2018年度実施「大学入学共通テスト」試行調査(プレテスト)分析
(地学基礎・地学)

2018.12.03

2018年度実施「大学入学共通テスト」試行調査で出題された問題について、各科目ごと、出題における特徴的な点、設問ごとの分析などを公開しています。

プレテスト分析 地学基礎

 

試験概要

配点 50点
試験時間 2科目で60分

 

出題における特徴的な点(現行のセンター試験との比較)

  • 地学基礎は昨年は試行調査がなかったため、現行のセンター試験との特徴的な違いをまとめた。

  • 設問数が13題(第2問問2は解答番号2つで1題)となり、現行のセンター試験の15題から2題減少していたが、問題の読み取りや考察に時間を要する問題が増加したため、実質的な問題量は現行のセンター試験並みであった。

  • 求められている知識は現行のセンター試験とそれほど変わらないが、分野横断的に知識を結びつける力と、資料を分析して考察する力が重視されていた。

  • 第2問 問2は、探究活動のレポートを与えた上で観察事実と考察で得られる事柄を同一の選択肢から選ばせる特徴的な出題だった。

  • 大気・海洋分野からの出題は第2問Cの台風関連の2題のみだった。
    ただし、今回の試行調査だけでは、大気・海洋分野の設問数が現行のセンター試験より少なくなるかどうかは判断できない。

  • 宇宙分野からの出題は第3問Bの宇宙の誕生と現在の姿関連の3題のみだった。
    宇宙分野は指導要領の改訂にともない、今後も宇宙スケールと太陽系スケールの出題が中心になると考えられる。

 

第1問 (地球(地層・地球の歴史))

  • 問1は地層や地質構造、化石の観察から得られる情報に関する正文選択問題で、問われている内容は標準的である。

  • 問2・問3は地球の歴史に関してまとめた図表を与えたうえで、問2は図表の誤りを指摘する問題、問3は地球の酸素濃度の変化とその原因を図表と関連付けて考察させる問題である。

  • 問1は地層の観察結果から推論できることを問うており、問2・問3では地球史のできごとを岩石資料と対応させて表にまとめている。
    単なる知識の暗記で解ける問題でも、観察結果や資料との関連付けを重視する出題者の姿勢が伺える。

 

第2問 (地球・気象(自然災害))

  • 問1〜問3が地球分野の、問4・問5が大気・海洋分野の災害というくくりで分野を横断した出題である。

  • 問1は地震の震度とマグニチュードについてと火砕流についての標準的な正文組合せ問題である。

  • 問2・問3は土石流堆積物についての考察問題で、問2は解答番号5では観察結果を、解答番号6では観察結果に基づく考察からの推論を、同一の選択肢から1つずつ選ばせる出題である。
    前回の施行調査の地学第2問と同様に、探究活動における思考過程を正しく身につけているかが問われている。

  • 問4・問5は台風の経路についての資料分析で、問4は台風の月別の主な経路を与えた上で大気の大循環との関係を問うている。

  • 問5は、シーボルト事件の引き金となった1828年の台風について、風の向きと強さの時間変化を記した江戸時代の史料から経路を推測する問題である。
    台風の速さと低気圧性の風がどの程度渦を巻いたかで進行方向の判断が分かれるため、問4で与えられた一般的な台風の経路も判断材料とする方が正答しやすい。

 

第3問 (地球・宇宙(月と宇宙))

  • 問1・問2は月を題材にしているが、問1は地球の岩石について、問2はエラトステネスの測定法についての出題なので、実質的に地球分野からの出題である。
    それぞれの分野の知識や計算力を身につけた上で、月の事象についても適応できる応用力が問われている。

  • 問3〜問5は宇宙の誕生と膨張、階層構造についての標準的な難易度の出題であり、出題形式は現行のセンター試験と変化していないが、次期指導要領の地学基礎では太陽系と並んで扱いが大きくなると考えられる分野からの出題である。

 

対策としてどのような学習が効果的か

観察結果と関連づけた設問の導入や、資料をもとに分析・考察する設問、あるいはその思考過程を問う設問が見られた。
こうした問題では、全体的にリード文や問題文の量が増加する傾向がある。
リード文や下線部、前の設問などの文脈を踏まえて、限られた時間で正確に題意を読み取る訓練が必要になる。
また、探究活動のレポートが与えられた第2問の問2は、観察事実と推論との区別を問う特徴的な設問だった。

