時事王 代々木ゼミナール×読売中高生新聞
2025.1.9
読売中高生新聞「時事王」掲載問題の解答ポイントなどを公開。テストに役立つ時事を学ぼう!
2025年1月10日号
A面「ワークシート」の解答ポイント
【問1】
子どもや若者がSNSを利用することの問題点を、資料や図も参考にしながら、いくつか挙げてみよう。
【解答例】
・性犯罪などの被害にあう危険性があること。
・ネットいじめに加担したり、被害にあったりする可能性があること。
・暴力的な映像などが目に入り、影響を受けてしまう可能性があること。
・闇バイトの勧誘にあう危険性があること。
・スマホ依存に陥り、他の活動に支障が出る可能性があること。
・個人情報などをうかつに公開してしまう可能性があること。
【解説】
資料では、SNSの規制が求められている背景として、「SNSを通じた性犯罪やいじめの横行や、暴力的な映像の拡散」が指摘されているので、これらが答えとなりそうです。また、図にはそのほかに「闇バイト」「スマホ依存」の文字もあるので、これらも挙げるとよいでしょう。特に「スマホ依存」については、グラフでも高校生の1日あたりのSNS利用時間が非常に長いことが示されています。資料にも、オーストラリアのアルバニージー首相の言葉として「子どもたちには端末から離れ、フットボール場などに出かけてほしい」とあり、ここからもスマホ依存に対する懸念を読みとることができるでしょう。
資料や図にはない問題点を自分で考えても構いません。解答例では個人情報をうかつに公開してしまう例を挙げました。ほかに、手に入らないほど高価な品物に憧れて心を病んでしまう、極端な思想ばかりを目にして自分の思想も極端なものにしてしまう、なども挙げられそうです。
【問2】
問1で挙げたような問題を克服するにはどうしたらよいだろうか。子どもや若者のSNS利用を全面的に禁止すること以外の方法を考えてみよう。
【解答例】
・闇バイトでありがちな外部サイトへの誘導を断れるようにするため、保護者が不適切なサイトや動画、アプリをあらかじめ設定し、子どもが利用できないようにする。
・ネットいじめをいちはやく発見するため、保護者が子どものアカウントを確認できるようにする。
・子どもが暴力的な動画を見てしまわないようにするため、子ども専用の新しいプラットフォームを作成する。投稿するまえに内容を検閲するなど、強い規制をかける。
・スマホ依存に陥らないようにするため、子どものSNSの利用に時間制限をかける。
・個人情報を公開できないようにするため、子どものアカウントは投稿ができないようにする。
【解説】
資料2では、文教大学の池辺教授が「利用を制限しても、いずれは触れなければならない。一定の年齢に達した後は自己責任とする考え方もあるだろうが、それでは子どもたちも不安に感じるだろう」と述べています。つまり、現代社会ではSNSが必須である以上、子どもや若者のSNS利用を禁止しても、結局大人になってからSNSのさまざまな問題に直面してしまうということです。だとすれば、大人になって突然触れるよりも、子どもや若者のうちから扱い方を学んだほうがよいともいえるでしょう。
では、子どもや若者が危険を避けながらSNSを使うにはどうしたらよいのでしょうか。同じく池辺教授は「不適切なサイトや動画の閲覧、アプリのダウンロードを制限する機能を使い、大人に保護された状況で、SNSの利用に段階的に慣れていくのが望ましい」としているので、これを使った答えが書けるでしょう。また、自分で他の方法を考えてみても構いません。その際、問1も参考にしながら、どのような問題に対する対策なのかも明確にしておくとよいでしょう。
【問3】
日本でも子どもや若者のSNS利用を制限する法律を作るべきだろうか。作るとすれば、どのような制限とするべきだろうか。あなたの考えを、理由も合わせて書いてみよう。
【解答例1】
日本では、子どもや若者専用の、強い規制のかかった新しいSNSを作って、それ以外のSNSの利用を禁止する法律を作るべきだ。誰でも自由に投稿できるSNSでは、子どもや若者に有害な投稿を全て削除することは難しい。規制の強いSNSを新たに作り、子どもや若者がSNSに慣れるための環境を整えるべきだ。
【解答例2】
日本では、子どもや若者のアカウントを保護者が確認できる機能を作り、また、子どもがアカウントを作るときには保護者の同意が必要となる法律を作るべきだ。SNSの問題は、保護者の目が入ることで対処できるものが多い。利用を全面的に禁止するのではなく保護者が管理するための法律を作り、それ以上は各家庭でルールを作ればよい。
【解説】
子どもや若者のSNSの利用を制限する法律を作るべきかどうか、あなたの意見を述べる問題です。
