医学部受験合格者インタビュー
『医療者として社会貢献するために医学部に合格するために知っておいてほしいもの』
山梨大学 医学部医学科3年 梶谷 健さん
はじめに
皆さんはじめまして、山梨大学医学部の梶谷といいます。この文章を読んでいる方のほとんどが医学部への進学を志望されていると思います。そんな皆さんにまず伝えたいことは、医学部に合格することは“手段”であるということです。皆さんが本当に考えなければならないことは、医学部を卒業しどのような医療者として社会に貢献していくかです。しかしそれも医学部に合格できなければいくら考えようと机上の空論に過ぎません。ですからここでは“目的”を、「医学部に合格する」として話を進めていきます。是非お付き合いください、よろしくお願いします。
医学部受験に際して
皆さんご存知の通り、医学部とは“ちょっと勉強が得意”程度の学力で受かるところではありません。学力が必要なのはもちろん人間性も深く問われますし、医療に対する興味・関心も重要な評価項目です。勉強だけできればいい、というわけでもないのが他学部との大きな違いだと思います。では医学部に合格するためには何が必要なのか、少しでも皆さんにお伝えできればと思います。
医学部に合格するためにまず必要なのはやはり圧倒的な学力です。特に英語と数学については深く学習する必要があるでしょう。この2科目は基礎を身につけるために膨大な時間を費やす必要があります。私は英語を得意科目だと自信を持って言えるようになるまで1年はかかりました。数学は取り組む時期が遅く、最後まで得意科目とは言えませんでした。これら2科目の勉強に時間がかかるのは暗記要素が少ないから、言い換えると「思考法を身につけないといけないから」という理由が大きいと思います。そのためには毎日英語と数学に触れる必要があります。一問でもいいので毎日問題を解いて考え方の引き出しを増やし、それらをいつでも引き出せるように訓練を積んでください。
それ以外の科目についてですが、得意を伸ばすよりも苦手をなくすことを常に意識しましょう。これは英語や数学を勉強する際にも当てはまります。医学部受験にあたってはまず共通テストで8割強~9割をとる必要があり、また二次試験については、医学部以外の学部を持つ国公立大学の場合、それらの学部と共通の問題が出題されることが少なくありません。そういった問題で確実に点数を取るためには十分な基礎学力が必要になります。入試では他人ができない問題を解ける能力よりも、全員が解ける問題を自分もしっかり正解する能力の方が重要です。また応用問題を解くためにもまずしっかりとした土台が不可欠です。もし伸び悩んでいる科目があれば、目を背けることなく苦手分野に取り組んでみましょう。一旦基礎が完成してしまえば応用は驚くほど早く身に付きます。
日々の勉強について
勉強法については人それぞれやり方があると思いますのであくまで一例として、良さそうだと感じたらご自身にも取り入れていただければと思います。
私の日々の学習スタイルは「同じ問題集を、何回も、解説を大切に」でした。一部の分野を除きほとんどの単元での学習は同じ問題集の繰り返しが有効だと考えます。理由として、1回目に解けなかった問題をもう一度解いた際に自身の理解度がどれくらい深まったかが分かりやすいからです。また何冊も問題集が手元にあるという状況はメンタルが追い詰められやすく、焦ってあれもこれもと手を出すうちに結局全てどっちつかずで終わってしまいます。では、この一冊だけやり込めば実力がつく!と思えるような問題集とはどのようなものでしょうか。それは解説が丁寧に書かれている問題集だと私は考えます。書店で気になった問題集を手に取ってみたら解説のページにも目を通してみましょう。正解に至るまでの道筋や典型的な誤答例など、解説を読むだけで勉強になるような問題集があると思いますので、自身の目的に合った問題集を探してみてください。
一方で、周回を重ねるよりも数をこなした方がいい分野も存在します。英語の長文や英作文、現代文の問題や共通テスト対策などがその典型ではないかと考えます。文章を読んだり書いたりする問題は解き方を学ぶのはもちろんですが、様々な題材に触れるということも大変重要です。どのようなトピックであったとしても一定の速度で読み進めていけるように経験を積む必要があると思います。共通テスト対策についても同様に、様々な問題に触れることのメリットが大きいと考えます。