次期指導要領では、科学的な探究に必要な資質・能力の育成が重視されており、課題の設定、検証などの思考過程をたどる力が求められている。
図表を与える出題は増加すると予想されるので、さまざまな図表に見慣れておくとともに、地学的事象の時間的・空間的な広がりや、諸量の単位などを把握しておくことも大切である。

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プレテスト分析 地学

 

試験概要

配点 100点
試験時間 60分

 

出題における特徴的な点(2017年度実施の試行調査との比較)

  • 選択問題なしの大問5題で、各大問の設問数は5〜7題の計29題(第4問問4は解答番号2つで1題)であり、前回の試行調査の計28題より1題増加し、現行のセンター試験の計30題より1題減少した。

  • 地学現象を単独ではなく、その根拠となる資料やデータ・観察結果とともに提示する問題文が増加した。

  • 図表を与えたり選ばせたりして読図力や考察力を問う設問が増加した一方、計算量は減少しており、全体的な難易度は前回の試行調査並みであった。

  • 第1問Aではマインドマップを用いて分野横断的に設問どうしを関連づけていた。

  • 探究活動のプロセスをなぞる出題形式が多く見られ、特に第3問では、大問全体で探究活動の立案から検証までの過程に沿って出題されていた。

  • プレートの沈み込みの角度を決める要素という、教科書の範囲外のグラフから関係式を読み取る読図・考察問題が出題された。
    前回の試行調査における海面での蒸発量の設問と同じ出題形式であり、今後も同様の出題が予想される。

 

第1問 (総合問題(小問集合と地球の内部構造))

問1〜問5は分野横断的な総合問題で、石灰岩、海洋、大気、多形、地質時代の各用語に関連づけた出題がなされている。
知識の有無のみを問う設問が中心だが、図を用いて用語どうしをマインドマップ的に連結することで、前回の試行調査の第1問に見られた各分野の関連づけのための文章量の増大が改善されており、このような図表を用いて分野をまたいで関連づける形式の出題は今後もあり得ると予想される。

  • 問1の石灰岩と問4の多形が岩石・鉱物分野、問2の海水組成が大気・海洋分野、問3の地球の大気組成の変化と問5の地質時代区分と地層の対比と放射年代測定が地球史分野からの出題で、問1〜問3は地学基礎の教科書の範囲の知識で正答できる。

  • 問6・問7は地球の内部構造についての問題で、問6は外核と内核の境界についての、問7はアイソスタシーについての基本的な知識を問う問題である。

  • 問6は2007年のセンター本試験からの流用であり、インゲ・レーマンの紹介に字数を費やしたリード文は、近年のセンター試験の傾向に比べると多めの文章量だった。

 

第2問 (地球(プレートテクトニクス))

プレートテクトニクスについての大問で、問1以外の全設問で読図を要求される。
特に問2・問6は、探究活動におけるデータの分析と考察を追体験させるために工夫された出題である。

  • 問1はウェゲナーの大陸移動説の根拠として誤った文を選択する問題で、プレートテクトニクスの発展の歴史についての知識と理解が問われる。

  • 問2は大西洋の海洋底年代の東西変化を推測する読図問題で、海洋底拡大説の検証のために1960年代に行われた海洋底掘削調査の測線が与えられており、海底の地形から大西洋の海嶺の位置を推測する必要がある。

  • 問3は伊豆・小笠原海溝が海洋プレートどうしの沈み込み境界であることを、問4は海嶺とトランスフォーム断層での断層運動の型を問う問題で、いずれも地学基礎の知識で正答できる。

  • 問5はVLBIによるつくば市・カウアイ島の間の距離変化の正しい図を選ぶ問題で、2011年の東北地方太平洋沖地震にともなう変化を正しく選ぶためには、海溝型巨大地震の発生機構に関する理解が必要である。

  • 問6は教科書の範囲外の知識に関する読図・考察問題で、沈み込むプレートの年齢、沈み込みの速さ、沈み込み角度の関係を示したグラフから関係式を読み取ることが求められる。
    縦軸、横軸をそれぞれ増加させたときの沈み込み角度の増加・減少傾向がグラフと整合する数式を選べばよい。

 

第3問 (地質(ルートマップ))