子どもや若者がSNSを利用すると、問1のように深刻なリスクにさらされることになります。全面的に禁止してしまえば子どもや若者を守ることができますが、資料2から分かる通り、SNSを使わないまま大人になり、うまく付き合う術を身につけていなければ、大人になってから結局は同じ問題に突き当たることになります。
解答例1と2はどちらも全面禁止以外の制限をかけ、子どもや若者の安全の確保と情報社会を生き抜くための学びをうまく両立する方法を模索してみました。解答例1は子どもと若者専用の新たなプラットフォームを作り、そこでの投稿を強く規制する案です。解答例2は、SNSの利用の仕方はあくまでも保護者が監視、指導するものとして、法律では保護者の介入を根拠づけるにとどめました。悪質な投稿に子どもの目が触れる確率を減らせるのは1の方でしょうが、2は子ども一人ひとりの特性や年齢に合わせてより柔軟に対応することができるでしょう。規制と自由のどちらをどの程度重視するかは考え方次第です。
もちろん、子どもや若者のSNSの利用を全面的に禁止すべきだ、もしくは全く制限をかけるべきではないという主張をしても構いません。その際は、将来SNSを利用するときの不安をどう緩和するかや、SNS上に存在する問題にどう対処するかも合わせて書けるとよいでしょう。
B面の解答ポイント
【問題1】の問1について
正解は「間接(選挙)」です。大統領や首相など国家の首脳を選ぶ選挙には、アメリカ合衆国や日本国を含め、大多数の国で間接選挙が採用されています。アメリカの大統領選挙では、有権者は州(およびワシントンD.C.)ごとに「選挙人」団を選出し、この選挙人たちの投票によって大統領が選出されます。そして選挙人団の選挙においては、最多の票を獲得した政党がその州に割り当てられた数の選挙人のすべてを獲得する「勝者総取り」(Winner-take-all)方式と呼ばれる特異な仕組みがとられています(ネブラスカ州・メーン州のみは、小選挙区との並立制)。この仕組みにより、2016年に行われたアメリカ大統領選挙では、選挙人の選挙で民主党(ヒラリー・クリントン候補)に投票した有権者の総得票数が共和党(ドナルド・トランプ候補)を上回っていたにもかかわらず、獲得した選挙人の人数では共和党が民主党を上回り、この結果トランプ氏が大統領(1期目)に就任することとなりました。
【問題1】の問2について
正解はエのメキシコです。アメリカ合衆国は18世紀後半の建国以来多くの移民を受け入れてきており、「移民の国」とも呼ばれます。19世紀には、飢饉や貧困といった背景により、アイルランドや中国・インドなどから大量の移民が流入しました。しかし、現在トランプ氏が特に問題視しているのは、アメリカと南部で国境を接するメキシコなど中南米諸国からの不法移民です。アメリカの移民法では、永住権を持つ「移民」として認められるためには移民ビザを申請し、審査を経てビザを取得する必要があります。合法的な移民もいますが、こうした手続きを経ずにアメリカに入国して働く不法移民が急増しており、バイデン政権下の2021~2024年には合計730万人に及んだとされています。これらの人々は、アメリカの経済成長率を押し上げる一方で、若者から職を奪うなどの懸念を受けて社会問題となっています。トランプ氏は前回大統領に当選した際にもこれらの不法移民を問題視し、メキシコとの国境沿いに壁(いわゆるトランプの壁)の建設を始めました。
【問題1】の問3について
正解はイです。消去法で考えるとよいでしょう。アについて、地図で青く塗られた19州は、北東部や西海岸に多く位置しています。共和党を赤で、民主党を青で表すことは、2000年の大統領選挙の頃から定着した慣習で、現在では大統領・上院の多数派・下院の多数派を共和党がすべて独占することを「トリプル・レッド」などと言ったりします。
ウが正しいことは、アメリカ合衆国の初代大統領がジョージ・ワシントンであることを知っており、地図の北西端にワシントン州を見つけられれば判断できます。なお、東部に位置するアメリカの首都もワシントンD.C.と呼ばれますが、ここは正式には「コロンビア特別区」(District of Columbia)といい、どの州にも属さない連邦政府の直轄地です。
イに関して、アメリカの二大政党については「共和党は農村部、民主党は都市部で強い」という傾向が知られています(参考:読売新聞オンライン2024年1月15日付「基礎からわかるアメリカ大統領選挙」)。実際に2020年の人口統計に基づく全50州(ワシントンD.C.を除く)の人口密度と、今回の選挙における両党の選挙人団の獲得結果との関係を調べてみると、人口密度が高い25州では民主党獲得州:共和党獲得州の比が13:12となるのに対して、低い25州では6:19となり、大きな違いがあることが分かります。
