大学入試の基礎知識:私立大入試
多様な入試方式
【図表7】私大入試のおおまかな流れ

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私立大学の入試は、各大学が独自に入試日程、選抜方法等を設定して実施しますが、大別すると、各大学の個別試験で合否を判定する「一般選抜」と、共通テストの成績を利用する「共通テスト利用選抜」の2つの入試方式があります。さらに、大学によっては2次募集にあたる「後期入試」を実施する大学もあります。
それぞれの入試方式で募集人員や科目・配点が異なるため、受験者は各自の学習状況を踏まえて、自分に合った入試方式を選択することができます。また、志望校の科目・配点を早い段階で調べ、配点の高い科目の学習を優先して進めるといった工夫も必要となります。
入試方式 | 入試科目(配点) | 募集人員 | 実質倍率 (22年度) |
|
---|---|---|---|---|
一般 選抜 |
学部別 | 外(150)、国(100)、 [数・歴・公]→1(100) |
290名 | 2.6倍 |
全学部 統一 |
外(150)、[国・数(Ⅲ)]→1(100)、 [数(ⅠAⅡB)・歴・公・理]→1(100) |
50名 | 5.3倍 | |
大学 入学 共通 テスト 利用 |
前期 3科目 方式 |
外(300)、国(200)、 [数・歴・公・理]→1(200) |
15名 | 9.7倍 |
前期 7科目 方式 |
外(200)、国(200)、数(200)、 [歴・公]→2(200)、理(100) |
50名 | 2.4倍 |
例として、図表8に示した明治大学政治経済学部経済学科の入試方式を見てみましょう。入試方式は全部で4つありますが、募集人員が最も多く配分されている学部別入試が、この大学のメイン方式です。この方式の配点は、国語と数学・地歴・公民がそれぞれ100点なのに対して外国語が150点と高くなっています。したがって、合格するためには外国語で高得点を取れる学力を身に付けることが必要不可欠と言えます。また、国公立大志望者がこの大学を併願する場合は、共通テスト利用入試の7科目方式を活用するとよいでしょう。一般選抜に比べて募集人員は少ないですが、入試科目が多いことから受験者が限られるため、実質倍率は4つの方式の中で最も低くなっています。大学によっては合格最低点を公表していることもあるため、各大学のホームページや募集要項などで確認しておきましょう。
一般選抜
私立大学の一般選抜は1月下旬~2月中旬にかけて実施されます。多くの大学で日程や方式が複数設定されており、とても複雑に見えますが、基本となるのは3教科入試です。受験が必要となる標準的な教科の組み合わせは、文系が「外国語、国語が必須、数学・地歴・公民から選択」、理系が「外国語、数学、理科」です。理科はほとんどの大学・学部が1科目ですが、医学部医学科や早稲田大学・慶應義塾大学の理工系学部などでは2科目必要な場合もあります。また、医学部や看護学部では学科試験に加えて面接や小論文が課されることもあります。なお、一部の大学では、メインの方式が2教科の場合もあります。
一般選抜には、「全学部日程」「統一入試」等と呼ばれる入試方式があります。これは複数の学部が共通の問題を使用して同日に実施する方式で、受験者は一回の試験で複数の学部・学科の選考を受けることができるというメリットがあります。
さらに、通常の一般選抜に加えて、2月下旬~3月にかけて「後期入試」「3月入試」等と呼ばれる入試を実施する大学があります。これは2次募集にあたる入試で、入学者数の調整という目的で行っている大学もあります。したがって、先に実施した入試で入学手続き率が大学の予想よりも高い場合には、後期入試ではほとんど合格者を出さず、募集人員よりも合格者が少ないというケースさえあります。募集人員も少ないため、通常の一般選抜に比べて実質倍率・レベルともにやや高くなる傾向があります。
共通テスト利用選抜
区分 | 内容 | |
---|---|---|
選抜方法 による分類 |
個別試験なし | 共通テストの成績だけで合否判定をする |
個別試験あり | 面接等の成績と合計して合否判定をする | |
併用方式 | 一般入試の成績と組み合わせて合否判定をする | |
出願時期 による分類 |
事前締め切り | 共通テスト実施前に出願を締め切る |
事後締め切り | 共通テスト実施後でも出願することができる | |
後期募集 | 2月半ばから3月にかけて実施される2次募集的な入試 |
