2018年度実施「大学入学共通テスト」試行調査(プレテスト)分析
(政治・経済)

2018.12.03

2018年度実施「大学入学共通テスト」試行調査で出題された問題について、各科目ごと、出題における特徴的な点、設問ごとの分析などを公開しています。

プレテスト分析 政治・経済

 

試験概要

配点 100点
試験時間 60分

 

出題における特徴的な点(現行のセンター試験との比較)

  • センター試験では大問の冒頭に在った本文・会話文がなくなったかわりに、それらに在った下線部に相当する事項を連ねた箇条書きの文や年表に関連する設問が展開されている。

  • センター試験ではあり得なかったであろう設問(第2問の排出量取引)からセンター試験そのままの設問(第4問の貨幣の機能など)まであり、試行調査の結果で「どこまで冒険できるか」を見極めようとした出題だったのではないか。

  • 「倫理」など他教科に比べるとかなりセンター試験寄りの形式・難易度であり、上記の排出量取引の設問を除き、従来のセンター試験対策がそのまま通用しそうな、保守的な内容の出題である。とは言え、センター試験よりも多量の資料読解を要するので、その点には留意が必要である。

 

第1問 (民主政治の基本原理、現代の政治の動向)

  • A(問1~3)では、民主主義の諸形態(直接民主制・代表民主制と全員一致制・多数決制)について「4人の生徒が自分なりにまとめた」という設定の説明文が示される。
    問1(ルソー『社会契約論』の代議制批判)は、センター試験での出題例はあるが、邦訳(光文社古典新訳文庫)からの抜粋が10行も示された。ただし最初の1行を読めば正解が分かる。
    問2(国会の議決の方法)はセンター試験の設問とほぼ同じ形式。
    問3は多数決制と「審議の原理」の関係を考えさせる良問。

  • B(問4~8)では、設問ごとに形式が異なる。
    問4(形式的平等から実質的平等へ)は、「ある生徒がまとめた」という設定の文章の空欄に該当する記述2択と奨学金などの具体策4択の組合せ問題。文章の長さ以外はセンター試験と類似の形式である。
    問5(5か国の公的部門職員数)と問7(日本の国会)もセンター試験の形式を踏襲。
    問6(都道府県と市町村)は三つの資料の組合せ問題で、特に資料2における「警察」の有無が決め手となるので難易度が高い。
    問8(行政を統制する方法)は、基礎知識と設問文のヒントを基にして考えさせる良問。

 

第2問 (安全保障、人権、核、冷戦、地球温暖化)

  • 年表の下線部に関連する設問の多くはセンター試験と同形式(問1~5)。

  • 問6(個別的自衛権・集団的自衛権)では現行の自衛隊法の条文が示される発展問題だが易しい。

  • 問7(排出量取引)は意欲的な出題だが、これを高校「政治・経済」で扱うのは生徒・教員とも負担が大きいだろう。

 

第3問 (経済活動の在り方と福祉の向上)

  • 第3問も、設問の多くはセンター試験と同形式または類似の形式である(問1・3・4・5・7)。

  • 問2は、贅沢品・生活必需品の需要曲線の傾きを知っていれば易しい。

  • 問6は、ジニ係数と累進税率の組合せ問題だが易しい。

  • 問8では、図3の従属人口指数と老年従属人口指数の識別がポイントで、このようなデータを調べた経験がないと判断に迷う。

 

第4問 (オープンキャンパスで興味をもった国際経済)

  • A(問1~3)ではオープンキャンパスの模擬授業の配付資料という設定のレジュメが示されるが、問3(貨幣の機能)にはその工夫が活きていないように感じた。
    問1(バーゼル規制・SDR)と問2(国際金融のトリレンマ)はやや難しいが、高度な内容を考えさせる良問。

  • B(問4~8)では、設問ごとに異なる資料が示される。
    問4(円相場の推移)の図は様々な設問の資料になりそうな図だが、欲張らずに受験生の負担が軽そうな出題にとどめたという印象を受ける。
    問5(日本の国際収支)と問6(欧州連合の出来事)はセンター試験の形式をほぼ踏襲。
    問7は、贈与と政府貸付等(有償である借款)から見た日本のODAの特色を考えさせる良問。

 

対策としてどのような学習が効果的か

設問の難易度と必要な基礎知識の量は、センター試験とほぼ同等であろう。
違いが大きいのは資料読解の量。したがって、教科書・資料集などに掲載されている文書や法令をきちんと読み込む経験を積むことと、図表が意味している事柄を見いだし確認する習慣を付けることが必須だと言える。

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