2018年度実施「大学入学共通テスト」試行調査(プレテスト)分析
(物理基礎・物理)

2018.11.28

2018年度実施「大学入学共通テスト」試行調査で出題された問題について、各科目ごと、出題における特徴的な点、設問ごとの分析などを公開しています。

プレテスト分析 物理基礎

 

試験概要

配点 50点
試験時間 2科目で60分

 

出題における特徴的な点(現行のセンター試験との比較)

  • 全体を通じて、日常生活に関連した設問が増えた。

  • 考察力を要求する問題が増え、従来のセンター試験と比して難化した。

  • 会話文での出題、グラフの読み取りの出題が見られた。

  • 設問数は13から11になったが、解答数は13から15になった。

 

第1問 (小問集合)

従来は5問構成であったが、4問構成であった。
どの設問も即答できる問題は少なく考えさせる要素が含まれている。
問1では力のつり合いと作用・反作用の法則との違いを理解している必要があり、問2では正確に会話文を解釈する必要がある。
問4では一見すぐに解けそうであるが、正確に電荷の量を考察しないと失点する可能性がある。

 

第2問 (等加速度直線運動・重力下での投げ上げ)

A、B構成の出題であった。Aでは中学で実験する記録タイマーを付けた台車の運動を扱っている。
グラフの読み取りと数値計算を正確に行えれば平易である。
Bでは、重力加速度が地球と違う惑星での運動であるが、違いはそれのみであとは重力下での物体の投げ上げ運動であり、基礎的である。

 

第3問 (回路、電力、熱)

電流により、ケーキを焼く実験を行なっており、設定は目新しい。
また、電流と時間、温度と時間の依存性のグラフが与えられており日頃実験データの解析をしていると有利だろう。
また、電力量や蒸発熱などの正確な知識も必要とされている。
電圧は一定なので、電流の時間変化が消費電力の時間変化に対応していることを見抜くことがポイントである。

 

対策としてどのような学習が効果的か

従来の物理基礎とはやや異なり、公式を当てはめる問題が減少し、物理的な思考力や実験を解析させるような設問が増えている。 対策としては、公式の意味や導出まで正確な理解を心がけること、学校での実験、その後のレポート作成等に能動的に取り組むことが重要だと思われる。 得点が取れるようになるまで、従来より学習時間が必要である。

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プレテスト分析 物理

 

試験概要

配点 100点
試験時間 60分

 

出題における特徴的な点(2017年度実施の試行調査との比較)

  • 前回2017年度試行調査に比べて、数値計算問題が大幅に減り、内容は従来のセンター試験に近い形になった。

  • 計算量は多くなく、考察力を要求する問が各大問に見られ総じて物理的な思考力を問う良問であった。

  • 前回試行調査同様、日常生活を題材にした設定が見られるが、物理の基礎知識に結びつきやすい設問となっている。

  • 実験データの解析とそれに伴う会話形式の設問があり、内容を正しく解釈し、物理的に考察させる出題があった。

  • 前回試行調査同様、選択問題である第5問・第6問がなかった。

  • 力学に偏った前回試行調査と比べて、小問集合、力学、波動、電磁気、熱、原子とバランスのとれた出題であった。

 

第1問 (小問集合)

従来通りの5問であったが、解答数は10と増えている。
難度は従来と比して高い。いずれも見慣れない要素が含まれており、物理的に丁寧に考えないと思わぬ失点をしてしまう可能性がある。

問1では月の重力、問2ではある惑星にいる宇宙飛行士から見た宇宙船の運動であり、物理法則に忠実に解く必要がある。
問3は設定は目新しくないが、ピストンが気体にする仕事(ピストンの重力の位置エネルギー変化)を考えなくてはならず、難度はやや高い。
問4はレンズを覆う問題で典型的であるが、レンズの端点を通る光の道筋を実際の作図を用いて考える必要がある。
問5は原子物理の水素原子モデルの問題であるが、エネルギーが最も低い励起状態を正しく解釈できるかがポイントとなる。

 

第2問 (運動量と力積、衝突)

衝突現象においての物体の運動量と力積の関係を考察させる良問である。
A問1から運動量保存則とはね返りの式を考察せねばならず、平均点は低いのではないか。
Bでは力センサーにより、実際の力と時間の依存性のグラフが与えられている。平均の力の定義を正しく知っている必要がある。
B問5では、等質量の物体間の弾性衝突では、速度が交換されることを知っているか、前問との類推で考えられないと短時間での解答は厳しい。

 

第3問 (薄膜の干渉、定常波)

A、B構成の出題である。
Aではやや見慣れない写真が与えられているが、内容は薄膜の干渉の基本事項である。
従来のセンター試験の難度に近い。可視光の波長と色の関係の知識が必要である。
Bでは電波を金属板に入射させるといった設定が新しいが、定常波が存在することを見抜ければ、後は基本問題である。
見慣れない設定や実験データから物理の基本知識を結びつける必要がある良問である。

 

第4問 (電磁誘導)

A、B構成であったが、いずれも電磁誘導についての出題であった。
A問2では銅製のおんさが鉄製のおんさと異なり、磁力線の影響を受けず、磁場に影響を与えないことを知っていることがポイントである。
B問3、4では誘導起電力についての正確な理解が必要である。2007年東大(前期)に銅管中を落下する磁石の理論モデルを扱った類題がある。

 

対策としてどのような学習が効果的か

2017年度試行調査のような抜本的な問題の変更ではなく、今回は従来のセンター試験の問題に考察的要素を付加したような出題が多く見られた。
全体として、暗記偏重や公式代入といった勉強法では高得点は望めない構成であるので、日々丁寧に問題を物理的に考察して訓練していく必要がある。
また、実験解析、考察、グラフ読み取りの問題への対処としては、学校で行う実験をレポートまで含めて能動的にこなしていく中で、何が重要か物理法則と関連づけて見出す練習をしていくことが効果的である。

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