2018年度実施「大学入学共通テスト」試行調査(プレテスト)分析
(数学Ⅰ・数学A)

2018.12.03

2018年度実施「大学入学共通テスト」試行調査で出題された問題について、各科目ごと、出題における特徴的な点、設問ごとの分析などを公開しています。

プレテスト分析 数学Ⅰ・数学A

 

試験概要

配点 100点
試験時間 70分

 

出題における特徴的な点(2017年度実施の試行調査との比較)

  • 文章量の減少に伴い、総ページ数が減っている。ただし、70分ですべての問題を解くのは難しいだろう。

  • 記述式の部分について、数式や短い言葉で表現すればよい内容であったため、前回の試行調査に比べて、解きやすいものだったと思われる。
    しかし、表現の仕方が一意に定まらない設問もあるため、公平な採点をすることや生徒の自己採点という面では完璧に解決されたわけではない。
    このように、出題する側の「価値ある問題を大学入試に出題する」ための作問の難しさが感じられる。

 

第1問 (数と式、2次関数、図形と計量)

  • 〔1〕から〔4〕までの4つのテーマで構成されている。設問の数は多くないが、文章量は多い。

  • 〔1〕は集合と命題についてである。
    (1)は集合に関する記号の認識・適切な表現方法を問われている。
    (2)は命題の反例を選択肢の中から選ぶ設問である。
    選択肢の中で自然数を意図して根号を用いた形にしているのは目新しい。

  • 〔2〕は2次関数の問題であり、前回の試行調査に引き続きコンピュータのグラフ表示ソフトが背景として出題された。
    設問内容は「グラフと方程式の関係」と「グラフの変化と定数部分の変化の関係」である。

  • 〔3〕は図形と計量の問題であり、建築基準法による階段の基準が背景として出題された。
    「鋭角の三角比の定義」を用いて不等式で表現するのだが、建築基準法による長さの基準にも着目しなければならないため、その点では注意を要する。

  • 〔4〕も図形と計量の問題である。
    登場人物が段階的に考察していくという形式で正弦定理を証明する問題である。
    「正弦定理の証明」について全く意識したことがなくても解けないことはないが、その場合時間を要するだろう。

 

第2問 (図形と計量、データの分析)

  • 〔1〕、〔2〕の2つのテーマで構成されている。

  • 〔1〕は図形と計量の問題である。直角三角形の辺上を移動する3点があり、移動によって線分の長さと面積がどのように変化するかを考察する問題である。
    速さの概念や2次関数の知識も必要である。
    センター試験を水準にすると、誘導となる設問がなく、数学的に難易度の高い問題である。

  • 〔2〕はデータの分析の問題である。
    センター試験では日常の現象に関わる題材が出題されることが多いが、この問題は値の組の個数が少ない場合や、多くて特別な場合の考察を中心とする問題である。
    ただし、計算量は少なく、相関係数の性質や、相関係数と散布図との関係についての出題であるため、「分析」という特徴はセンターと類似するものがある。
    また、表計算ソフトが背景として出題されていることも特徴の一つである。

 

第3問 (確率)

確率の乗法定理や条件付き確率が主なテーマとして出題されている。
前半部分が易しくて後半になるにつれて思考力を要するという形式や、難易度はセンター試験とさほど変わらない。
ただし、「どちらの箱を選んだ方が当たりくじを引く確率が大きいか」を2人の登場人物が会話の中で予想し、それを計算で確認するという特色がある。
この特色により文章量が多いため、解くのに時間を要する生徒もいるだろう。

 

第4問 (整数の性質)

天秤ばかりに質量が未知である物体と分銅をのせて、天秤ばかりが釣り合う状態を二元一次不定方程式に結びつけるという問題である。
ただ、皿の上に分銅を何個でものせることができるという設定が理科とは異なる点であり、この設定からも整数の性質について考察するのが主なテーマだと判断できる。

  • 前半部分は数学的には易しい。

  • きちんと問題文を読めているかが問われる。

  • 後半は数学的にやや難しい発展問題が出題されている。

  • 全体的にセンター試験よりやや難しいという見方ができる。

 

第5問 (図形の性質)

2人の登場人物が会話の中で図形の性質について議論し、解決していくという流れである。

  • 公式の利用や計算が主なテーマであるセンター試験とは異なり、与えられた定理や誘導に従って選択肢から適切なものを選ぶという形式である。
    特に(2)(v)といった設問では、正確に考察ができずとも、消去法で選んだり、予想段階で解答したりしても、正解することが可能性がある。
    「正解する」ということのみが目的ならば、このように一番正解に近そうなものを選ぶという能力も必要である。

  • 全体的に発展問題であるため、センター試験に比べて数学的に難しいという見方ができる。

 

対策としてどのような学習が効果的か

これから入試問題を解く機会は徐々に増えていくと思われるが、今までのセンター試験では出題しづらかった「集合に関する表現」、「正弦定理の証明」や「データの分析における表計算ソフトの活用」といった内容が今回出題されている。
知識及び技能という能力の向上のために教科書に載っている内容は隅々まで学習しておくべきである。
また、確かに知識量の差で有利・不利が分かれる出題もあるだろうが、重視される能力として思考力、判断力、表現力というものがある。
発展的な問題の演習を通じて、思考力や判断力を磨いていってほしい。
その際、結論までは導けなくても「どのような過程からどのように推測できるか」を意識して学習しよう。
また、表現力という面では「自分で表現してみる」、「自分の表現が正しいか確認する」といったことが大切である。

一方、今回建築基準法が背景として出題されたことから、数学以外のどのような内容が背景になっても不思議ではないだろう。
しかし、高等学校卒業までに通常学ぶ機会がない専門知識は当然必要としない。
さらに、今回天秤ばかりが背景として出題されたことから、中学校卒業までに習う理科、社会科はしっかり学んでおいた方が良い。
このことで実際の試験で素早く解けるということだけでなく、日常の事象を、数学的な見方・考え方をするのに結びつくだろう。
それから、長い文章を読むという点では、やはり中学校卒業までに習う国語が重要な要素の一つだと考えられる。

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