共通テスト利用選抜は一般選抜とは別枠で実施され、共通テストの成績を利用して選抜します。受験が必要な教科は一般選抜と同じく3教科が基本となりますが、難関大学の中には国公立志望者に受験を促すため4教科以上の方式を設置している大学もあります。
利用方法や実施方法は大学によって異なります。実際の各大学の共通テスト利用選抜の形態は、「選抜方法による分類」では「個別試験なし」が圧倒的に多く、「個別試験あり」の大学はごく少数です。共通テストと大学独自の学科試験の「併用方式」による選抜は、中部圏では南山大学や愛知大学、名城大学等、関西圏では関西学院大学や関西大学、立命館大学等、多くの大学で行われています。一方関東圏では、「併用方式」を行う大学は中央大学や専修大学等に限られていましたが、近年早稲田大学の一部の学部や上智大学、青山学院大学で新たに導入されました。全国的に「併用方式」が拡大しつつあります。
「出願時期による分類」では、多くの難関私大は共通テストの実施前に締め切ってしまう入試が共通テスト利用選抜の主力入試となっています。この「事前締め切り」タイプは志願倍率が非常に高いのに対し、「事後締め切り」タイプの志願倍率はそれほど高くありません。共通テストを受験した後に自己採点をすることで自分の得点が分かっているため、合格の目安となる得点に届かなかった受験生が出願を諦めることが多く、志願倍率が低めになる傾向があります。ただし、低倍率だからといって合格レベルが低いということではありませんので、注意が必要です。
英語外部試験利用
出願資格 | 青山学院、桜美林、工学院、国際基督教、芝浦工業、順天堂、 昭和女子、大東文化、玉川、中央、東京女子、東京電機、東京理科、 日本女子、法政、武蔵、明治、明治学院、早稲田 |
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得点換算 | 亜細亜、桜美林、大妻女子、学習院、共立女子、恵泉女学園、 國學院、こども教育宝仙、駒澤、産業能率、実践女子、芝浦工業、 順天堂、上智、白百合女子、清泉女子、聖路加国際、専修、創価、 大正、大東文化、拓殖、玉川、中央、帝京、東海、東京音楽、 東京経済、東京慈恵会医科、東京都市、東京富士、東洋、東洋学園、 日本、文京学院、法政、武蔵、武蔵野、明治、明治学院、目白、立教、 立正、ルーテル学院 |
満点換算 | 大妻女子、学習院、共立女子、恵泉女学園、國學院、 こども教育宝仙、産業能率、実践女子、上智、白百合女子、 聖路加国際、専修、大正、大東文化、拓殖、玉川、帝京、 東京慈恵会医科、東京都市、東洋、東洋学園、日本、法政、明治、 目白、ルーテル学院 |
加点 | 国士舘、順天堂、上智、成蹊、聖心女子、東京女子、東京理科、 日本女子、日本文化、明治、明星、早稲田 |
- ※参考:東京慈恵会医科 優遇:帝京科学、帝京平成、デジタルハリウッド
- ※一部の学部・学科・入試方式のみを含む。航空操縦学専攻等を除く
私立大学の一般選抜・共通テスト利用選抜では近年、急速に英語外部試験のスコアを利用できる大学が増加しています。その利用方法は、おもに「出願資格」「得点換算」「満点換算」「加点」の4つの利用方法になります。「出願資格」は一定のスコアを取得した人だけが受験できる方式、「得点換算」は一定以上のスコアを取得している場合に入試の英語の得点をスコアに応じて換算する方式、「満点換算」は「得点換算」の一種で、スコアが基準を満たしていれば入試の英語の得点を満点に換算する方式、「加点」は基準のスコアに応じて総得点に一定の点数を加点する方式になります。
大学入試で英語外部試験のスコアを利用する場合には様々なメリットが考えられます。英語外部試験取得者のみが出願できる入試で受験機会を増やすことができること、受験の年数に限りがあるものの何回でも何種類でも複数の英語外部試験にチャレンジできてその成果を入試に利用できること、英語外部試験自体は純粋に英語の実力を測る試験であって入試問題にみられるような難問奇問はなく、自身の持っている英語の実力が十分に発揮できその成果を入試に利用できること等がメリットとして挙げられます。また「得点換算」や「満点換算」では、基準とされるスコアを有していれば該当大学の英語の対策をやらなくて済むため、他の入試科目や英語外部試験が利用できない大学の英語の対策にのみ専念できることもメリットとして挙げられます。
よって私立大学の受験では、英語外部試験を積極的に受検し高いスコアを取得したうえで入試に向かうことをお勧めします。