地質調査の探究活動の記録を題材にした大問で、設問は調査の時系列順に進行し、調査データの更新にともない、1枚の図にまとめることも可能なルートマップが2枚に分けて与えられている。
大問全体で探究活動における検証計画の立案、調査の実行、データの整理、考察と検証、新たな課題の設定という一連のプロセスが示されている。
特に問5では、問4で立てた予想が誤っていたことが示されており、その理由として複数の仮説と検証方法を検討させていた。

  • 問1では、1回目の調査ルート上の露頭の調査結果が図1に示されており、計測された走向・傾斜に対応するクリノメーターの図を選ばせている。

  • 問2・問3では露頭で採取したサンプルの分析を行っており、問2では砕屑岩の分類と示準化石についての、問3では火山灰の化学組成と火山地形についての知識が問われている。

  • 問4では、図1に2回目の調査ルート上の露頭の位置を追記した図2が示されており、新たに調査した露頭で観察されると予想される地層の様子を選ばせている。

  • 問5では2回目の調査の結果として、1回目の調査ルートでは見られなかった花こう岩の存在が示されており、花こう岩と地層の関係についての複数の仮説を示し、2つの仮説に対応する検証方法をそれぞれ選ばせ、個別に配点が与えられている。 解答に必要な知識は基本的だが、探究活動における知識の活用法を具体的に示した出題である。

 

第4問 (大気と海洋(緯度別エネルギー収支と熱輸送))

極方向の熱輸送に関する大問であり、エネルギーの収支を数理的にとらえる能力が試されている。

  • 問1では大気中の水蒸気による熱輸送と中緯度での偏西風の蛇行による熱輸送について、問2では南北半球における亜熱帯環流の流れる向きと西岸強化についての知識が問われている。

  • 問3は地球に大気と海洋が存在しなかった場合の極向きの熱輸送量と赤道と極の温度差の現在との違いをグラフ上の変化から選択させている。

  • また、問4では各緯度帯の太陽放射と地球放射の収支を与えた上で、赤道に最も近い緯度帯から極側に隣接する緯度帯へと順に立式することで、緯度帯間の熱輸送の数式を求めさせている。

  • 問5は大気と海洋における極向き熱輸送量の緯度分布の正しいグラフを選択する問題である。
    現実にはない仮定をしたときのグラフ上の変化を問うた問3と、熱輸送の数理モデルの扱いを問うた問4が特徴的である。

 

第5問 (宇宙(金星))

金星の特徴、大気、視運動、受熱量、東西方向の風速分布についての大問である。
地学基礎の知識で解ける設問や図の読み取りだけで解ける設問も含まれ、難易度があまり高くならないように作られている。

  • 問1では金星の特徴について、問2では金星大気の主成分と気圧についての知識が、問3では宵の明星で離角が最大になるのは東方最大離角であることとその軌道上の位置が問われている。

  • 問1の金星の自転周期と公転周期の大小関係がやや細かいが、消去法で正答できるだろう。

  • 問4・問5は金星探査機「あかつき」を題材にした出題で、問では太陽定数と比較した金星軌道上での「あかつき」の太陽放射の受熱量の計算問題、問5は「あかつき」が観測した金星の東西方向の風速分布の読図問題である。

  • 問4は金星の太陽からの距離から容易に計算でき、問5は教科書に記載のない惑星気象が題材だが、天文や気象の知識が問われる問題ではなく、文の正誤は図を読み取れば判断できるようになっている。

 

対策としてどのような学習が効果的か

観察結果や資料と関連づけて導入する設問や、資料をもとに分析・考察する設問が増加しており、リード文や問題文の文脈を踏まえて、限られた時間で正確に題意を読み取る訓練が必要になる。
また、地学的事象をその根拠となる資料やデータ・観察結果とともに提示する出題形式にも慣れておく必要がある。
また、次期指導要領では科学的な探究に必要な資質・能力の育成が重視されており、仮説の設定、検証方法の立案、考察などを通じて結論を導く思考プロセスの流れに習熟することも求められている。

図表を読み取る問題が多く、さまざまな図表に見慣れておくとともに、地学的事象の時間的・空間的な広がりや、諸量の単位などを把握しておくことも大切である。
さらに、数式や数理モデルの扱いにも慣れておく必要がある。
ある量を変化させたとき別の量が増加するか、減少するかを普段から意識するとよい。

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