題。
求められる力は現行のセンター試験の問題と同様。

 

第3問(脂肪族化合物、芳香族化合物)

 

問1 元素分析による組成式の決定と物質の推定

組成式を決定するまでは比較的容易である。その組成式から分子式を決定でき、その分子式で表しうる化合物の可能性を考えるという、構造異性体を考える際の基礎力が求められる。
また、現行のセンター試験にはない、「すべて選べ」という指示が含まれている。

問2 条件を満たす化合物の構造式決定

2つの条件に当てはまる化合物の構造式を選択する問題。
求められる力は現行のセンター試験と同様。

問3 エステルの加水分解による構造決定

分子式のわかっているエステルの加水分解生成物と、その反応性からエステルの構造を求める問題(a)と、それに関連した知識問題(b)。
教科書では参考程度にしか書かれていないケト−エノール互変異性を、アセチレンへの水の付加反応に関する知識と結びつけられるかが鍵となる。

問4 配向性とそれを利用した化合物の合成

教科書ではプラスアルファの知識として掲載されている配向性の情報を与え、目的の化合物を得るために必要な操作を選択する問題。
各操作によって起こる反応の必要な知識は現行のセンター試験と同様だが、その上で配向性も考慮し、操作のパターンを考える必要がある。
与えられた情報や自分の知識を組合せ、一つずつ処理していく力が求められる。

 

第4問(化学実験)

 

この大問全体が、教科書で主には扱われていないCOD の実験に関する問題であり、リード文を元に各問に答える2次試験のような形式である。
加えた過マンガン酸カリウムやシュウ酸ナトリウムが数値ではなく文字で置かれていること、純水で対照実験をしていることや加熱によって過マンガン酸カリウムが一部分解することも考慮していることなど、実際に正確な数値を求めるのに必要な実験に内容を近づけている点が目新しい。

問1 酸化数変化

還元剤であるシュウ酸ナトリウム中の炭素原子の酸化数変化を求める問題。求められる力は現行のセンター試験の問題と同様。

問2 過マンガン酸カリウムの量的考察

リード文にしたがって、試料水と純水それぞれにおいて加えた過マンガン酸カリウムと消費した過マンガン酸カリウムの量的関係を文字式で立式する問題(a)と、その結果により、試料水中の有機化合物と反応した過マンガン酸カリウムの物質量を求める問題(b)。
a では上述のように数値でなく文字を用いていて、過マンガン酸カリウムの分解量も考慮しなければならないが、必要な知識は現行のセンター試験の問題と同様であり、酸化還元の本質を理解していることが求められる。
a が正解できれば、b では二式を連立するだけなので、特別に必要な力はない。

問3 COD の数値

試料水中の有機化合物と過不足なく反応する過マンガン酸カリウムの物質量からCOD の値を求める計算問題。
COD の単位に気をつけながら正確に計算をする力が求められる(選択肢として数値は与えられていない)。

 

第5問(高分子化合物)

 

この大問全体が、教科書では深く扱われていない高分子化合物の糊に関する問題であり、リード文を元に各問に答える2次試験のような形式である。

問1 アルデヒド基の検出反応

グルコースが水溶液中では鎖状構造をとる、つまりアルデヒド基をもつ構造が存在することを確認する方法を選択する知識問題。
求められる力は現行のセンター試験の問題と同様。

問2 メタノールとアセトアルデヒドの反応生成物

図1 より、鎖状構造のヒドロキシ基とアルデヒド基が反応してアセタールを形成することを、メタノールとアセトアルデヒドに応用して解く問題。
アセタールの知識がなくても、情報を読み取って応用する力が求められる。

問3 ファンデルワールス力と水素結合

分子間力に関する知識問題。
求められる力は現行のセンター試験の問題と同様。

問4 合成高分子を使った糊

実際に糊として使われているかどうかの知識はなくても、水素結合を形成するしくみを知っていれば解ける知識問題。
高分子の知識ではないが、求められる力は現行のセンター試験の問題と同様。

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プレテスト分析 生物

 

試験概要

 

配点 100点
試験時間 60分

 