またこれは余談ですが、共通テスト形式の問題を解く際は解答時間を実際の時間よりも5分ほど早めると良いと思います。本番マークミスをしたり違う科目を解いてしまったりと、試験は何が起きるか分かりません。そのような状況でも落ち着いて対応できるように、普段から負荷をかけて取り組むことをオススメします。
やってよかったこと
私が日々の学習でやっていてよかったと感じることは、分からないことを積極的に質問するということです。問題を解いて分からないところがある場合、解説を読んでみてそれでも分からなかったら後回しにせずすぐ質問に行くようにしていました。先生に分からない問題について質問するためには、自分がどこまで分かっていてどこから分からないのか、どのように分からないのかをきちんと伝えられる必要があります。後から振り返ってみればその過程で物事を論理的に説明する訓練がされていたのだと感じます。また雑談中の先生方からの何気ない一言で、気持ちが救われることも多々ありました。受験期というのは無意識のうちに追い込まれがちな時期です。教室でともに勉強する仲間の存在も大きいですが、教育の現場に長く携わっていらっしゃる方からの言葉ほど勇気づけられるものもありません。もし勉強で行き詰ってしまったことがあれば、質問がてら先生のもとを訪れてみるとなにか解決策がみつかるかもしれませんよ。
模試について
受験に向けては毎回の模試で自分の立ち位置を認識することが重要です。志望校に受かるためにはどの程度の点数が必要なのか、ライバルたちはどれほど得点を重ねているのか、そこに追いつくために自分が伸ばさなければいけない分野は何なのか。そういったことを知るために模試を活用しましょう。毎回の判定に一喜一憂する方も多いと思いますが、入試というのは良くも悪くも試験当日の解答用紙に記述した内容でしか評価されません。長い受験期ではとにかくメンタルがものを言います。合格という目標に対してやるべきことを明確にし、毎日コツコツ取り組んでいる自分を認めてあげれば、模試の判定ごとき何でもありません。臆することなく進み続けましょう。
ただし、模試において判定は大して気にする必要はありませんが、解答については十分に振り返る必要があります。先ほども言いましたが問題集の解説は非常に有益な内容が詰まっています。それは模試でも同様で、自分がどこで間違えたのか、部分点を満点にするためにはどこを改善する必要があるのか、しっかりと確認しましょう。次に同じ問題に出会ったときに満点が取れるようになることが復習です。適当に目を通して放置するというもったいない振り返りは卒業しましょう。
参考までに、私が模試でどれほどの位置だったかを示します。あくまで参考としてください。
進研模試・・・75~80、全統模試・・・65~70、駿台模試・・・60(全て記述)
おわりに
ここまで医学部合格のためのアドバイスとして主に勉強面についてお話ししてきました。最後に勉強面以外について少しお話ししようと思います。
まず、他者の気持ちが理解できる人になってください。医療とはチームで行うものですし患者さんは機械ではなく生身の人間です。常に人を相手にする環境に身を置こうとしているからこそ、日ごろから相手の立場にたって物事を考えるくせを身に付けてください。きっと面接でも役に立ちますし現代文を解くうえでも役立つと思いますよ。
次に健康でいましょう。1日の半分以上を勉強時間に費やすためには体調管理が欠かせません。受験生であれば、睡眠時間を削ったり多少の風邪は気づかないふりをしたりと、特に試験直前は無理して勉強しがちになります。ですが体の言うことにはしっかりと耳を傾け、休むべき時は休むようにしてください。
そしてモチベーションの依存先を「自分自身に置く」にしましょう。試験での順位や偏差値など、他者に依存した目標を立てることは本来の目標である志望校合格ということを忘れがちになってしまいます。また周りの受験生の言動や使っている参考書など、気にしなくていいことまで気になってしまい集中して勉強できなくなります。受験期であろうとなかろうと立てるべき目標は「自分がどうなりたいか」です。確固たる目標を持ちブレずに取り組むことができれば、結果は必ずついてきます。支えてくださっている周りの方々への感謝を忘れることなく頑張ってください。つたない文章でしたが最後までお読みいただきありがとうございました。皆さんに良い結果が訪れることを心より願っています。
『逆境をバネに勝ち取った医学部合格医学部を目指す受験生へ』
千葉大学 医学部医学科3年 森 英介さん
はじめに
