職員対談2

CROSS TALK

1. 2025年度の新課程入試について

今後の入試の在り方

木戸:総合型選抜・学校推薦型選抜の割合が増えてきているというのも、学力のみではなく今までの活動とか、持ってる価値観や経験等を多面的に評価して、学生にも多様性をっていうところが、背景にはあるんじゃないかと思います。

土生:大学は選抜方式ごとの入学者を見て、入試の在り方を検証していくと思うんですよね。大学の中でどのような人材に育っているかということもしっかり見ていると思います。実際、ペーパーテストの点数だけで合格させるのと、個人の活動も見て取るのと、どちらがいいかというのは一概には言えませんが、ペーパーテスト一辺倒では不安ですよね。人を選抜することは本来難しいことなので、一律なシステムで楽に選ぶのが果たして良いのかという気もします。

木戸:大学もいろんなレベル帯がありますが、やはり上位に行けば行くほど、具体的にこういう課題があると思ったから、自分はこう行動したっていうところをしっかり見ている大学が多いと思います。単発の課外活動をアピールするだけじゃなくて、ある課題の発見からこのように行動しましたっていうのは、大学生活、そして社会人になってからも必要なマインドだと思うので、そこが評価されるようにどんどん変わるのではと考えています。

土生:たとえば、帰国生入試では志望理由書とか活動記録などがとても重視されるんですよね。そこでは自分自身を客観的に見る姿勢がとても大事だと思っています。

木戸:大学側は、高校時代をどういう風に過ごしてきたのか、それを学生生活や大学での研究にどう繋げていくか、なぜこの大学でないといけないのかを志望理由書に書かせますので、自分が何をしてきたかを、論理的に説得力を持って語れることは大事だと思います。

教育改革の方向性

土生:日本の今の経済情勢や今後の人口減少などの状況を踏まえると、これからは人材で勝負する必要があると言えます。今回の教育改革は、PISAという国際的な学力比較のテストの影響を受けています。そこでは身につけた知識を実際に使う「活用力」が重視されていますので、今後の教育の在り方を考えるためにはやはりPISAを視野に入れざるを得ないかなと思っています。PISAは順位という目に見える形で結果が出ますので、その順位を上げるという方向に向かうと思います。

木戸:PISAの順位を意識し、日本の教育を変え、経済的な発展がこれからも続いていくようにするのは大切だと思いますが、PISAの順位が落ちちゃったからこうしようとか、 順位の上がり下がりで小中高と一度しかないその期間の生徒たちが振り回されてはいけないなと思うんですよね。

土生:それは全くその通りだと思います。PISAはOECD(経済協力開発機構)が実施しています。この組織は自由貿易の促進や経済開発を狙いとしているので、PISA自体は経済の根本は学力であるという考え方で作られたテストなんですよね。経済発展の基盤になる実用的な学力をという方向性であり、学力を測定する基準にそのようなバイアスがかかっていることはしっかりと認識する必要があると思います。先ほどCBTの話がありましたが、PISAはすでに2015年からCBTを導入しています。 したがって、これから日本の受験においても、たとえば共通テストなどもそういう方向を目指していくのではないかという気はしますね。

木戸:大学入試センター主催のシンポジウムでもCBTを考えるイベントを行っていますし、共通テストの出願をネット化するという話も出てきてはいるので、そういった方向に進んでいくのかなというのは私も感じます。

土生:ただ、講演で先生方に新課程における共通テストの試行テストの話をすると、皆さん不安を抱えているんですね。理想を求めて教育を変えるのは良いのですが、入試改革の趣旨が先生方や生徒にどこまで浸透しているかという問題はあると思いますね。

土生:ちなみに受験をするときに進学の情報を知っている人と知らない人とでは、受験の結果ってどれぐらい変わるものなんですか。

木戸:明確にこれぐらい変わりますっていうのは言えないですが、今は入試方式が実に多様で、本当は自分の強みを活かした入試に出願ができたはずなのに、何も知らずにそれを活用できなかったということが発生してしまうんですよね。特に地方は情報が届きにくくて、信頼できる情報源が少ない場合があります。志望校合格には色々な方法があって、より合っているものを選択するという点で、入試情報はまず使えるかなと思いますね。

土生:たとえば首都圏にいれば、進学情報だったらとりあえず予備校の情報をネットで見てみようかなという発想になりますけれども、そもそも予備校がないところだとそういう接点がないので、どうやって調べたら良いのかという感じになりますよね。

木戸:そうですね。実際に私が住んでいたところは小さな個別指導塾しかなかったので、基本的に頼れるのは学校の先生でしたが、もう少しいろんな情報を知っていたら違う未来が待っていたかもしれないと思うことはあります。やはり知らなくて大切なチャンスをなかったことにしてしまうのは、生徒の可能性を潰してしまうことになると思うので本当にもったいないと思います。なので、できる限りそういった情報格差はなくせるようにしていきたいです。高校生の可能性を広げるためにも、代ゼミから情報を発信することの重要性を強く感じています。

土生:木戸さんに伺いたいのですが、親子の間での受験情報、進学情報のギャップみたいなことについてどうお考えでしょうか。
親御さんは自分の受験時代の意識でアドバイスして、それが今の情報とはかなりずれているということも多いのではないでしょうか。

木戸:やはりギャップはありますよね。親御さんの世代は子どもの人数が多かったこともあって、今よりも厳しい入試を経験しています。その経験をお子さんに伝えたいとは思いますが、昔と今では状況が大きく異なります。第三者である私たちが入っていき、より客観的な事実をお伝えすることで、変化に気づいてくださるご家庭も多いです。代ゼミとしては、保護者ガイダンスや高校での保護者向けの講演で、最新の情報をお伝えするようにしています。なので、ぜひSNSやホームページなどを活用して、代ゼミに直接関わってない方にも、もっと伝わったらいいなという思いがあります。