職員対談AI・オンライン授業と対面授業について
5.番外編
教育はAIに取って代わるのか
土生:AIに取って代わられる部分とそうではない部分と両方あるように思います。たとえば、個々の受験生の学力を問題を解かせることで判定し、適切な問題を提示するというようなプログラムはAIも作成可能ですし、すでに実用化しています。でも、目の前の生徒の将来の夢や潜在的な可能性を見出すということはAIにはできません。それは人間の仕事ですね。生徒の声に耳を傾け、その将来像や可能性をともに見出していく。そういう作業は人間しかできないと思います。
木戸:プライベートでChatGPTを使用してます。こちらの質問や疑問に答えることはしてくれますが、ChatGPTから話しかけてくれることって当然ないんですよね。
もし生徒がAIを活用して大学選びをするとなったときに、最初に出てくる回答ってものすごい抽象的なものしか出てこないと思います。
「私はこういう人間で」という要素を伝えていけば良い回答が出てくるかもしれないですが、自分でも分かっていない潜在的なところを聞くことはできないので、そういうところを見出すとか伸ばしていくことは、実際に見て関わっている人にしかできない部分だと感じます。そういう意味では、AIに取って代わられることはないのではないでしょうか。
その代わりに、情報を集めるという部分はやっぱりAIはすごく優秀だと思います。
土生:私は現在、海外から帰国した生徒に教えていますが、全体の7割から8割がアメリカから帰ってきています。彼らにChatGPTをどのように使っているのかをたずねると、基本的には情報収集やアイデア出しに使っていると答えてくれるので、学校でもそのような方向できちんと指導を受けていると感じます。
木戸:使い方次第ですが、AIによって省力化できる部分や人間がわざわざやらなくてもいいことには使用していくべきだと思います。
その浮いた時間で、生徒本人と向き合うとか、励ましていくとか、一緒に並走していくための支援をより手厚くしていけると思います。そうやって二刀流で、人間の力もAIの力も使いこなしていける人が、これからの時代において良い指導者に、教育者になっていけるのかなという気もしますね。

オンライン授業と対面授業の重要性
土生:私が受け持つ帰国生向けの授業は通常対面形式ですが、コロナ禍のときにはオンラインや収録授業も行いました。収録授業は「自分で授業を作りあげる」という意識が強くなります。目の前のタイマーを見ながら、全体の構成を考え、結末を考える。ある程度イメージ通りに授業がやれたときにはそれなりの達成感があります。
それに対して対面授業は、ライブ感覚が強いですね。思いもよらない質問が飛んでくる場合もありますし、生徒の反応や顔色を見て、事前の予想とは異なる方向に展開することもあります。二つの授業形態の違いは、たとえれば「レコーディング」と「ライブ」の違いといえそうです。
木戸:コロナ禍を経て、オンラインが一般的になり選択肢が増えたのは、とても良いことだと思いますし、代ゼミもこのまま対面と映像のハイブリットで続けてほしいと思っています。
入試情報的な観点からいうと、どうしても全国を回って先生方とお話しできるわけではないので、映像が使えると、よりいろんな地域の先生方とお話ができたりするのがメリットです。状況によっての使い分けが大切ですが、対面の方がやりやすいのは、土生主幹と同感ですね。
土生:たとえば毎年、帰国生に志望理由書の書き方の授業をやっているんですが、海外滞在中の段階で志望理由書を書きたいという生徒が多く、今年から収録の形になりました。これだと繰り返し見ることができるし、早めの準備も可能になる。こういうときには収録授業というのは力を発揮するのではないでしょうか。ただし、やっぱり生徒を前にして反応を確かめながら行う対面授業の魅力は捨てがたいですね。
木戸:反応に合わせて臨機応変に話す内容を変えることができるっていうのも、対面の良いところですよね。
土生:収録授業の利点はさまざまな利用法が考えられるということではないでしょうか。生徒だけではなく、ときには高校の先生方が指導法の研究の一環として見ることもできます。受験生も自宅にいながら、時間に縛られることなく利用できますし、代ゼミで蓄積されている収録授業は大変貴重な財産だと思いますね。