【問題2】の問1について
「2の1億3627万9841乗の一の位」をいきなり調べるのは難しいので、まずは小さい数から調べていきます。以下では、「aのb乗」を「a^b」と表します。
まず、2^1=2なので、2^1の一の位は2になります。次に2^2=4なので、2^2の一の位は4となります。これを繰り返していくと
2^3=8より一の位は8
2^4=16より一の位は6
2^5=32より一の位は2
2^6=64より一の位は4
であることが分かります。
このことから、2^nの一の位は「2→4→8→6→2→4→8→6→…」と、4種類の数字が繰り返し現れている(周期4で繰り返されている)ことが分かります。したがって、2^nの一の位は、nを4で割った余りが何になるかで分類することができます。すなわち、nを4で割った余りが1ならば一の位は2、2ならば4、3ならば8、0(4で割り切れる)ならば6となります。
136279841を4で割った余りは、136279841=4×34069960+1より1となります。したがって、2^136279841の一の位は、2^1の一の位と同じ2となるので、2^136279841-1の一の位は1であることが分かります。
一般に、同じ自然数を複数回かけた数において、一の位には周期性が見られます。本問のような周期性に関する問題では、自分でいくつかの数について「実験」してみることでどのような周期になっているかを見抜くことが大事になります。
なお、100=25×4より、136279841の百の位以上の部分(136279800)は4で割り切れます。そのため、136279841を4で割った余りを考えるには、下2桁の41を4で割った余りを考えればよいです。
【問題2】の問2について
大きな素数を発見するには、それが素数であるかどうかを確認するために膨大な計算が必要となります。それを1台のコンピュータで行うと非常に時間がかかるため、複数のコンピュータをネットワークでつなげ、それぞれのコンピュータで分担して計算させることで計算時間を短縮する手法がよく使われます。このような手法を「分散コンピューティング」といい、この手法を使って行われているプロジェクトとして、記事にあった「大きな素数を見つけるプロジェクト」の他に「タンパク質の構造を調べるプロジェクト」や「新型コロナウイルスを解析し、ウイルスに有効な物質を探すプロジェクト」などがあります。
分散コンピューティングでは、世界中の複数のコンピュータをつなげてデータをやり取りする必要があります。そのためには、データのやり取りについて、コンピュータの性能や製造したメーカーなどに依存しない統一的なルール(規約)を定める必要があり、これを「プロトコル」といいます。代表的なプロトコルとして、インターネット通信で使われる「TCP/IP」、ウェブページの閲覧で使われる「HTTP」、メールの転送で使われる「SMTP」などがあります。
プロトコルを統一することにより、スーパーコンピュータだけでなく、世界中にある家庭用のパソコンや、スマートフォンなどとも通信を行うことができます。今回の記事にあった大きな素数を見つけるプロジェクト(GIMPS)でも、登録さえすれば、皆さんの家にあるパソコンを使ってこのプロジェクトに協力することができます。
その他の選択肢の意味は以下の通りです。
プロセッサ…コンピュータ内で計算処理を行う装置の総称で、特にCPUがよく知られています。
プロバイダ…インターネットの接続サービスを提供する事業者のこと。
プロローグ…物語の冒頭や導入部を意味する言葉で、情報通信とはあまり関係ありません。
【問題2】の問3について
下線部③で、メルセンヌ素数は「2を複数回かけた数から1を引いた形の素数」であると書かれています。この定義を基に、2をかける回数を増やしていきながら、素数になるかどうかを調べていきましょう。
2を1回かけてから1を引いた数は2^1-1=1であり、これは素数ではありません。
2を2回かけてから1を引いた数は2^2-1=3であり、これは素数なので、一番小さいメルセンヌ素数は3です。
2を3回かけてから1を引いた数は2^3-1=7であり、これは素数なので、2番目に小さいメルセンヌ素数は7です。
2を4回かけてから1を引いた数は2^4-1=15であり、15=3×5と素因数分解できるので、素数ではありません。
2を5回かけてから1を引いた数は2^5-1=31であり、これは素数なので、3番目に小さいメルセンヌ素数は31です。それ以降は127(=2^7-1)、8191(=2^13-1)、131071(=2^17-1)と続いていきます。