出題における特徴的な点

  • 全体を通じて、分野横断的であり、実験・観察や資料解析を中心に、生物学の根本的な理解が試される内容となった。
  • 学習指導要領(教科書)に沿って大問ごとに出題分野が独立している現行のセンター試験とは異なり、観察材料や特定のテーマを題材として、複数の分野から多くの視点が盛り込まれて出題されているのが特徴的である。
  • 初見の実験・観察や資料解析が現行のセンター試験以上に多く、読解力や考察力・解析力を試す内容となっている。その分、解答に時間を要し、時間内での全問解答にはかなりの実力が必要となる。
  • 知識問題は、教科書の知識を単純に問うものではなく、多様な内容を総合的に把握する力が必要な問題となっている。
  • 大問数は6 題で、現行のセンター試験の第6 問・第7 問の選択問題がなくなり、すべて必答問題となった。
  • ページ数や設問数、解答数など問題の分量に大幅な変化はなかったが、図表の数は大幅に増加した。
  • 選択肢数が12 個と増加した設問(選択肢①〜ⓑ)や、複数の答えを1 つの解答番号内にすべてマークさせるなど、新しい形式のものが見られた。
    なお、正解のいずれかをマークしている場合に部分点を与えるかどうかは、今後検討すると発表されているが、完答では正答率が大幅に低下すると思われる。

 

第1問(生態系・発生)

 

環形動物のゴカイをテーマとした、分野横断的な実験・観察問題。
問1は表の数値から個体群の分布を示す図を選ぶ問題であり、数値を適切に解釈することが求められた。
問2は小型個体と大型個体について、表から個体数と体重増加量の関係を読み取る数値の評価問題。表の数値の大小を比較すれば、容易に解答に至ることができる。
問3はゴカイの胚の模式図を発生の順に並べる問題であり、教科書の範囲外の内容だが図のヒントを押さえれば解くことが可能である。

 

第2問(生殖と発生)

 

Aはマウスの受精について、2014年度センター試験(追試)生物Ⅰで扱われた実験を題材としているが、問1で遺伝子改変の手法について問うなど、「遺伝情報の発現」との分野横断的な内容になっている点が新しい。
Bは被子植物の花器官形成を題材とした問題。
会話文形式のリード文は、2017年度センター試験(本試)生物の第7問の選択問題でも見られた。
問4・問5では、これまで考察問題としての出題が主であったABCモデルについて、知識を前提とした出題がされた。
問6は「植物の環境応答」の分野であるチューリップの花の温度傾性に関する資料解析問題だが、注目点の記述内容がややわかりにくかったかもしれない。

 

第3問(代謝)

 

Aは光合成と大気の変化に関する問題。
問2はグラフの傾きが最も大きい時期を選ぶだけでよく、与えられた資料が何を示すのか正しく読み取れていれば難しくはない。
Bは除草剤の影響を調べる実験について考察させる問題。
実験の手順が写真を用いて説明されており、実際の実験を想定した構成となっている。
問5では提示された5つの実験案が有効かどうか、それぞれを個々に問われる新しい形式であったため、現行のセンター試験のような消去法などは利用できず正確な理解が試された。
また、5つのうち前半3つと後半2つのグループに分けて採点する点も新しい試みである。

 

第4問(植生の遷移・進化と系統)

 

Aは生物基礎の範囲である「植生の遷移」から出題された。
花粉の種類と量の変化から遷移の過程を推測する問題となっている。問1は合理的でない推論を過不足なく含むものを選ぶ形式であった。
選択肢の文章が紛らわしく、常緑針葉樹と夏緑樹の成立する環境についての知識を前提とし、選択肢を丁寧に吟味する必要があった。
Bは8種の被子植物の分子系統樹と発芽孔の数との関係について考察する問題である。
問4では、表2で与えられているデータのうち年代と緯度に着目し、生育した年代が古いものほど緯度が低い位置に生育していたことを読み取ればよい。必要なデータのみを選択する必要があった。
問5は「生物の変遷」に関する知識問題であった。

 

第5問(バイオテクノロジー・遺伝子頻度)

 