私は千葉県で生まれ、地元の小・中学校へ進学しました。高校進学の直前に祖父が手術を受けたことをきっかけに医師への憧れを抱き、医学部を目指しました。私の高校は偏差値が50程で、医学部へ入学する生徒はほとんどおらず、初めて受けた高一向けの模試では偏差値が44だったので、応援してくださる方もいましたが、大方は無理だと言われていました。しかし、そのような逆境や劣等感をモチベーションに変えて一浪の末、千葉大学医学部に入学することができました。とはいえ、医学部に合格する学生はレベルの高い塾や中高一貫校に通っているので簡単ではありませんが、私の経験を基に、医学部を諦めたくないという受験生の参考になればと思います。
医学部を受験する上で大切なこと
医学部受験では、高難度の入試問題や高い倍率ゆえに求められる学力の高さ、小論文や面接にも対応することができるコミュニケーション能力など必要なことはたくさんありますが、その中でも最も大切なものは「当たり前の程度の高さ」だと考えています。例えば、今から24時間の間あなたが使っている英単語帳以外の勉強をする必要がなく、ひたすらその英単語帳のみ勉強をするとしたら、どのくらいやると考えますか。また、同じ質問を医学部に受かる受験生にしたらどのように答えると思いますか。医学部に合格した学生へのアンケートで、よく勉強時間が長いことや受験勉強に本腰を入れた時期が早いことなどが見られますが、それは医学部に合格する人が生まれつきできるのではく、それだけ努力することが「当たり前」と考えているからだと思います。
勉強で一番大切なこと
勉強で最も大切なことは「情報を正確に分析して、適切に逆算すること」だと考えます。まず情報を正確に分析することに関して、『孫子』の中で最も有名な教訓の一つの「彼を知り己を知れば百戦殆からず」という言葉の通り、敵である入試問題に対して自己の学力が勝つには何が必要か考えましょう。また、やりたいことと必要なことは必ずしも同じとは限りません。そのようなことに注意して何が本当に必要なのか見極めましょう。次に逆算に関して、受験までの残り時間によっては必要なことすべてをできるとは限りません。従って、必要なことに優先順位をつけて入試までのスケジュールを適切に逆算してみましょう。受験までの残り時間が最も多いのは「今」です。残り時間は減るのみなので、早期逆算が合格可能性をより高めてくれることでしょう。
授業の効果的な利用法、やってよかったこと
授業を受けた後と予習の段階との差を把握することや何周か繰り返すことも非常に効果的でしたが、その中でも「授業の再現」をすることはやってよかったと考えます。人に説明するには聞いてわかる状態の何倍も理解していないと出来ないと言われているので、初めは教科書などを見ながらでしたが、最終的には白紙の状態から何も見ずに、概念理解の説明や問題の解説をできるようにしました。一人のときはあたかも自分に教えるように心の中で「一人授業」をしていました。これによって理解の曖昧さが無くなり、記述の役にも立ちました。初めは難しいとは思いますが、先生の真似やテキストを見ながらやることから始めて、継続すれば必ず自分のものにできると思います。
模試の効果的な活用法
私が受験生の時、千葉大学医学部のボーダーが偏差値67から70くらいと言われていたので、それを目安に頑張りました。最終的には苦手な科目はボーダーかそれよりも少し下、得意な科目はボーダーを超えることができました。特に二次試験で使う科目の中に苦手な科目があっては致命的だと考えたので、二次試験で使う科目はボーダー以上に達するようにしました。医学部受験では苦手科目を得意科目でカバーするというのは難しいので、最低でも極端に苦手な科目は無くして一つは得意科目を持っておくのがよいかと思います。
次に模試の復習についてです。医学部の入試問題は背景のあるものが多いです。従って、復習の際にはつまずいた箇所の確認はもちろん、正解でもその問題の背景について考察・研究したことは非常に効果的でした。ぜひオススメします。
おわりに
私が話したことは医学部合格者の一人の意見に過ぎません。私が受験生の時も様々な勉強法を組み合わせ、自分に合ったものに変えながら戦略を確立したので、考え方の一つとして参考にしてください。
受験生の中には勉強に集中するためにスマホを一切使わないようにする人がいます。スマホが集中の妨げになるのであれば別ですが、最近では無料で勉強の助けとなるものが増え、自分が受験生の時に欲しかったというものも多いです。従って、一般的にはスマホは受験勉強にとって敵と見られがちですが、上手く勉強道具の一つにしてほしいと思います。
以上が私の体験を基にしたメッセージです。逆境や劣等感を感じている人も諦めずに頑張ってください。