2018年度実施「大学入学共通テスト」試行調査(プレテスト)分析
(現代社会)

2018.12.03

2018年度実施「大学入学共通テスト」試行調査で出題された問題について、各科目ごと、出題における特徴的な点、設問ごとの分析などを公開しています。

プレテスト分析 現代社会

 

試験概要

配点 100点
試験時間 60分

 

出題における特徴的な点(2017年度実施の試行調査との比較)

  • 全体を通しての設問数が、前回の23問から31問へと、大幅に増加した(センター試験に近付いた)。なお、ページ数は10ページ分以上増えている。

  • 大問数は前回の5から6へと増えたが、例えば第6問は2設問しかないなど、分量・配点にバラツキがある。

  • 各大問冒頭にリード文(多くは会話)や資料などが挿入され、受験生(高校生)により馴染みやすい導入となっている。反面、そのために全体の分量が更に増加している。

 

第1問 (社会・政治・心理学など)

  • 作成中の学校新聞が題材。

  • 問1は読解問題、問2は日本政治をめぐる知識問題。

  • 問3は提示される二つの事例が、それぞれ「経済的自由」「精神的自由」をどれだけ尊重するものなのか、四つのパターンから選ぶ。

  • 問4と問5は青年期・心理学分野の知識を踏まえた問題。

  • 問6は提示されたロールズとセンの考えに近いものを選ぶ問題で、昨年にも似たような出題がなされていた(ベンサムとロールズ)。

  • 問7はラッセルの幸福論とイソップ寓話を踏まえた読解問題(資料文だけではイソップ寓話中の「尾を失い」が事実なのか心配事の内容なのか分からない)。

  • 問8はキング牧師の演説を題材とした読解問題。

  • 問9はアドルノについて選ぶ知識問題。

 

第2問 (地方自治・行政・国際政治)

  • 第2問は、いずれも知識問題。

  • 問1は地方における住民の直接請求をめぐる、オーソドックスな問題。

  • 問2は『アメリカのデモクラシー』の著者(トクヴィル)と、「住民自治」の語の理解を問う設問。

  • 問3と問4は法・憲法に関する問題だが、問3の内容にはやや細かい知識が含まれる。

  • 問5はここ数十年における国際経済・国際政治の出来事を年代順に並べるもので、基礎的な知識が問われている。

 

第3問 (政治制度・憲法など)

  • 第3問は、在外国民の国政選挙権制限の合憲性をめぐり述べられた、最高裁判決の一部が本文。

  • 問1と問2は政治制度・憲法条文からの知識問題。

  • 問3は新傾向の問題形式で、一院制と二院制のどちらかを任意にまず選んだ上で、それに該当する内容を次の(1)(2)で選んでいき、合致していれば初めの選択に関わらず正解となる。

  • 問4は読解問題。問5も読解・解釈問題だが、本文の判決文に続く三つの文章を指示に従い、五つの文章の内から選ぶ必要があり、それぞれかなり長いのでそれなりの国語力が求められる。

 

第4問 (経済政策・経済学)

  • 第4問は、アダム・スミス『国富論』の一部を本文とした、経済分野からの出題。

  • 問1と問2は読解・解釈問題で、スミスの「見えざる手」の理解が焦点にもなっている。

  • 問3もスミスの考えに近い経済政策を選ぶもの。

  • 問4は歴史家E.H.カー『危機の二十年』の読解問題で、十九世紀のイギリス自由貿易が題材。

  • 問5は、転じて保護貿易を唱えたリストに関する知識問題。

 

第5問 (持続可能な社会」をめぐって)

  • 第5問は、「持続可能な社会」をめぐる会話が本文で、社会保障やベーシック・インカムなどもテーマ。

  • 問1は別々の角度から「持続可能な社会」について考察する(③はやや曖昧)。

  • 問2は資料の読解問題で、ア~エの文章が長くやや煩雑。

  • 問3は二箇所の空欄を埋めて会話文を成立させる設問だが、各空欄の正解が一つとは限らず、組合せとして適当なものを選ぶことになる。

  • 続く問4も似たような形式で、題材はベーシック・インカム。

 

第6問 (「食」をめぐっての探究学習)

  • 第6問は、設問が二つのみで、ともに「『食』をめぐる社会問題とその解決」をテーマとする探究学習が題材。

  • 問1は、テーマに関連するチャート図を補完する資料を、三つの図版から二つずつ、計二箇所分選ぶ問題で、こうした「どの資料がふさわしいか」を選ぶ設問は、前回の試行調査でも見られた。

  • 問2は、食料自給率などをめぐる三つの意見が、それぞれ「個別的事実を述べたものか理想を述べたものか」などの分類パターンのどれに該当するかを選ぶ。

 

対策としてどのような学習が効果的か

  • 何らかの意見の対立を扱う読解・解釈問題が目立つが、パターンは限られている(上述したロールズとセン、ベンサムとロールズの立場の違いなど)。「倫理」と合わせて試行調査、センター試験の過去問などを多く解くことで、パターンは把握できるだろう。

  • 全体的に文章量がかなり多くなっている。ただ、その大半は「流し読み」をすべき文章で、解答に関わる選択肢文や資料文でも、さっと読んで大意だけ掴んでしまえば、全て丁寧に読む必要はない。本番で時間配分のミスをしないためにも、「流し読み」の技術を培うことが肝要。

  • 関連して、多くの設問で、会話文や資料を通じて解答のヒントへと受験生を誘導する試みがなされている。そうした誘導に素直に気付けるように、出題者側の意図を常に探りながら解いていく訓練をしておくこと。(気付けなければ、単に文章を必要以上に読ませられることになり、時間のロスに繋がる。)

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