Aはホタルのルシフェラーゼ遺伝子を大腸菌に導入したという設定の問題である。
教科書で取り上げられている組換えプラスミドの作製方法などの定石的な問題ではなく、組換えプラスミドが導入された大腸菌の選抜や、得られた組換えプラスミドDNA の総量の推定など、実際の遺伝子組換え実験の流れを想定した構成となっている。
Bはヒトの耳垢の性質についての出題。
問4ではデータの一部が与えられていない点が目新しい。遺伝子型頻度や遺伝子頻度をきちんと理解していないと難しかったであろう。

 

第6問(動物の反応と行動)

 

イヌ・オオカミとヒトで、オキシトシン濃度と行動の関係を調べた観察・実験問題。
オキシトシンについての知識は全く問われず、行動への影響のみが問われる考察問題である。
問1はグラフの大まかな傾向を読み取ればよいが、問2は複数のグラフと条件から情報を読み取り統合する必要があった。
問3は、与えられた実験結果の他にどのような情報が必要かを問う問題であり、このような探究活動的な内容に慣れていない受験生には難しく感じられたであろう。

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プレテスト分析 地学

 

試験概要

 

配点 100点
試験時間 60分

 

出題における特徴的な点

  • リード文や問題文の量が増加し、読解に時間を要する。
  • 探究活動のポスター発表を与えたうえで、発表の結論文を選ばせる設問が出題された。
    探究活動の進め方は全ての地学基礎の教科書でとりあげられており、次期指導要領案をふまえてこのような探究活動からの出題も考えられる。
  • 図表を与えたり選ばせたりして、読図力や考察力を問う設問が多く見られた。
  • リード文や下線部、前の設問など、文脈を踏まえて選択肢を選ぶ必要がある設問が複数見られた。
  • 数値計算に時間を要する設問が複数出題された。ただし、文脈や前の設問とのつながり、消去法などで正答できる設問も多い。
  • 適当な選択肢をすべて選ぶ設問が1 題出題され、一つの解答欄に複数のマークをさせて、完答のみ点を与えていた。
  • 選択問題なしの大問5 題で、各大問の設問数は5〜6 題の計28 題であり、従来の計30 題より2 題減少した。
  • 全ての大問で身近なものを題材にして、設問が導入されている。

 

第1問(総合問題(物質の対流と循環))

 

センター試験地学基礎で近年出題が多い、分野横断的な総合問題である。
各分野の関連付けのために文章量は多いものの、知識の有無のみを問う設問が中心で、目新しい出題は見られなかった。
各設問では、地球内部のマントル、地球表層の大気と水、太陽表層のガスの熱対流や物質循環に関して問われている。
問1、問6では地学基礎の範囲の知識のみが問われ、問4も見た目は計算問題だが、実質は地学基礎の教科書に記載がある数値に関する知識問題である。
なお、問4とは逆に深層循環に要する年数と経路長から平均流速を計算させる問題は、2016 年の高卒認定試験で出題されている。
問2で出題されたマントルプルームと海嶺に関する知識は、2016 年のセンター本試験地学でも同様の出題があり、新課程で追加された内容のためか識別力があまり高くなかったと当時は分析されていたが、今回の試行テストでも正答率は第1問で最も低く、プレートテクトニクスとマントルプルームの関係に関する理解の難しさが見て取れる。

 

第2問(岩石・鉱物(石材の観察))

 

岩石・鉱物分野は、今回の試行テストで最も特徴的な出題であった。
生徒による探究活動のポスター発表がリード文として与えられており、次期指導要領案での理数系科目における大きな変更点である、探究活動の充実が念頭にあると考えられる。
ポスター発表中には、探究の目的、検証の方法と結果、考察の各項目がいくつかの空欄とともに示されたうえで、最後の設問である問6では、事実としては正しい内容である四つの文から、発表の結論文としてふさわしい文を選ばせている。
この問6では、次期指導要領案で重視される課題を設定・検証する力と、検証結果を立案・考察・発表する力が問われている。
それ以外の設問では、へき開を確かめる方法を問う問1、偏光顕微鏡の原理への理解を問う問2、方眼紙を用いて色指数を求めさせる問3など、観察や実験を行う力が随所で問われている。
問2は生物顕微鏡で偏光顕微鏡を再現する方法を問うた設問だが、各ニコルの偏光の向きは教科書には記載されていないので、実際に上方ニコルの出し入れを行った経験から、偏光板そのものの向きを類推しての正答が大半だろう。
問5は斑晶の累帯構造と石基における固溶体の成分の変化を問う設問で、2015 年のセンター追試験地学で出題された設問の改題であり、選択肢全体が設問自体の誘導となっている。

 

第3問(大気・海洋(潜熱輸送と地衡流))

 

大気・海洋分野は、問1から問4までは大気中の水蒸気と潜熱輸送について、問5は地衡流としての黒潮についての出題で、与えられた事象やデータを知識と関連づけて分析・考察する力が主に問われている。
問1は飽和水蒸気圧のグラフを読み取らせての、平易な湿度の読図・計算問題である。
問2は海面での蒸発量という教科書の範囲外の事象についての読図・考察問題で、等値線のグラフを読み取らせたうえで蒸発量を決める数式を選ばせている。
グラフの横軸が0 から始まっていないため反比例関係が読み取りにくいが、グラフが曲線になる式は一つしかないことから正答できる。
問3は台風に関する正文選択問題だが、正しい文をすべて選ぶ必要があるため、実質四つの文の正誤の組合せ問題になっており、北回帰線以北での台風の発生の有無というやや細かい知識が選択肢に含まれるため、難問である。
問4は日本近海で潜熱が最も大量に海洋から大気に運ばれている天気図を選ぶ問題で、リード文の下線部から冬の天気図を選べばよいことに気づくか、問2で求めた数式から海面と海上の温度差が大きく、風速が大きい天気図を選べばよいことに気づく必要がある。
問5は地衡流の流速が大きくなる変化を選ぶ問題で、圧力傾度力と転向力の力のつり合いを数式として理解したうえで使いこなす必要がある。

 

第4問(宇宙(天体の特徴と運動))

 

皆既日食の観察を題材とした出題で、問1〜問3は太陽、惑星、恒星の特徴についての知識問題、問4・問5は太陽・月・地球の運動についての計算・考察問題である。
問1・問2は地学基礎の範囲の平易な知識問題で、問3はHR図の読図問題であるが、ベテルギウスとシリウスについての知識問題として正答することもできる。
問4・問5は、皆既日食の場所の地球表面での移動速度という、教科書では扱わない事象についての考察問題である。
センター試験の天文分野では近年、次期指導要領案の地学で重視される時間的・空間的な視点についての出題が多く、本問でも地学的事象の時間・空間スケールの把握と理解が問われている。
問4は、緯度・経度が示された2地点での時刻から皆既日食の場所の移動速度を計算させる問題であり、正確に計算しようとすると膨大な計算量になるが、選択肢の数値の桁数がすべて異なるため、地図上に示された日本列島のおおよその大きささえ把握していれば概算で正答できる。
問5は月の公転速度と地球の自転速度から地球に投影される月の影の移動速度を導く問題で、与えられた模式図と会話文が理解できれば正しい数式を選べるようになっている。

 

第5問(地球・地質(地球の内部構造と地質))

 

地球・地質分野は、データの理解と分析に重点を置いた出題で、問3以外がグラフを読み取らせたり選ばせたりする問題である。
問1・問2は地層の厚さと堆積速度に関する読図問題である。
問1で問われた泥岩を主とする地層の平均堆積速度は、5cm ぎりぎりの値で桁数だけでは正誤が判断できないため、実際に計算するか、他の選択肢からの消去法で選ばないと正答できない。
問3・問4は四国南部の地質を題材に、示準化石と付加体に関する基本的な知識を問うている。
全問を通して、地史分野の出題は問3の示準化石の条件を問う設問以外なかった。
問5は走時曲線の読図問題で、与えられているグラフは2015年追試験の第1問と似ているが、より基本的な、直接波と屈折波についての理解のみを問うている。
問6は地球内部の温度・圧力のグラフを選ばせる設問で、2014年本試験での出題そのままの流用である。

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